【胸部】TIPS症例47
【症例】80歳代男性
【主訴】軽度の体重減少
【現病歴】胃癌術後で再発なく経過していた。最近軽度の体重減少を認め当院内科受診。スクリーニング目的でCTが撮影された。
【既往歴】胃癌術後、糖尿病
【生活歴】喫煙 15本/日 ×15年(30-45歳)、飲酒 焼酎1合/日
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画像所見と診断は?
まず、ちょっと濃度が周りの筋肉などと近くて見落としがちかもしれませんが、右鎖骨上窩に大きなリンパ節腫大(#1R)を認めています。
鎖骨上窩だけでなく、右上部気管傍リンパ節(#2R)にも内部に低吸収域(壊死を疑う)を伴うリンパ節腫大があります。
右下部気管傍リンパ節(#4R)にも内部に低吸収域(壊死を疑う)を伴うリンパ節腫大があります。
また、気管分岐下リンパ節(#7)にもリンパ節腫大を認めています。
縦隔リンパ節腫大に加えて、右鎖骨上窩リンパ節腫大があるということです。
このようなリンパ節腫大を見たときには、
- 肺癌の転移
- 肺癌以外の癌の転移
- 悪性リンパ腫
- サルコイドーシス
- 結核
- 結核以外の感染症
などを考えます。
特に今回は内部に壊死を疑う低吸収域を認めていますので、
- 扁平上皮癌や小細胞癌の転移
- 結核
- 化膿性リンパ節炎
などが、より疑われます。
肺癌の転移ならば、原発巣になりそうな腫瘍はあるでしょうか?
ちょっとわかりにくいですが、左肺門部の気管支の間に血管では説明がつかない腫瘤影があります。
サイズは小さいですがこちらが原発巣の可能性があります。
また右の肺底部にも結節を認めていますが、多角形であり、こちらは肺内リンパ節を疑う所見です。
診断:左下葉肺癌+多発縦隔・右鎖骨上窩リンパ節転移の疑い
ただし、結核性リンパ節炎や感染性も鑑別に挙がる。また右肺下葉で小葉間隔壁の肥厚を認めており、癌性リンパ管症の可能性あり。
FDG-PET検査が施行されました。
CTで認めたリンパ節腫大部位および左下葉の原発巣と思われる部位に集積亢進を認めています。
もちろんこれだけで炎症は否定できませんが、肺癌およびリンパ節転移疑いと診断されました。
右肺底部の多角形結節には集積は認めていません。
※リンパ節生検にて、扁平上皮癌と診断されました。左下葉原発で鎖骨上窩リンパ節にも転移を認めているためN3であり、stageⅢB以上と診断されました。最終的には、T1bN3M0 StageⅢBと診断されました。
※肺癌取扱い規約におけるリンパ節の名称や番号は、縦隔リンパ節画像診断ツールを参考にしてください。
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【胸部】TIPS症例47の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
リンパ節転移と飛びついてしまいましたが、炎症性も考慮しないといけないですね。
肺内リンパ節の形やPETで集積しないことも忘れていて復習になりました。
アウトプットありがとうございます。
>炎症性も考慮しないといけないですね
そうですね。内部壊死を伴っている場合は、結核性なども考慮に入れましょう。
特徴的なリンパ節の造影効果だったので、結核性リンパ節炎やリンパ節転移は疑えましたが…正直、左肺門部の腫瘍には気が付きませんでした。肺門部は病変を見逃しやすい場所として改めて認識することができました。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>特徴的なリンパ節の造影効果だったので、結核性リンパ節炎やリンパ節転移は疑えましたが
そうですね。特徴的ですね。
>肺門部は病変を見逃しやすい場所として改めて認識することができました。
そうなんです。血管と紛らわしいので注意が必要ですね。
リンパ節転移と思わず、膿瘍?かなにかだと思い込んでしまいました。
縦隔は構造物も多く読影が難しいと感じますね。
アウトプットありがとうございます。
>膿瘍?かなにかだと思い込んでしまいました。
内部が低吸収なのでそう思ってしまいますね。
>縦隔は構造物も多く読影が難しいと感じますね。
ですね。私も得意ではありません(^_^;)
いつもありがとうございます。
時々 肺底部にこの症例のような 多形成の結節を見かけますが
肺内リンパ節装置という言葉は恥ずかしながら 初めて知りました。
左の肺門部の腫瘤影 気づけませんでした。
