【胸部】TIPS症例37
【症例】40歳代男性
【主訴】労作時呼吸困難
【既往歴】左自然気胸(20年以上前)、右自然気胸(20年以上前)
【生活歴】喫煙 20本/日 16歳から現在も。
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異常所見と診断は?
両側肺は過膨張を認めています。
肺の下縁と交差する肋骨を数えていくと、第7前肋骨と交差を認めており、やはり肺気腫を認めていることが分かります。
また、横隔膜の平坦化を認めています。
そして、両側上肺野〜中肺野にかけて、それ以外の部位と比較して無構造で均一な低吸収を認めていることに気づきましょう。
これは何を意味しているかというと、肺実質が消失しており、巨大なブラを認めているということです。
それでは、次にCTを見てみましょう。
CTでは肺野条件で、両側肺尖部〜上葉にはほとんど肺実質構造を認めておらず、巨大ブラ(肺嚢胞)となっていることが確認できます。
そして、巨大ブラ(肺嚢胞)が正常肺実質を圧排して、特に左肺門部で一部受動性無気肺となっていることがわかります。
冠状断もありますので見てみましょう。
冠状断像では、肺野の2/3程度が巨大ブラに置き換わっていることが分かります。
診断:両側(上葉)巨大ブラ(巨大気腫性嚢胞)
※肺野の1/3程度を占めるブラを巨大ブラと言います。
この部分は呼吸に関与しておらず、むしろ今回のように正常肺を圧排しており、呼吸困難の原因となっている場合は手術でこの巨大ブラを切除することがあります。今回も呼吸器外科にて切除となりました。
このブラですが、喫煙が関与しており、もともとは小さな傍隔壁型肺気腫や小葉中心性肺気腫がブラを形成して、そのブラが大きくなっていったと予想されます。
【胸部】TIPS症例37の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
いわゆる巨大ブラを見たことがありませんでした。ココまで大きくなるんですね。レントゲンでびっくりしました。
アウトプットありがとうございます。
>ココまで大きくなるんですね。
そうなんです。過去に巨大ブラを気胸と誤診したことがあります(^_^;)
それくらい目立つということですね。
気胸の時は肺実質が凸状になり、巨大ブラの時は肺実質が凹状になること。気胸の時は臓側胸膜壁側胸膜内に肺実質を思わせる物質(ゴミ上に見えるもの)がないことで区別しているのですが、そんな感じでよいでしょうか?ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
概ねそれでよいと考えますが、気胸の場合は胸腔内に空気があるので、肺構造との間に空気が見えたり、肺が虚脱しているのでわかりますね。
ただ、今回の様な症例だとちょっとわかりにくいかもしれませんが。
ブラ壁が葉間胸膜に接して不明瞭でしたので、「高度な汎小葉性肺気腫」としましたが、このような場合は、巨大ブラと表現するのですね。ありがとうございまた。
アウトプットありがとうございます。
高度な肺気腫のなれの果てなので、間違いではないと思いますが、巨大ブラと言った方がいいでしょうね。
こんな巨大ブラになることがあるんですね。
たしかに気胸と見間違えそうになります。
アウトプットありがとうございます。
そうなんです。気胸と間違えそうです。
気胸と記載して、後日「巨大ブラフォロー」として依頼が来たときの恥ずかしみ・・・を忘れません。
こんばんは。
いつもお世話になっております!
巨大ブラ、昔国家試験にも出ていたので印象に残っていました。
2度の自然気胸の既往があることから、なにか先天性の素因の有無がないか気になり、鑑別として、Birt−Hogg−Dube症候群にたどり着きましたが、嚢胞の大きさや分布、数等全然違うし、ほか皮膚病変、腎病変もなさそうであることから結局rule outしました。
水平断のp73で、右甲状腺でしょうか、内頸静脈でしょうか、大きくて左右差があると思ったのですが、なにかあったのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>Birt−Hogg−Dube症候群にたどり着きましたが、嚢胞の大きさや分布、数等全然違うし、ほか皮膚病変、腎病変もなさそうであることから結局rule outしました。
そうですね。肺野条件だけですと、そもそも大きさや分布が違いますね。
>水平断のp73で、右甲状腺でしょうか、内頸静脈でしょうか、大きくて左右差があると思ったのですが、なにかあったのでしょうか?
