後横隔膜脚腔(retrocrural space)とは?
- 左右の横隔膜脚と椎体に挟まれた狭い領域のこと。後縦隔と後腹膜を連絡する。後縦隔に含めるとする説もある。
- 大動脈、奇静脈(右側)、半奇静脈(左側)、胸管、リンパ節、大・小内臓神経などが含まれる。大動脈、奇静脈(右側)、半奇静脈(左側)以外はCTで確認できないことが多い。
- 同部位のリンパ節をretrocrural node(後脚リンパ節あるいは横隔膜脚リンパ節)という。リンパ節はCTで見えやすく、6mm以上あれば有意な腫大とされる。
- 後横隔膜脚は脂肪組織で満たされているため、腫大したリンパ節、拡張した奇・半奇静脈、神経線維腫などは鋭敏に描出される。
症例 60歳代女性 胃癌再発
下大静脈背側のリンパ節および後横隔膜脚腔のリンパ節腫大を認めており、いずれも転移を疑う所見です。
症例 80歳代女性 リンパ管の拡張
- 後横隔膜脚は(後)縦隔と直接連絡しているため、神経芽腫が本腔を通じて上下(後縦隔と後腹膜)につながっていたり、急性膵炎後に縦隔に偽嚢胞を形成したり、後腹膜線維症が縦隔に進展することがある。
- 大動脈は横隔膜を斜めに貫くが、IVCや食道のように裂孔を通っているわけではなく、大動脈は横隔膜脚の背側に位置する。大動脈の前面をまたぎ、左右の横隔膜脚を繋ぐ靭帯を正中弓状靭帯(median arcuateligament)という。
- このすぐ尾側Th12の高さで大動脈から腹腔動脈が分枝する。この前面には既に横隔膜はない。正中弓状靭帯に連続するのが左右の横隔膜脚という筋腱性の束である。右脚は左より若干長く、L3-4レベル、左脚はL1-2レベルで椎体に付着する。
参考)腹部120ステップP285(中外医学社 山梨大学 荒木力先生)