リンパ節が腫大してるのだから 探しに行く気持ちで見つけにいかなければなりませんね。
アウトプットありがとうございます。
>肺内リンパ節装置という言葉は恥ずかしながら 初めて知りました。
肺内リンパ装置
・胸膜直下に好発
・多角形結節(円形〜楕円形のものもある)
・境界明瞭な充実性結節
・小葉辺縁構造(小葉間隔壁・肺静脈)との接触が見られることが多い
・結節から胸膜に連続する線状影は特徴的
・造影CTで造影効果がある
・大半は平坦であり、薄くなっている部位を持っているのが特徴
(画像診断 Vol.31 No.10 2011 P1006)
という特徴も併せて覚えておきましょう。
>左の肺門部の腫瘤影 気づけませんでした。
難しいですね。気管支沿いにきちんと追わないと気づけないですね。
>リンパ節が腫大してるのだから 探しに行く気持ちで見つけにいかなければなりませんね。
そうですね。原発を探そうという思考で見れば少し引っかけやすいかもしれません。
胃癌の患者さんとのことだったので、再発を疑い、左鎖骨上窩リンパ節と膀胱直腸窩を探してみましたが、肺癌でしたか。。orz
そもそも鎖骨上窩を見るのははじめてだったので、勉強になりました。
#4リンパ節と#7リンパ節は研修医や学生もぜひ覚えておいて!と書いてある本があったので、頑張って覚えたいです。
左下葉の腫瘤は難しかったです。確かに、B8とB9の分岐角が不自然に大きい?気もしたり、伴走する気管支に比べて血管にしてはかなり太い?ような気もしますが、それで引っかけられるかと言われたら難しいなと思いました。
アウトプットありがとうございます。
>そもそも鎖骨上窩を見るのははじめてだったので、勉強になりました。
是非意識して見てみてください。
今回のは結構サイズが大きいですが、周りの筋肉と等吸収に近いので探しに行かないと見落とされることが多いかもしれません。
>#4リンパ節と#7リンパ節は研修医や学生もぜひ覚えておいて!と書いてある本があったので、頑張って覚えたいです。
そうですね。この2つは頻度も多いですし、場所もわかりやすいので覚えておいて損はありませんね。
>左下葉の腫瘤は難しかったです。
難しかったですね。
こういう腫瘤があるから気管支沿いにも丁寧に見ないといけないのですよ、という例として最適なくらいですね。
右鎖骨上窩のリンパ節もですが、「擬態」して存在しているともいいかもしれませんね(^_^;)
https://www.google.co.jp/search?q=%E6%93%AC%E6%85%8B&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=2ahUKEwjVlI_asM3pAhWJwosBHYh4DTcQ_AUoAnoECBIQBA&biw=1440&bih=748&dpr=2
いつもお世話になっています.放射線技師として楽しく勉強させていただいています.
今回少し話題となった肺内リンパ装置についての質問です.
私の病院では,技師が読影補助として第一読影を行い拡大HRCTの作成を行っています.
画像診断管理加算2取得に向け読影医の読影時間短縮を目指すため,また画像データ量を削減するために,技師が必要と感じない場合は結節影以外の拡大HRCTの作成は行わない方向に向かっております.
今回改めて肺内リンパ装置について調べたところ
Radiology. 2012 Nov;265(2):611-6
Pulmonary Perifissural Nodules on CT Scans: Rapid Growth Is Not a Predictor of Malignancy
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22929331/
より
764のPFNに分類された症例のうち,8.3%は癌のように増大したが764症例で癌であったものは1例もなかった.
との記載があり今後肺内リンパ装置と思われる結節影を拡大HRCTを作成すべきか悩ましいと考えるようになりました.
当院の読影医によっては胸膜直下にあり肺内リンパ装置と思われる結節影についてはレポートに特筆しない先生もいらっしゃいます.
読影医にもよる案件ではあるかとは思いますが,ごろ~先生は拡大HRCTはどのようなものについてシンスライスが欲しいかや,肺内リンパ装置は実際シンスライスがいるかなどどのようにお考えでしょうか.ご意見いただけると技師として嬉しいです.
