頭部CTを撮影して、石灰化があると言われることはしばしばあり、多くは生理的な石灰化(異常ではない)です。
このような生理的な石灰化がどこに起こりやすいかをあらかじめ知っておくことで、異常な石灰化を見たときに、
「あれ、いつもと違うぞ」と気づけるものです。
そこで今回はこの生理的な石灰化が起こりやすい部位についてまとめました。
頭蓋内の生理的石灰化はどこに起こる?
脳実質外
- 硬膜(大脳鎌・小脳テント含む)
- くも膜、くも膜顆粒
- 脈絡叢(側脳室三角部、Luschka孔レベル)
脳実質内
- petroclinoid ligament 錐体床突起靭帯
- interclinoid ligament 床突起間靭帯
- 松果体
- 手綱交連(読み方は「たづなこうれん」):松果体の直前に認めることがある小さな石灰化。
- 基底核(特に淡蒼球。ただし、40歳以下で認めた場合は病的と考える)
- 小脳歯状核
- 血管
左側は松果体の石灰化。右側は、少し難しいですが、錐体床突起靭帯の石灰化です。
(松果体の石灰化は6歳以下で1cm以上の石灰化を認めた場合は胚細胞腫瘍を疑います。)
左側が淡蒼球の石灰化。右側が、小脳歯状核の石灰化です。
この症例も小脳歯状核の石灰化です。
脳の生理的石灰化が起こりやすい部位を動画にまとめました。
異常な石灰化とは?
上にあげた生理的な石灰化が起こりやすい部位以外に石灰化を生じている場合、異常な石灰化の可能性があります。
異常な石灰化をきたすのは、
- 腫瘍に伴う石灰化
- 慢性硬膜下血腫
- 結節性硬化症
- Sturge-Weber症候群
などがあります。
また基底核に異常な石灰化をきたす疾患には以下の疾患が考えられます。
基底核に異常な石灰化をきたす疾患
内分泌性
- 副甲状腺機能低下症
- 偽性副甲状腺機能低下症
先天性代謝性
- Fahr病
- Cockayne症候群
- 結節性硬化症
症例 60歳代女性
両側基底核から放線冠、小脳歯状核に著明な石灰化あり。Fahr病疑いでフォローされています。
炎症性
- 巨大細胞封入体症
- 脳炎(トキソプラズマなど)
中毒その他
- 一酸化炭素中毒
- 鉛中毒
- 酸素欠乏(新生児)
小児でも脳に石灰化を認めることがある?
一般的に生理的石灰化は高齢者に多いものです。
10歳以下に松果体石灰化を認めることは2%程度と少なく、小児に松果体石灰化を認めた場合は、
- 思春期早発症
- 松果体腫瘍
を念頭におく必要があります。
参考文献:臨床画像 Vol.26,No.9,2010 P966-977