
症例43
【症例】40歳代女性
【主訴】特になし
【現病歴】胃癌術後の右後横隔膜脚腔にリンパ節腫大を指摘されている。FDG-PET検査で集積は認めずフォローされており、そのフォロー目的で地域から紹介、撮影となる。
画像はこちら
血管奇形が存在しますが、どんな血管奇形ですか?
大動脈の右側に下大静脈が走行しますが、大動脈の左側にも下大静脈のような太い血管が走行していることが分かります。
その血管を尾側に追うと、左総腸骨静脈と連続していることが分かります。
冠状断像でも大動脈の左側に太い血管が走行している様子が分かります。
そしてその血管は左腎静脈と合流して、下大静脈に合流している様子が分かります。
あたかも下大静脈が2本あるようだということで、重複下大静脈と呼ばれる血管奇形です。
正常例と重複下大静脈の血管走行の違いは以下のようになります。
診断:重複下大静脈(double IVC,duplicated IVC)
なお、現病歴にある、「胃癌術後の右後横隔膜脚腔にリンパ節腫大を指摘されている。」ですが、
横隔膜の背側である、後横隔膜脚腔に1cm大のリンパ節を2つ認めています。
こちらのフォローがされています。
2019年12月11日追記:某超有名放射線科医K先生からメールにてご指摘いただきました。
腹部Tips症例43ですが 右鎖骨下動脈起始異常もあるようですが・・・
確かにありますね・・・・。
診断:重複下大静脈、異所性右鎖骨下動脈(右鎖骨下動脈起始異常)
同じ重複下大静脈の症例を2つ見てみましょう。
症例43参考症例① 症例20歳代男性
単純CTの症例です。
症例43参考症例② 症例50歳代男性 精巣腫瘍術後
こちらは、本来の下大静脈よりも重複下大静脈の方が太い症例です。
関連:
その他所見:肝嚢胞あり。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
なんと、、、言われてみれば・・・(T_T)
冠状断像を見ていて感じた違和感はこれだったのかぁって感じです。
重複下大静脈というのを知りませんでしたので本流?の静脈ばかり追いかけてしまいました。
勉強になります。
アウトプットありがとうございます。
double IVCなどと所見に記載されていることも多い変異です。
一見見落としがちなので注意が必要ですね。
血管奇形がある人は複数ある時が多いですね。大動脈弓の起始異常だったり、左内腸骨静脈だったり。IVRする時には重要でしょうが、放射線技師としては当直時にDrに伝達するほどでもないか?と思ってしまいます。異常と判別しないためのレクチャーでしょうから脇道にそれたコメントになりすいません。
アウトプットありがとうございます。
>血管奇形がある人は複数ある時が多いですね。
おっしゃるとおりですね。外傷のように一つ見つけて安心といかないように注意が必要ですね。
>放射線技師としては当直時にDrに伝達するほどでもないか?と思ってしまいます。
このシリーズは救急画像診断ではないので確かに当直時にはあまり重要ではないかも知れませんね(^_^;
言われればかなり大きいところの血管の異常ですね…
しかし、左右対称だからなのか、素通りしてしまいました。
見返しても、あんまり大きな違和感ないですね(^^;
アウトプットありがとうございます。
>見返しても、あんまり大きな違和感ないですね(^^;
そうなんです。なので意外と見落としがちです。
こういう血管の変異があるということを体験していただけたら幸いです。
まったくわかりませんでした。
右鎖骨下動脈が直接大動脈に流れているように見えたのでそこばかり気になってしまいました。
見たことない症例というか、今まであったけど気づいてなかったかもしれません。
腹部CT時はこれから少し気にかけてみます。
アウトプットありがとうございます。
このような血管の変異があると言うことを知っておかないと気づきにくいかと思います。(知っていても気づかないこともありますが(^_^;)
血管の走行を基本的な部分から押さえないと分からないなと感じました。
解説を見た後に画像を再度見ると分かったので良かったです。
違和感を持つことも出来なかったので良い経験となりました。
ありがとうございます。
割とたまにみる変異ですのでこの機会に覚えておいてください。
血管奇形があると言われなければ,一瞬スルーしてしまいそうです.
が,一度見て知っていれば,違和感ですぐ気づくのかなと思いました.