おっしゃるように内頚静脈ですね。内頚静脈はしばしば左右差があり今回のように左側で径が小さいことが多いです。
いつもありがとうございます。
レントゲンで見てみると、左肺動脈に不自然な高吸収域が見られます。
なるほど、巨大ブラによる受動性無気肺だったんですね。
CTでは気管支径<伴奏する肺動脈径となっており、残存している肺実質では肺動脈の拡張がありそうですね。
アウトプットありがとうございます。
>CTでは気管支径<伴奏する肺動脈径となっており、残存している肺実質では肺動脈の拡張がありそう 補足ありがとうございます。拡張ありますね。
解説ありがとうございます。
ブラの壁構造がどうも分かりません。残った肺構造なのか壁なのか見分けがつきません。
本質的にはブラは壁がありブラは壁があるのでしょうが、
・穴が開いていて
・数ミリより大きくて(気腫は小さいイメージ)
・壁が1mmより薄いか見えなかったら
ブラ
・穴が開いていて
・数ミリくらいまでの大きさで
・壁が見えなかったら
気腫
ということにしても大体大丈夫でしょうか。
あとこの方の中間気管支管や下葉気管支の壁は肥厚していると言えますか?気管支壁肥厚を読むのが難しくて今までの症例では指摘できませんでした。
アウトプットありがとうございます。
>ということにしても大体大丈夫でしょうか。
概ねそのイメージでよいです。
ただし、
・ブラは肺尖部に認める頻度が高い。
・傍隔壁型肺気腫の場合は、壁が見えることがしばしばある(という印象が個人的にあります)
・肺気腫も進行すると数mmよりも大きくなる。
・さらに進行するとブラになる。
という点も押さえておいてください。
はっきりここまでが肺気腫、ここからがブラと境界があるものではない点が難しいですね(^_^;)
>あとこの方の中間気管支管や下葉気管支の壁は肥厚していると言えますか?
おっしゃるように中枢側のそれらの気管支はやや肥厚していると思います。
ただし、個人的には指摘しない程度です。一方で末梢では目立ちません。
これもここからが肥厚という境界がないから難しいですね(^_^;)
気胸かと思いましたが、気胸のラインが見当たらず、大きなブラとわかりました。
自然気胸が右も左もあったようですが、また気胸を起こしそう。
でも20年以上もパンクしていないのですね。
アウトプットありがとうございます。
>気胸かと思いましたが、気胸のラインが見当たらず、大きなブラとわかりました。
気胸かと思うくらいの低吸収で血管構造がありませんね。
>でも20年以上もパンクしていないのですね。
同じ肺気腫でもこのように巨大ブラを形成したり、全肺野に汎小葉性のように広範に広がるケースもあり、さまざまですね。
いつもありがとうございます。初歩的な質問で大変恐縮ですが、Xpで肺門部第4-6前肋骨の高さにある高吸収の部分が無気肺なのでしょうか?肺血管との区別がつかないので見分け方を教えていただきたいです。また、「肺血管や気管支の拡張」の所見のとりかたがわからないので教えていただけると幸いです。
アウトプットありがとうございます。
>Xpで肺門部第4-6前肋骨の高さにある高吸収の部分が無気肺なのでしょうか?肺血管との区別がつかないので見分け方を教えていただきたいです。
おっしゃるとおりXpで肺門部第4-6前肋骨の高さにある高吸収の部分の一部が無気肺です。
ただし同部には、肺血管もありますので、両者をレントゲンで区別することはできません。(CTでは区別できますが)
>「肺血管や気管支の拡張」の所見のとりかたがわからないので教えていただけると幸いです。
これはレントゲン上でということでしょうか?
肺血管の拡張は、上肺:下肺=1:1.5〜2の血管の賑やかさが正常ですが、上の方の賑やかさと同じくらいになったり、上の方が強くなると血管が拡張していることを示唆します。
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気管支の拡張は、伴走する肺動脈と同じくらいかそれ以上のサイズになると気管支拡張と判断しますが、レントゲンではかなり拡張しないと指摘は難しいかもしれません。
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ご丁寧な解説ありがとうございます。CTで肺血管や気管支の拡張はどのように見るとよいでしょうか。何mm以上が拡張、などの目安はあるのでしょうか?
>CTで肺血管や気管支の拡張はどのように見るとよいでしょうか。何mm以上が拡張、などの目安はあるのでしょうか?
CTでは述べたように、気管支の拡張は、伴走する肺動脈と同じくらいかそれ以上のサイズになると気管支拡張と判断します。
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肺血管の拡張は、肺動脈の本幹が3cmを超えている場合は、肺高血圧症の可能性を考慮します。