
症例37
【症例】70歳代女性
【主訴】血痰
【既往歴】閉塞性肥大型心筋症、発作性心房細動、腎疾患(片腎)
【内服薬】酸化マグネシウム、アミオダロン、メバロチン、アーチスト、ルプラック、チラージン、ワーファリン
画像はこちら
肝臓にどのようなことが起こっている可能性がある?
※今回は主訴の血痰についてはスルーしてください。
今回の最大のポイントは、
「何か肝臓がいつもより白いぞ!!!」
という違和感を感じられるかです。
皆さんの環境ではCT値が測定できないので恐縮ですが、CT値を測定すると、
CT値の平均値は108HUと非常に高値となっていることがわかります。
何が起こっているのでしょうか?
実は、単純CTにおいて肝臓の吸収値が異常に高い(=白い)場合(85HU以上)には、原子番号が高い元素(鉄,金,銅,ヨードなどの金属)や高分子化合物が沈着していることが考えられるとされます。
では、どんな元素が沈着しているのでしょうか?
実はヒントは内服薬にありました。
アミオダロンです。
抗不整脈薬の1つであるアミオダロンは、ヨードを含有しているため、肝に溜まると高吸収を呈することが知られています。
このようなアミオダロンにより肝臓にヨードが沈着して高吸収となった肝臓を、その名も
アミオダロン肝
といいます。(そのまま!)
※ヨードを含有しているといえば、甲状腺も単純CTで高吸収ですよね。
診断:アミオダロン肝
※アミオダロンの投薬が中止されました。
関連:
その他所見:
- ペースメーカー留置あり。
- 縦隔小リンパ節あり。心膜洞液貯留あり。
- 胆石ー胆泥の可能性あり。
- 左片腎。左腎に小さな嚢胞あり。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
確かに「ヨード沈着」というと甲状腺のイメージですが、画像上は肝臓への沈着の方が目立っていますね。甲状腺の高吸収はまだらに見えます。
アミオダロンの目立たせ方に味があっていいと思いますヾ(๑╹◡╹)ノ” 笑
>アミオダロンの目立たせ方に味があっていいと思いますヾ(๑╹◡╹)ノ” 笑
平成最後にお褒めのお言葉ありがたくいただきますm(_ _)m
令和もよろしくお願い申し上げます(^o^)
肝臓高吸収=鉄と思っていました
アミオダロン…
覚えておきます!
アウトプットありがとうございます。
鉄のこともありますが、内服薬が影響している場合もありますので、覚えておいてください。
アミオダロン肝、
まったく知りませんでした。
ありがとうございます!
その他の所見で
左腎臓が形、辺縁不整なのですが
何かの腎疾患でしょうか?
あと左腎にLDAが数個あるような気がしますが、いかがでしょうか?
よろしくお願いします。
>左腎臓が形、辺縁不整なのですが
何かの腎疾患でしょうか?
これだけではなんとも言えないと思います。
おっしゃるように小さな腎嚢胞がありそうです。
アミオダロン肝,覚えやすくて良いですね.
知りませんでした.
肝臓がいつもより白い(高吸収だ)ぞ!と思ったら、CT値を測定してみてください。
で、CT値が高い場合は、内服薬などを確認してみてください。
こんにちは。いつもお世話になっております。
肝内の門脈や肝静脈が目立つように思ったのですが、これは周囲肝が高吸収であるからでしょうか?
下大静脈径も若干太いような気がして、閉塞性肥大型心筋症によってうっ滞がおこっているのかなぁと考えてしまいました。
アウトプットありがとうございます。
>肝内の門脈や肝静脈が目立つように思ったのですが、これは周囲肝が高吸収であるからでしょうか?
そうですね。相対的に目立つだけですね。
>下大静脈径も若干太いような気がして、閉塞性肥大型心筋症によってうっ滞がおこっているのかなぁと考えてしまいました。
下大静脈は今はむしろ虚脱傾向にありますね。
脱水の評価に救急でエコーで下大静脈をチェックしたりしますね。
CTでももちろんチェックできます。
いつも大変勉強になります。ありがとうございます。
勉強不足で申し訳ありません…
アミオダロン肝で休薬とありましたが、飲み続けると肝臓の機能はどのようになりますか?
