【胸部】TIPS症例55
【症例】40歳代男性
【主訴】胸部違和感
【既往歴】高血圧、脳幹梗塞
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画像所見と診断は?
まず肺野には異常所見は認めていません。
縦隔条件を見てみましょう。
左頚部に一部石灰化を有するリンパ節腫大を認めています。
サイズは2cmを超えています。
頭頚部のリンパ節の分類で知られているレベルシステム(レベル分類)ではレベルⅣに相当する部位で、肺癌取扱い規約では、左下頚部、鎖骨上窩リンパ節(#1L)に相当する部位です。
今回スライスの最も上段にある大きなリンパ節の下にもリンパ節腫大を複数認めていることがわかります。
リンパ節は一部で石灰化を認めています。
またよく見てみると甲状腺左葉背側にも石灰化を有するリンパ節と思われる構造があります。
さらに下のスライスすると、右気管傍にも一部で石灰化を有するリンパ節を認めています。
つまり、今回のリンパ節の特徴としては、
- 最大径が2cm(>1.5cm)を超えている
- 左側を主体に認めている
- 一部で石灰化を認めている
と言ったものがあります。
こんなときに思い出さないといけないのが、甲状腺癌(や頭頚部癌)があり、その転移を来しているということです。
もちろん結核性などリンパ節炎の可能性もあります。
診断:左頚部、鎖骨上窩に多発リンパ節腫大あり。甲状腺癌などの転移の可能性あり。
※その後、左頚部リンパ節生検がなされ、甲状腺乳頭癌のリンパ節転移と診断されました。
しかし、あとから見てみても甲状腺には、わずかな石灰化とわずかな低吸収域がある程度で明らかな腫瘍性病変としては認めていません。
むしろ症例54で、結果的に腺腫様甲状腺腫であった腫瘤の方がよほど悪そうな印象を受けてしまいます。
これからも、「甲状腺腫瘍はCTやMRIで存在診断はできても、良悪性の診断は困難」とされるところがよく分かりますね。
術前の評価目的に、頚部の造影CTが施行されました。
前回CTでは撮影範囲には入っていなかったより頭側の頚部リンパ節(レベルⅡA)にもリンパ節腫大を認めていることがわかります。
また左の頚部には頭尾方向にかなり連続してリンパ節腫大を複数認めていることが分かります。
※甲状腺全摘、右気管傍リンパ節郭清、左頚部リンパ節郭清が施行されました。
病理にて甲状腺左葉の乳頭癌+リンパ節転移と診断されました。
最終診断:甲状腺左葉乳頭癌+リンパ節転移
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【胸部】TIPS症例55の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
左Level4のものは静脈と思ってしまい、細かいのがぱらぱらある程度に思い、見落としました。頸部のCTを見るとなっとくでした。なお、2013年に頸部レベルシステムの改訂が行われたようですね。日本ではRTOGが関連しているようです。5c鎖骨上窩・7a retoro pharyngeal ・7b 茎突後区 ・8耳下腺 ・9顔面 ・10a耳介後 ・10b後頭らしいですね。(放射線治療計画ガイドライン2016年版:JASTRO:金原出版 P137-141参照)9.10は気にしたことないですが・・・ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>頸部のCTを見るとなっとくでした。
胸部の単純CTでの縦隔条件での指摘はちょっと難しいですね。
これで引っかける必要があるとはいえ、やはり頚部で造影することでリンパ節の構造が明瞭になりますね。
>2013年に頸部レベルシステムの改訂が行われたようですね。日本ではRTOGが関連しているようです。5c鎖骨上窩・7a retoro pharyngeal ・7b 茎突後区 ・8耳下腺 ・9顔面 ・10a耳介後 ・10b後頭らしいですね。(放射線治療計画ガイドライン2016年版:JASTRO:金原出版 P137-141参照)
これは何癌のリンパ節なのかちょっと手元のその書籍がないのでわからないのですが、同じリンパ節でも場所によって名前が異なるので注意が必要ですね。
リンパ節腫大から、原発が検索されるということはよくあります。鎖骨上窩、縦隔、腋窩、動脈周囲、鼠径など、リンパ節腫大を認めやすい部位も読影ルーチンに含めることが重要だと感じます。
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるとおりですね。
今回の胸部CT撮影での頚部のリンパ節は特に単純CTだと見落とされがちなので要注意ですね。
レベルシステムは意識できませんでしたが、「なんか頸部リンパ節がボコボコしてるな」という印象はありました。そこから甲状腺を注視することができたので、最低限の確認はできたのかなと思います。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。甲状腺や咽頭癌などは、原発よりもリンパ節転移が目立つことがあるので、そちらに気づいてから原発探しということはよくありますね。
もちろん頚部に限らない話ではありますが。
たしかに甲状腺はリンパ節に比して目立っていませんね。
その割に甲状腺癌とは…
CTだけで安心しないように注意しようと思います。
アウトプットありがとうございます。
そうなんです。むしろ症例54の方が悪性ぽいですよね。
CTでの質的診断はそんな程度だということがわかりますね(^_^;)
少し胸部とは離れるので申し訳ないのですが、甲状腺がん術後のフォローアップについて質問です。
施設によるかもしれませんが、当院では造影は頸胸部、単純では胸部のオーダーが耳鼻科からあります。
■造影検査は毎回、甲状腺の単純が必要でしょうか?
