前縦隔腫瘤の鑑別診断、手順は?
嚢胞性か充実性かで分ける
- サイズよりもまず、嚢胞性か充実性かの判断が重要。
- CTによる嚢胞か充実性かの判断には造影CTで造影効果の有無を判断することが必要。ただし、アーチファクト(ビームハードニングアーチファクト)により偽造影効果を呈することあり。
- 嚢胞であっても蛋白濃度が高かったり、出血を伴っているものは単純CTで高吸収となる。
- MRIでは、嚢胞成分の判断にはT2WIで著明な高信号を呈している点が重要。
- T1WIでは、嚢胞であっても内容液の成分により信号強度は様々。
嚢胞性の場合は?
- 壁在結節の有無をチェックする。
- 造影CT、MRIが有用。MRIではDWIも有用。ただし、MRIの場合心臓からアーチファクト受けることあり。
壁在結節がない場合
- 心膜嚢胞
- 胸腺嚢胞
- 嚢胞状リンパ管腫
の可能性が高い。
※この場合圧迫症状がなければ、経過観察でよい。
※ただし、通常中縦隔に発生する気管支原性嚢胞が前縦隔に発生することがあり、この場合は破裂により炎症をきたすため、粘稠な内容液の場合は手術することあり。
壁在結節がある場合
- 胸腺腫
- 悪性リンパ腫
- 悪性胚細胞性腫瘍
の可能性があり、充実性腫瘍と同様に扱う。
充実性腫瘤の場合は?
- 胸腺腫(非浸潤性、浸潤性)
- 胸腺癌
- 胸腺カルチノイド
- 悪性リンパ腫
- 悪性胚細胞性腫瘍
のほか、下記良性病変もあり。
- 胸腺過形成
- リンパ節
- nodular lymphoid follicullar hyperplasia
- 辺縁平滑で、類円形腫瘤の場合→非浸潤性胸腺腫の可能性が高い。(悪性だが予後が良い。この場合3cm程度までは経過観察しても予後に影響ないとされる)
- 不整形・辺縁不整腫瘤の場合→悪性腫瘍が示唆されるため、小さな病変であっても慎重な対応が必要。
- 小さな充実性腫瘤の場合→胸腺上皮性腫瘍、良性病変の可能性が高い。この場合、着目すべきは辺縁の性状。不整ならば悪性の可能性が高まる。
参考)画像診断 vol.30 No.6 2010 P588-589
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