【頭部】症例7 解答編

【頭部】症例7

【症例】50歳代 男性
【主訴】右上下肢の脱力
【現病歴】1ヶ月半前に転倒あり。
【身体所見】JCS-0、脳神経に明らかな異常所見を認めず。右上下肢 MMT 5-/5 上肢のBarre徴候:右で陽性。右手で書字困難、独歩可能であるが右下肢の振り出しは左側と比較し弱い。

画像はこちら

左側に硬膜下血腫を認めており、軽度右側への正中構造の偏位を認めています。
ですが、切迫脳ヘルニアを疑うような所見は認めていません。

1ヶ月半前に転倒の既往があることからも慢性硬膜下血腫を疑う所見です。

血腫は頭頂部でとくに目立ちます。

冠状断像においても同様です。

側脳室の圧排所見および軽度右側への正中構造の偏位を認めています。

後ろの方では右側のくも膜下腔がやや広く見えますが、これはくも膜下腔の開大ではなく、硬膜下水腫を疑う所見です。

つまり、

  • 右側に硬膜下水腫
  • 左側に硬膜下血腫

を認めている状態です。

診断:左慢性硬膜下血腫+右硬膜下水腫

 

左の上顎洞の粘膜肥厚の様子からも気付かれた方もいるかもしれません。

実はこの方、症例6と同一症例です。

つまり、症例6で見たように受傷時には

  • 右急性硬膜外血腫
  • 脳挫傷
  • 外傷性くも膜下出血
  • 左急性硬膜下血腫
  • 硬膜下水腫

を認めていましたが、1ヶ月半後には、

  • 右急性硬膜外血腫→消失
  • 脳挫傷→瘢痕化
  • 外傷性くも膜下出血→消失
  • 左急性硬膜下血腫→慢性硬膜下血腫となる
  • 硬膜下水腫→右で明瞭化(硬膜下水腫は左小脳テント沿いにもあり)

となったということです。
※ただし、硬膜下水腫は血腫と厳密に鑑別はできません。

非常にたくさんのことを学べる症例とも言えますね。

切迫脳ヘルニアを疑う所見はありませんが、

  • (軽度の)正中構造の偏位があること
  • 右上下肢の運動麻痺があること

から外科的治療介入の適応と判断され、翌日、左慢性硬膜下血腫の手術(慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術)となりました。

 

関連:

その他所見:

  • 左上顎洞に粘膜肥厚あり。慢性副鼻腔炎の疑い。
【頭部】症例7の動画解説

症例7の補足動画

 

これを踏まえて補足症例を2つ用意しました。

是非取り組んでみてください。

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。