これがなかなか難しいところで、気付くケースと何も気付かないケースが個人的にはありました。
過去の所見を見て、「あ!確かに」ということもあります(^_^;
左下大静脈は、右下大静脈(通常)から分岐しているのではなく、左腎静脈から分岐しれいるのですね…再度、確認して勉強して起きます。
左腎静脈に合流ですね。
卵巣静脈の拡張と間違えないようにしないとですね。
こんにちは、お世話になります!
左右対称のためか全く違和感を感じずスルーしてしまいました…
解剖の基本構造を順番に目で追う癖というかルールをつくらないとだめなのかなぁと思いました…
後横隔膜脚腔とあわせて、以前出てきた正中弓状靭帯症候群の復習もしました!
>以前出てきた正中弓状靭帯症候群の復習もしました!
ESPRESSO救急画像診断の腹部の復習ですね(^o^)
アウトプットありがとうございます。
ですね。私もこれ見つけるの実は苦手です・・・(^_^;
右鎖骨下動脈起始異常もあるようですが
メールでもご指摘ありがとうございます。
追記しました。
難しかったです。正直違和感を覚えたのですがスルーしてしまいました。横断像で後で見返して、しれっと並走しだすのが可笑しかったです。冠状断では良く解りました。脾臓周囲外側と腎臓側にこれまた2個の脾臓と等しい造影効果の腫瘤影を転移かなぁと思ってしまいました。リンパ節の腫大(場所も変ですが)としても造影されず低吸収のままだと思うのですが如何でしょうか。的外れな質問かもしれませんがよろしくお願いいたします。
アウトプットありがとうございます。
>しれっと並走しだすのが可笑しかったです。
そう言われるとそう(可笑しい)しか見えなくなりました(^^)
>脾臓周囲外側と腎臓側にこれまた2個の脾臓と等しい造影効果の腫瘤影を転移かなぁ
ほとんど正解までたどり着いています。
「脾臓と等しい造影効果」ですので、これを副脾といいます。
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/3315
後横隔膜脚腔の軟部陰影はリンパ節転移だったのでしょうか?普通の転移と少し形状が違ってみえて、これが質問かと思ってしまいました。
アウトプットありがとうございます。
>ちょっと形状が変だったので、これが実は転移ではなくて何でしょう?という問題かと思ってました
ではないです(^_^;)
結局こちらは生検などはされておらず、サイズ変化なく経過しており何なのかはわかっておりません。申し訳ありません。
ありがとうございます。いつも勉強させていただいて深く感謝しています。今後ともよろしくお願いします。
いえいえ、恐れ多いです。
先生からすると基本的な症例が多いと思いますが、こちらこそよろしくお願いしますm(_ _)m
ちょっと質問が重複して申し訳ありません。うまくログインできておらず2つ目のは削除してください。お手数をおかけして申し訳ありません。
お名前が出ていたので一つ目を削除しました。
左総腸骨静脈って左腎静脈に注ぐんだっけ……?とちょっと違和感を感じつつも、そうと思いこんでしまい、より末梢の静脈が正中をまたいでいるのを見つけてこれはおかしいということで答えにしてしまいました。解剖復習しておきます……(国試前)
アウトプットありがとうございます。
>左総腸骨静脈って左腎静脈に注ぐんだっけ……?とちょっと違和感を感じつつ
その違和感が大事ですね。
重複下大静脈はさすがに国家試験には出ないと思いますが左精巣静脈や卵巣静脈が左腎静脈に注ぐあたりは出てもおかしくないかもですね。
右の総頸動脈や鎖骨下動脈の分岐異常はわかったのですが、異所性右鎖骨下動脈という呼び方があるんですね。重複下大静脈は1つ見つかったので、完全に見落としました。
以前、左からCVを挿入した患者を撮影した際に先端があり得ないところにあったので、おかしいと思ったら左上大静脈遺残でした。挿入した医師と焦った記憶があります。重複下大静脈の患者で左大腿からCV挿入したらカテーテルは椎体左側を通るので気付かないと動脈穿刺したかと思ってしまいますね。
アウトプットありがとうございます。
>以前、左からCVを挿入した患者を撮影した際に先端があり得ないところにあったので、おかしいと思ったら左上大静脈遺残でした。挿入した医師と焦った記憶があります。
これはある意味貴重な体験をしておられますね(^_^;)
>重複下大静脈の患者で左大腿からCV挿入したらカテーテルは椎体左側を通るので気付かないと動脈穿刺したかと思ってしまいますね。
ですね。
CV前にCTがあればチェックした方がよいと教えてくれる症例ですね。
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https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/20046