また、休薬すると、抗不整脈薬で他に代用できるお薬があるのでしょうか?
ご指導、宜しくお願い致します。
アウトプットありがとうございます。
>アミオダロン肝で休薬とありましたが、飲み続けると肝臓の機能はどのようになりますか?
金属(アミオダロンの場合はヨード)が肝に沈着していていますので、肝障害が起こり、場合によっては肝硬変、肝不全に至ることもあると報告されています。
https://www.imic.or.jp/literature/992/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/106/6/106_1199/_pdf/-char/ja
>また、休薬すると、抗不整脈薬で他に代用できるお薬があるのでしょうか?
何に変更するのが一般的なのかはわかりませんが、休薬もしくは他剤への変更を検討すると記載がありますね。
今回肝内胆管が造影していないのに目立って見えたのは、相対的に強調されていたのですね。勉強になりました。沈黙の臓器だからこそ色の変化にも注意したいと思いました。一つ質問ですが、ROI指定はざっくり大きくとられますか?実質だけを選んで指定されますか?つまらなくてすいません。
アウトプットありがとうございます。
>今回肝内胆管が造影していないのに目立って見えたのは、相対的に強調されていたのですね。
今回肝内を走行して目立っているのは、門脈と肝静脈ですね。
>一つ質問ですが、ROI指定はざっくり大きくとられますか?実質だけを選んで指定されますか?つまらなくてすいません。
そうですね。肝内におさまるようにざっくり大きく取ります。
いつも勉強になっております。
今回の症例ですが、安直に薬剤性の肝障害としてしまったのですが、アミオダロンの沈着による高吸収と肝障害による非アルコール性脂肪性肝疾患の鑑別は可能なのでしょうか?アミオダロン沈着ということは肝障害も起きるのでは・・・とも考え調べましたが、あまりよく分からなかったので質問させていただきました。よろしくお願いします。
アウトプットありがとうございます。
>アミオダロンの沈着による高吸収と肝障害による非アルコール性脂肪性肝疾患の鑑別は可能なのでしょうか?
非アルコール性脂肪性肝疾患の場合は、脂肪肝なので低吸収になります。
アミオダロンは高吸収になります。
>アミオダロン沈着ということは肝障害も起きるのでは
アミオダロン肝で検索すると肝障害を起こした例がたくさん出てきます。
鉄沈着と安易に答えてしまいました。
アミオダロン肝、初耳でした
勉強になります。ありがとうございます
アウトプットありがとうございます。
鉄沈着の可能性も考えなければならないですね。
いつもより何か白いぞ!と思えるかですね。
いつも貴重な症例をありがとうございます。
先生も解説されていますが、肝びまん性高吸収で臨床で一番見かけるのは、鉄沈着特に輸血、鉄剤内服、肝硬変などでしょうか?
こちらも先生解説されていますが、アミオダロンと言えばアミオダロン肺も有名です。基本的に適応が循環器疾患患者なので、肺水腫との鑑別が重要になってきます(結局、画像診断のみでは鑑別困難な印象…)。
設問にある血痰に触れてしまっていましたら、すいませんotz
アウトプットありがとうございます。
>先生も解説されていますが、肝びまん性高吸収で臨床で一番見かけるのは、鉄沈着特に輸血、鉄剤内服、肝硬変などでしょうか?
関連ページのこちらに記載があります。
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/14001
ここまでの高吸収は今回のアミオダロン肝しか経験がありません。
>アミオダロンと言えばアミオダロン肺も有名です。基本的に適応が循環器疾患患者なので、肺水腫との鑑別が重要になってきます(結局、画像診断のみでは鑑別困難な印象…)。
おっしゃるとおりです。今回肺野条件は非提示にしていますが、この方アミオダロン肺を疑う所見があります。
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/21307
肝がやや腫大して見えました。
アウトプットありがとうございます。
冠状断像で見ても、腫大はないようです。
関連
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/37794