【頭部】TIPS症例48

【頭部】TIPS症例48

【症例】70歳代 男性

繰り返す脳梗塞で他院かかりつけ。スクリーニング。

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CT

MRI

どんな所見がありますか?

まず頭部CTから見ていきましょう。

右側頭部皮下に前回の症例で見たような、脂肪腫を疑う所見を認めています。

前回よりもサイズが大きく、この症例を症例47としてもよかったのですが、それだけでなく色々所見があるので、症例48にしました。

右優位に中大脳動脈皮質枝領域に、皮質の消失、白質の低吸収化、萎縮を認めています。

既往にある陳旧性脳梗塞による変化が疑われます。

中大脳動脈皮質枝領域はこちらです。

右基底核から放線冠に明瞭な低吸収域があり、陳旧性脳梗塞を疑う所見です。

また右側の中大脳動脈領域の萎縮を認めています。

左右差を比べれば明らかです。

このような所見を認めた場合、右の中大脳動脈が慢性的な狭窄〜閉塞があることが疑われます。

またよく見ると、中脳の右側の大脳脚から橋にかけて低吸収を認めています。

これは錐体路に沿った低吸収で、ワーラー変性(Waller変性)を示唆する所見です。

また、右側頭葉にも陳旧性脳梗塞及びそれに伴う萎縮を認めています。

次にMRIを見てみましょう。

DWIで異常な高信号は認めず、ADCで異常な信号低下は認めていません。

次に、CTで脂肪腫が疑われた部位をT2WIおよびMRA元画像で見てみましょう。

すると、右側頭部の皮下腫瘤はT2WIおよびMRA元画像でともに高信号であり、脂肪腫に矛盾しない所見です。

※今回のようにT1WIが撮影されていない場合、同じTE、TRが短いMRA元画像をT1WIとして代用することがあります。

次にFLAIRを見てみましょう。

両側の中大脳動脈領域の萎縮、白質変性が著明です。

白質内に低信号が散見され、陳旧性脳梗塞を疑う所見です。

またCTでも見たように基底核レベルでは中大脳動脈領域において右側の萎縮が左側と比べると目立ちます。

これはCTのところでも記載したように右中大脳動脈領域の血流の慢性的な低下を示唆する所見でした。

また、右優位に基底核〜放線冠に多発陳旧性脳梗塞を認めていることがわかります。

T2WIおよびFLAIRで右の錐体路に沿って高信号を認めています。

中脳の右側の大脳脚には萎縮も認めています。

これはワーラー変性(Waller変性)を疑う所見です。

次にMRA MIP像を見てみましょう。

すると、本来見えるべき右の内頸動脈の途中〜中大脳動脈の描出がなく、閉塞していることが示唆されます。

  • MRAにおける内頸動脈の解剖はこちら
  • MRAにおける中大脳動脈の解剖はこちら

右の中大脳動脈領域の大脳半球が左と比べて萎縮していましたが、やはり中大脳動脈が閉塞していた結果であることが確認できます。

ところで症例39のもやもや病では本来見えるべき中大脳動脈がT2WIで見えず、代わりに細かな「もやもや血管」が発達していました。

中大脳動脈などの主幹動脈はT2WIでflow voidとして無(低)信号域として認めるのでした。

この症例ではどうでしょうか?

すると、左の内頸動脈〜中大脳動脈はflow voidとして明瞭な低信号として認めていますが、右側は辺縁は低信号ですが、内部は低信号になっておらず、血流がないことを示唆する所見を認めています。

MRAが撮影されていなくてもT2WIでこのように血流の有無を確認することができます。

 

さて、上記で、さらっとワーラー変性(Waller変性)の所見ですと述べましたが、この変性何者でしょうか?

Waller変性
  • 神経細胞または軸索の障害により順行性に髄鞘の変性を来すもの。
  • 大脳皮質運動領域から内包後脚の障害では、皮質脊髄路を中心とする錐体路に変性が認められる。
  • 発症4ヶ月以降ではT2WIで高信号を示し、さらに長期に経過すると萎縮を生じる。

というものです。

今回は右優位に広範な中大脳動脈領域の陳旧性の脳梗塞を認めています。

その結果、右の皮質脊髄路を中心とする錐体路に変性を認めたということです。

 

診断:右側頭部皮下脂肪腫、右内頸動脈〜中大脳動脈閉塞症、右優位に両側中大脳動脈領域に陳旧性脳梗塞、右錐体路にワーラー変性

 

 

関連:

その他所見:両側上顎洞・篩骨洞に粘膜肥厚あり。

【頭部】TIPS症例48の動画解説


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