脳の血管(動脈)の解剖は一見複雑です。
また日本語だけでなく英語やその略語で表記されることもあるのもややこしいですね。
しかしコツを掴めば理解するのはそれほど難しくありません。
今回は、そんな脳の血管(動脈)の解剖を図と実際のMRAの画像を用いてわかりやすく解説します。
脳血管の解剖を動画で解説
まず脳血管の解剖を動画にまとめましたので、チェックして見てください。
記事で出てくる図(イラスト)やMRAの画像も出て来ます。
動画を見られた上で記事を読んでいただくことで理解が深まります。
脳血管(動脈)の解剖
脳血管(動脈)の全体像をまず見てみると次のようになります。
右側は実際の脳のMRAの画像を前から見たものです。
左側はそれを図にしたものです。
これだとごちゃごちゃして分かりにくいですね。
まず脳血管は、
- 前方循環系
- 後方循環系
の2つに分けられます。
その名の通り、前の方を循環するのが前方循環系、後ろの方を循環するのが後方循環系です。
前方循環系は、大脳半球の大部分に血流を送り、栄養します。
一方、後方循環系は、大脳半球の後ろの方の一部と、小脳半球、脳幹部に血流を送り、栄養します。
前方循環系の解剖
前方循環系の脳血管のみに赤色を塗ったMRAの画像が次のようになります。
これを図で示すと次のようになります。
内頚動脈
このうち内頚動脈(読み方は「ないけいどうみゃく」)の位置は以下のようになります。
内頚動脈は英語ではInternal Carotid Arteryであり、頭文字をとって略語でICA(読み方はそのまま「アイシーエー」)と呼ばれます。
内頚動脈からは、前脈絡動脈(Acho:Anterior Choroidal Artery)が分岐します。(読み方は「ぜんみゃくらくどうみゃく」)
前大脳動脈
前大脳動脈(読み方は「ぜんだいのうどうみゃく」)の位置は以下のようになります。
前大脳動脈は英語ではAnterior Cerebral Arteryであり、頭文字をとって略語でACA(読み方はそのまま「エーシーエー」)と呼ばれます。
前大脳動脈は左右で交通を認めており、この交通する血管を前交通動脈(Anterior Communicating Artery)と言います。(読み方は「ぜんこうつうどうみゃく」)
前交通動脈は略語でA-comと略され、読み方は「エーコム」です。
前大脳動脈は、この前交通動脈までの部分をA1、その先をA2と分けられます。
中大脳動脈
中大脳動脈(読み方は「ちゅうだいのうどうみゃく」)の位置は以下のようになります。
中大脳動脈は英語ではMiddle Cerebral Arteryであり、頭文字をとって略語でMCA(読み方はそのまま「エムシーエー」)と呼ばれます。
中大脳動脈は、この分岐部までの部分をM1、その先をM2(さらにM3と続く)と分けられます。
前方循環系の脳血管の解剖をまとめると以下のようになります。
続いて後方循環系の脳血管を見ていきましょう。
後方循環系の解剖
後方循環系の脳血管のみにピンク色を塗ったMRAの画像が次のようになります。
これを図で示すと次のようになります。
椎骨動脈
椎骨動脈(読み方は「ついこつどうみゃく」)の位置は以下のようになります。
椎骨動脈は英語ではVertebral Arteryであり、頭文字をとってVA(読み方はそのまま「ヴイエー」)と呼ばれます。
椎骨動脈からは、後下小脳動脈という血管が分岐します。(読み方は「こうかしょうのうどうみゃく」)
後下小脳動脈は英語では、Posterior Inferior Cerebellar Arteryであり、頭文字をとって略語でPICA(読み方は「パイカ」)と呼ばれます。
脳底動脈
脳底動脈(読み方は「のうていどうみゃく」)の位置は以下のようになります。
椎骨動脈が合流したところから、次の後大脳動脈の分岐部までです。
脳底動脈は英語ではBasilar Arteryであり、頭文字をとってBA(読み方はそのまま「ビーエー」)と呼ばれます。
脳底動脈からは、上小脳動脈、前下小脳動脈という2つの血管が分岐します。(読み方はそれぞれ「じょうしょうのうどうみゃく」「ぜんかしょうのうどうみゃく」)
上小脳動脈は英語では、Superior Cerebellar Arteryであり、頭文字をとって略語でSCA(読み方はそのまま「エスシーエー」)と呼ばれます。
前下小脳動脈は英語では、Anterior Inferior Cerebellar Arteryであり、頭文字をとって略語でAICA(読み方は「アイカ」)と呼ばれます。
後大脳動脈
後大脳動脈(読み方は「こうだいのうどうみゃく」)の位置は以下のようになります。
後大脳動脈は英語ではPosterior Cerebral Arteryであり、頭文字をとって略語でPCA(読み方はそのまま「ピーシーエー」)と呼ばれます。
