【胸部】TIPS症例48
【症例】60歳代女性
【主訴】右頚部痛
【現病歴】2-3日前から右頚部痛あり。
【既往歴】子宮頚癌術後(広汎子宮全摘術)、全骨盤照射後。非定型抗酸菌症、Basedow病、胃十二指腸潰瘍
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縦隔条件における異常所見およびその原因として考えられることは?
(肺野は中葉舌区に非定型抗酸菌症の変化あり。中葉の肺結節は非定型抗酸菌症による変化か。)
右鎖骨上窩に内部に壊死を伴うリンパ節腫大を認めています。辺縁には造影効果があります。
かなりサイズが大きいですね。
縦隔にも小リンパ節が散見され、一部では内部が低吸収域であり、壊死を伴っている様に見えますが、短径が1cmを超えるようなサイズの大きなものは認めていません。
どんなことが考えられるでしょうか?
まず子宮頚癌の既往がありますので、その再発によるリンパ節転移が考えられます。
その他、
- 扁平上皮癌や小細胞癌のリンパ節転移
- 結核性リンパ節炎
- 化膿性リンパ節炎
などが考えられます。
画像上鑑別を絞れるのはこの程度まででしょう。
今回肺野は中葉に結節がありますが、既往の非定型抗酸菌症による変化のみと考えられました。(つまり、肺癌からのリンパ節転移は考えなくてよいということです。)
右鎖骨上窩のリンパ節は、内部に著明な壊死を伴っている点からは結核の可能性が上がります。
右鎖骨下リンパ節生検が施行され、TB-PCR陽性、QFTも陽性となりました。
最終診断:結核性リンパ節炎
※縦隔リンパ節についてもおそらく結核性リンパ節炎の影響と考えられましたが、子宮頚癌の転移の可能性も否定はできませんでしたが、経過観察でサイズは縮小し、いずれも結核性リンパ節炎によるものと診断されました。
8ヶ月後のCTを提示します。
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【胸部】TIPS症例48の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
実際、胸部CTにおいて、鎖骨上窩及び副腎を含めた撮影範囲で撮影をすることが多いです。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。通常胸部CTでそれらは入っていますね。
前回症例のおかげで3つが鑑別に挙がり、そこからは全くわかりませんでしたがそれで問題ない?ということでホッとしました。とはいえ根拠のある推測は必要ですよね。
アウトプットありがとうございます。
>前回症例のおかげで3つが鑑別に挙がり
良かったです!リンパ節の画像だけでは、確定診断までは至れませんが、鑑別を挙げられることが重要ですね。
子宮頸がんなら左鎖骨上窩だと思いながらも縦郭にもパラパラあるし転移と思ってしまいました。生検できる場所に大きいもの、およびアクティブなお医者さんがいればよいですが・・・。今回の場合だとPETでもおそらくSUV集積する気がします。何でもかんでもメタにするなという注意喚起症例なのでしょうがやはり難しいなとは思います。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>何でもかんでもメタにするなという注意喚起症例なのでしょうがやはり難しいなとは思います。ありがとうございました。
いやまあ実際は、画像だけでは鑑別はなかなか難しいですね(^_^;)
このケースも婦人科の先生は転移疑いとしていました。
どうしてもリンパ節の読影は救急の場では疎かになりがちです。
大きければ気付きますが小さなものは見逃してしまいそうになりますね。
もちろん確定診断は生検ですが、画像から鑑別が挙がることは重要ですね。
アウトプットありがとうございます。
>どうしてもリンパ節の読影は救急の場では疎かになりがちです。
大きければ気付きますが小さなものは見逃してしまいそうになりますね。
そうですね。特に単純CTの場合は、肺門部リンパ節などは血管もあるのでわかりにくいことが多いですね。
単純でも縦隔の典型的なリンパ節腫大
造影CTにおけるリンパ節腫大
この辺りを見落とさなければ問題ありません。
どうしても救急の場合は肺野ばかりに目が行きがちですが。
解離なども単純CT縦隔条件で見落とせない重要疾患ですね。
初心者的な質問かもしれませんが、膿瘍とリンパ節腫脹はどうやって見分けたら良いのでしょうか。
今回の様にサイズが大きく、造影効果があり、臨床経過から感染を否定出来ない場合などは画像から診断する事は可能でしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>膿瘍とリンパ節腫脹はどうやって見分けたら良いのでしょうか。
確かに今回のように内部が低吸収で周りに造影効果を認める場合は膿瘍との区別は困難ですね。
鎖骨上窩であり、場所から「膿瘍」が考えにくいという点くらいですね。
もちろん膿瘍はどこにできてもよいわけなので、これが結果膿瘍であったと言うことがあってもよいと思います。
こんばんは.
いつもお世話になっております.
頚部筋の膿瘍と壊死したリンパ節のどちらも鑑別に挙げたのですが,私のように悩んだ方がいたようで,ほっとしました.
「内部低濃度をきたすリンパ節」というだけで鑑別がある程度絞られるのですね.
結核性,化膿性,猫ひっかき病,菊池病,転移,悪性リンパ腫あたりを次回からはすぐに鑑別に挙げられるようにしたいです.
アウトプットありがとうございます。
>頚部筋の膿瘍と壊死したリンパ節のどちらも鑑別に挙げたのですが,私のように悩んだ方がいたようで,ほっとしました.
そうですね。サイズが大きく低吸収域が目立ちますので、むしろ本当にリンパ節?と思ってしまうかもしれません。
>「内部低濃度をきたすリンパ節」というだけで鑑別がある程度絞られるのですね.
結核性,化膿性,猫ひっかき病,菊池病,転移,悪性リンパ腫あたりを次回からはすぐに鑑別に挙げられるようにしたいです.
そうですね。この辺りが挙げられたらOKですね。
小児に多いということですが、造影は必須でしょうか?壊死などは造影しないとわからないですよね?
アウトプットありがとうございます。
造影は必須ではありません。
壊死はおっしゃるように造影をするとより明瞭になりますが、単純でも低吸収域となるので予測は通常可能です。
サイズが小さいものでなければですが・・・。
今回は結核性リンパ節炎でしたが、右鎖骨上窩リンパ節腫大で、内部に著明な低吸収域を伴っています。
この場所にできるのは結核に特徴的なのでしょうか。
あるいは結核を疑う所見は他にないのでしょうか。生検が唯一の決め手でしょうか。
アウトプットありがとうございます。
2−3日前からの頸部痛というエピソードからは感染が疑われますね。
頸部の結核性リンパ節炎は好発部位ですが、中でも後頸三角(レベルⅤ:副神経リンパ節)に好発するといわれています。
内部に壊死を伴っている点、片側性である点もより結核を疑う所見といえますね。
結核を疑う場合はツベルクリン反応やQFT-2G検査(クォンティフェロン)なども決め手となります。
頸部のリンパ節のレベル分類についてはこちら(ややこしいですが・・・)
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/14550
頸部リンパ節レベル分類は確かにややこしいですね。目が回りそう。
でも解説をありがとうございました。