術前は必要と思いますが、甲状腺がん術後(全摘、片葉切除)のフォローアップ CTでも単純は必要でしょうか?
(超音波検査のフォローもあります。)
また、
■単純でF/Uされる場合、頸部は必要でしょうか?
頸部は超音波のフォローをされています。
肺転移のみ分かればいいかな、と思っています。
医師に尋ねると、頸部も必要という人もいますし、いらない、という医師もいます。
甲状腺がんは若い人も多いので、撮影範囲に迷います。。。
甲状腺腫瘍診療ガイドライン 2018にもフォローのガイドラインが無いように思います。
http://jaes.umin.jp/pdf/guideline2018.pdf
先生はどのようにされていますか?
アウトプットありがとうございます。
>■造影検査は毎回、甲状腺の単純が必要でしょうか?
超音波のフォローがあるならば、毎回単純+造影でのフォローは必要ないと考えます。
>■単純でF/Uされる場合、頸部は必要でしょうか?
被曝の問題も考えると難しいところではありませんが、リンパ節再発除外のために頚部も撮影があったほうがいいと個人的には考えます。
うちの施設では、基本単純の頚胸部CTでフォローされていることが多いです。
今日も勉強になりました。ありがとうございます。
リンパ節はどうしても苦手意識があります。もしリンパ節転移ブートキャンプなどリンパ節の評価を系統的に学べる講座があったらぜひ参加したいです……
アウトプットありがとうございます。
そして55症例お疲れ様でした。
>リンパ節はどうしても苦手意識があります。もしリンパ節転移ブートキャンプなどリンパ節の評価を系統的に学べる講座があったらぜひ参加したいです……
ご意見ありがとうございます。
今回の胸部や頚部に限らず、腹部においてもどこにリンパ節腫大を認めることがあるのか、リンパ節腫大にフォーカスを絞ったブートキャンプも需要がありそうですね。
個人的にも興味があるところです。また前向きに検討させていただきたいと思います。
延長戦の最後にすっかり見落としてしまいました。。
前の先生も書いておられましたが、やはりリンパ節は苦手です。私もリンパ節腫大ブートキャンプ希望します。
来週からは胸部救急ですので、しっかり勉強していきたいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
アウトプットありがとうございます。
>前の先生も書いておられましたが、やはりリンパ節は苦手です。私もリンパ節腫大ブートキャンプ希望します。
単純CTの場合、リンパ節はわかりにくいですね。
胸部はまだしも頸部となるとさらにややこしいですね。
リンパ節腫大ブートキャンプ・・・(°°;)
また考えておきます。
>来週からは胸部救急ですので、しっかり勉強していきたいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
こちらこそよろしくおねがいします。
追加の症例もありがとうございました。
ハードな問題でした。
リンパ節腫大は左右差を見ていけばいいと思っていました。
内頸静脈は時間差で左右差が生じるので、左右差があってもいいと思い、
大きなリンパ節を見落としていました。
胸部救急画像診断も楽しみにしています。
アウトプットありがとうございます。
>リンパ節腫大は左右差を見ていけばいいと思っていました。
内頸静脈は時間差で左右差が生じるので、左右差があってもいいと思い、
大きなリンパ節を見落としていました。
単純だと難しいこともありますね。
内頸静脈は左右差があってもいいのですが、連続性があるかどうかをチェックしましょう。
連続性がない場合はリンパ節を考えましょう。
胸部救急もよろしくお願いします。
いつもありがとうございます。
この方の”胸部違和感”というのは、嚥下のしづらさとかでしょうか?
もしお分かりになりましたら、具体的にご教授お願いします。
アウトプットありがとうございます。
申し訳ありません。カルテには違和感としか記載がなく、詳細は不明です。