
【頭部】TIPS症例63
【症例】40歳代 女性
【主訴】嘔気
【現病歴】乳癌術後再発があり、多発骨転移、肝転移、肺転移で化学療法を受けているが、1ヶ月前から治療を拒否。
画像はこちら
異常所見と診断は?
左の硬膜もしくは硬膜下にDWIで等信号の構造があり、ADCではやや信号低下を認めています。
T1WI、T2WIでは灰白質と等信号程度で左の硬膜が肥厚しているように見えます。
造影すると、左優位に硬膜を縁取るように硬膜の肥厚を認めており、硬膜転移を疑う所見です。
髄膜転移のうちDA patternに相当します。
【髄膜転移には2種類ある】
・硬膜,硬膜下腔,くも膜が主体のDA pattern
・くも膜下腔,軟膜が主体のPS patternの2種類です。両者は混在することもあります。#画像診断 pic.twitter.com/ssHKPCVTV8
— ごろ~にゃ@画像診断cafe (@radiology_cafe) September 18, 2021
硬膜転移だけでなく、転移性脳腫瘍を疑う所見を大脳半球や小脳半球にも認めています。
診断:転移性脳腫瘍+硬膜転移
※全脳照射および化学療法の再開となりました。
なお、病歴に記載していませんでしたが、頭部の皮膚転移を視診で指摘されています。
その目で見てみると両側の皮膚部にDWI/ADC=高信号/信号低下している結節があり、これが皮膚転移と考えられます。
また今回の硬膜転移が
- 骨転移からの浸潤
- 血行性転移
なのかという問題ですが、びまん性に硬膜肥厚を認めている点も血行性転移を示唆する所見ですが、今回のMRIやこの後の全脳照射後の頭部CTでも骨転移を疑う所見は認めていないので、血行性転移と診断することができます。
全脳照射後の頭部CTがこちら。
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【頭部】TIPS症例63の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
両側中心溝付近になん髄膜の転移もある気がしますがいかがでしょうか?ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
あるのかもしれませんが、脳転移なのか軟髄膜転移なのかは判断が難しいところですね。
この症例では、DA pattern優位であることが分かればOKです。
これほど綺麗な硬膜転移はまだ見たことがありません
教科書的な画像ですね
アウトプットありがとうございます。
The硬膜転移ですね。ありがとうございます。
前回の症例62と今回の造影横断像のスクリーンショットを並べて見てやっと硬膜の異常造影効果が分かりました。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
DA patternとPS patternの違いをご理解いただければ幸いです。
わかりやすい硬膜転移の症例でよく分かりました。ありがとうございます。
T1の画像なのですが、
硬膜転移などが原因で脳溝の血管が高信号に見えているのでしょうか…?
所々血管陰影?が目立っているので…
アウトプットありがとうございます。
確かに血管が高信号となっていますね。
この前に造影CTが撮影されたのかもしれません。
また確認します。
関連
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/7604
確認したところこの検査の前に造影CTなどヨード造影剤を用いた検査は行われていませんでした。
調べたところ今回の画像は単なるT1WIではなく、T1 FLAIRのようで、この場合は血管が高信号になることがあるそうです。
これを有意と取らないように注意が必要ですね。
教科書的な画像でしたが硬膜転移と気付けませんでした。ありがとうございました。
硬膜外血腫、硬膜下血腫、くも膜下出血と鑑別するには T1WIで硬膜と連続しているのかという点や、FLAIRでの信号変化で鑑別するのでしょうか。
動画の最後の様なCTでの浮腫性変化と思われる高吸収域を救急外来などで見てしまうと、脳出血が無いのかMRIを撮影したくなります。
アウトプットありがとうございます。
>硬膜外血腫、硬膜下血腫、くも膜下出血と鑑別するには T1WIで硬膜と連続しているのかという点や、FLAIRでの信号変化で鑑別するのでしょうか。
造影されている点で血腫とは鑑別できます。
>動画の最後の様なCTでの浮腫性変化と思われる高吸収域を救急外来などで見てしまうと、脳出血が無いのかMRIを撮影したくなります。
そうですね。最後のCTだけみると硬膜転移よりは硬膜下血腫でもあるのかと思ってしまいます。
頭部外傷の既往など病歴の確認が重要となりますし、MRIを撮影したくなるのはおっしゃるとおりだと思います。
>造影されている点で血腫とは鑑別できます。
言葉足らずで申し訳ありません。単純MRIでの鑑別の内容です。
救急外来で専門外の医者がいきなり造影MRIのオーダーをするのは勇気がいるものです。
単純でとなるとですが、今回左硬膜下は不整に肥厚していますので硬膜下血腫としては違和感は抱けるかと思います。
右は血腫との鑑別は困難だと考えます。
不整な肥厚という点は考えていませんでした。いつもご教授いただきありがとうございます。
珍しい硬膜転移の症例をありがとうございました.
2つ質問があります.
1.頭蓋骨転移はないとのことですが,MRIでは頭蓋骨の骨髄は著明に低信号(T1WI)であり,DWIでも不均一な高信号があります.不均一な造影効果もあるようです.びまん性の硬化性転移と考えることはできないでしょうか?
2.MRIの信号にヨード造影剤が影響するとは知りませんでした.GdのCTへの影響はあるので,造影CT→MRI,造影MRI→CTのいずれもダメという理解でよいでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>1
確かにそのようにも見えるのですが、1週間前のFDG-PETでは斜台には転移を認めたようですが、頭蓋骨には認めていないようです。
また、他の骨にも転移はあるのですが、いわゆるびまん性骨転移ではありません。
>2
造影→造影は極力避け、おっしゃるように造影→単純の順番も極力避けるということですね。
軟髄膜転移の診断にはFLAIRと造影T1が有用との記載がありましたが、硬膜転移についてFLAIRの有用性はどの程度ありますか?また軟髄膜転移ではFLAIRと造影T1を用いた診断の有用性にどれくらいの差があるんでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>軟髄膜転移の診断にはFLAIRと造影T1が有用との記載がありましたが
これはどこに記載がありますか?
>また軟髄膜転移ではFLAIRと造影T1を用いた診断の有用性にどれくらいの差があるんでしょうか?
造影では腫瘍そのものが造影されますので、造影の方が有用です。
FLAIRでは血腫と見分けがつかないことがしばしばあると思われます。
肥厚性硬膜炎の解説動画、MRI所見の解説部分との混同でした。失礼しました。