後方循環系の脳血管の解剖をまとめると以下のようになります。
後交通動脈
ここまで、前方循環系と後方循環系の脳血管の解剖について見てきました。
この前方循環系と後方循環系には交通があります。
上のMRAの画像に色を塗った図の紫色の部分で繋がっています。
これを図で表すと次のようになります。
前方循環系の内頚動脈と後方循環系の脳底動脈及び後大脳動脈を取り出すとこのようになります。
前方循環系と後方循環系を結ぶ動脈を後交通動脈(読み方は「こうこうつうどうみゃく」)と言います。
後交通動脈は英語ではPosterior Communicating Artery略語で、P-comと略され、読み方は「ピーコム」です。
また内頚動脈にも場所により名前が付いていて、この側面から見た図で考えるのが分かりやすいので、ついでに見てみましょう。
- C1:後交通動脈を分岐する手前から中大脳動脈・前大脳動脈に変わるまで。
- C2:眼動脈を分岐する部分から後交通動脈直前まで。
- C3:C2とC4の間。
- C4:海綿静脈洞の内側部を走行する部分。
- C5:頸動脈管から上の部分。
と分けることができます。
最後に
脳の血管の解剖について、前方循環系と後方循環系に分けてまとめて見ました。
パッとこの図を見せられても難しいかもしれませんが、分けて考えていくと、理解しやすいですね。
また今回動画でも解説しましたので、そちらも参考にしていただけるとより理解が深まる思います。
参考になれば幸いです( ^ω^ )
非常に分かりやすかったです
ありがとうございますm(_ _)m
実際のMRIの画像を使って説明し、また紙面の図でも同様に教えていただけわかりやすかったです!ありがとうございました。
コメントありがとうございます。
お役に立ててよかったです(^^)
とてもわかりやすく、勉強になりました!
細かいことですが、C3の位置のところで”C2とC3の間”となっていますが”C2とC4の間”の誤植ですかね?
誤植ご指摘いただき、ありがとうございます。
修正しました。
MIP正面像で、p-comの位置をつかむのがとても苦手で苦手で・・・
おかげさまでわかりやすかったです
(後方循環系には、P1P2とか名前付いていないんですね
コメントありがとうございます。
後方循環系にもP1、P2・・・と名前ついています。
少し質問ですが、内頚動脈の場所にC1~C5の名前がついており、中大脳動脈、前大脳動脈にもM1~M2、A1~2とありますが、内頚動脈の順番と中大脳動脈、前大脳動脈の順番が反対(上から数えるのと下から数えるのとで異なりますが、)理由はあるのでしょうか?。
また、覚える際に間違いやすく、覚える方法はありますか?
コメントありがとうございます。
>理由はあるのでしょうか?。
どうなんでしょう?確かに逆になっていますが、理由は知りません。
>また、覚える際に間違いやすく、覚える方法はありますか?
この記事をよく読んでいただければ覚えられると思います。
個人的にはICAはサイフォン部がC3でと覚えています。
はじめまして。
医学生です。
内頸動脈の走行についてお伺いします。
総頚動脈から分かれて始まる内頸動脈は、眼動脈と分岐した後に、後交通動脈と吻合、その後、前大脳動脈と中大脳動脈に分岐する、という認識であっていますか?
また、医師国家試験102I45で、一過性の黒内障発作をきたすとき、内頸動脈の「終末部」の狭窄は誤りとなっていたのですが、「終末部」とは具体的にどこからを定義するのでしょうか。
気になりましたので、よろしくお願いします。
コメントありがとうございます。
>総頚動脈から分かれて始まる内頸動脈は、眼動脈と分岐した後に、後交通動脈と吻合、その後、前大脳動脈と中大脳動脈に分岐する、という認識であっていますか?
合ってはいますが、内頸動脈は、前大脳動脈と中大脳動脈へと分岐する。その間で、眼動脈を分枝し、後方循環系である後大脳動脈と後交通動脈を介して吻合がある。
という表現の方がいいですね。
>医師国家試験102I45で、一過性の黒内障発作をきたすとき、内頸動脈の「終末部」の狭窄は誤りとなっていたのですが、「終末部」とは具体的にどこからを定義するのでしょうか。
https://medu4.com/102I45
こちらですね。
終末部というのは具体的にC1〜5のうちどこからという定義はないと思います。
あえて言うならばC1らへんでしょうか。
眼動脈を分岐したあとの内頸動脈は一過性の黒内障発作には関与しません。
医学部5年生です。画像診断が苦手意識が高く、たまたま画像診断cafe に出会いました。毎回毎回学ばせていただいてます。今回もはじめは曖昧だった血管の位置関係を最後は理解して終えることができました。継続して画像を読んでいきたいです。
無事理解いただけてよかったです!
是非継続して学んでいただき苦手意識をなくしてください!