アウトプットありがとうございます。
>今後肺内リンパ装置と思われる結節影を拡大HRCTを作成すべきか悩ましいと考えるようになりました.
今回のように典型的な多角形を示さないこともあるので、そこの判断が難しいと思います。
担癌患者さんの場合は転移の可能性もありますし。
>ごろ~先生は拡大HRCTはどのようなものについてシンスライスが欲しいかや,肺内リンパ装置は実際シンスライスがいるかなどどのようにお考えでしょうか.ご意見いただけると技師として嬉しいです.
やはり肺内リンパ装置と思われるものであっても、thin sliceで確認したいところです。
作ってもらえるなら結節があればその部位のthin sliceは欲しいところです。
ドックの読影を以前やっていましたが、同じように技師さんが結節があるところでthin sliceを作ってくれていました。
小さな結節は見落としがちなので2重で読影すること大変助かっていました。
いつも勉強させて頂いております。
iPhoneで拝見しているのですが、今回の解説動画にはError 503 Service Unavailable とエラーメッセージが表示されており閲覧することが出来ません。お手数をおかけ致しまして大変恐縮致しますが、対処法につきましてご教示頂ければ幸いです。
お騒がせ致しまして申し訳ございません。閲覧出来ました。誠に申し訳ございませんでした
良かったです!ネット環境が悪い場合、動画が途中で止まることがあります。
いつもありがとうございます。
右下葉で小葉間隔壁が目立つように感じ癌性リンパ管症の可能性もあるのではないかと思ってしまいましたが有意な所見ではないでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように右肺底部では小葉間隔壁を認めており、その可能性がありますね。追記します。
PETはメッチャわかりいいです。
しかしPETはない施設ばかりですから、CTでちゃんと読めないと困ります。
主だったリンパ節は指摘できるようにしたいものです。
内部に壊死を疑う低吸収域を認めると、疾患が絞れるのですね。
頭からオーバーフロー状態です。トホホ。
アウトプットありがとうございます。
>しかしPETはない施設ばかりですから、CTでちゃんと読めないと困ります。
そうですね。CTで怪しいのではないかと考えPETで精査という流れですので、CTで引っかけないといけません。
>内部に壊死を疑う低吸収域を認めると、疾患が絞れるのですね。
そうですね。
今回は内部が低吸収であるために、右鎖骨上窩など逆に気づきにくいかもしれません。
症例ありがとうございます。胃癌の既往に気を取られ、胃癌がリンパ節に再発したと思い込んでしまいました。何で左でなく右鎖骨上リンパ節なんだろう、胃の周囲や腹部大動脈周囲リンパ節が腫れていないのは何でだろう、という疑問が湧いて肺野を見直したのですが、肺門部の腫瘤影には気づかず終わってしまいました。肺門部は見逃しやすいスポットと意識して、読影に臨みたいと思います。ところで、80歳代女性となっていますが、男性ですね。
アウトプットありがとうございます。
>肺門部の腫瘤影には気づかず終わってしまいました。肺門部は見逃しやすいスポットと意識して、読影に臨みたいと思います。
今回の肺門部の腫瘤は指摘は難しかったですね。
>ところで、80歳代女性となっていますが、男性ですね。
すいません。男性ですね。修正します。ご指摘ありがとうございます。
名称は分かりませんでしたが、右鎖骨上窩のリンパ節腫大や左右肺門部のリンパ節腫大は、気付くことが出来ました!
先生のお陰だと思っています。感謝しています。ありがとうございましたm(_ _)m
ですが、縦隔リンパ節や内部が壊死していることには気づけませんでした!
他の先生方もコメントされていた様に、自分も縦隔リンパ節は、まだまだ練習が必要と感じます。
最近は本当に時間を作れず、3回も課題の提出が出来なかったのですが、
アンケートに答えることで、なんとか救済して頂いて、
この問題を考えることが出来て有難かったです!!
今後とも、どうか宜しくお願い致しますm(_ _)m
アウトプットありがとうございます。
>右鎖骨上窩のリンパ節腫大や左右肺門部のリンパ節腫大は、気付くことが出来ました!
素晴らしいです!特に右の鎖骨上窩は気づきにくいかも知れませんので。
こちらこそ今後ともよろしくお願いします。