
先に結論:円錐がL2〜L3以上にあれば年齢を問わず正常範囲、L3は判断が分かれる。終糸は太さと脂肪を見る。画像と症状の両方で判断し、画像が正常でも症状が合えば緊張終糸を考える
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 円錐の位置 | 正常な小児ではT12〜L3の範囲。L2-L3かそれより頭側は、年齢を問わず正常と考える。L3は正常にも係留にもありうる(Wilson 1989) |
| 終糸 | 太さ(ある報告では2 mm未満を正常と定義)と、脂肪の有無を確認する(Cornips 2012) |
| 症状 | 疼痛、皮膚所見、整形外科的変形、神経脱落症状。小児から成人まで、どの年齢でも発症する(Lew 2007) |
| 撮像 | 矢状断で円錐と終糸、軸位断T1で終糸の太さと脂肪。臀部の皮膚所見があれば、そこまで撮影範囲に含める |
| 術後 | 再係留がありうる。術後MRIでは円錐の高さや脊髄の太さ、脊髄空洞症の変化を見る |
係留脊髄とは
係留脊髄症候群(tethered cord syndrome)は、脊髄に過度の張力がかかることで生じる症状と徴候の総称です。多くは脊髄癒合不全に関連します。どの年齢でも発症し、病変や年齢によって症状は異なりますが、疼痛、皮膚所見、整形外科的な変形、神経脱落症状が代表的です。症状が進行する場合や新しい症状が出た場合に、脊髄の「解放」(untethering)手術の対象となります。早期の手術は転帰の改善と関連し、疼痛の軽減はほとんどの例で得られます。一方、症状のない人や、画像が正常な人に対する手術の利益は議論が分かれています(Lew 2007)。
原因となる構造はさまざまで、太い終糸(緊張終糸)、終糸脂肪腫、脂肪脊髄(髄膜)瘤、背側皮膚洞、脊髄分割奇形、遺残髄索などが含まれます。脊髄癒合不全の全体像は、脂肪脊髄髄膜瘤(脊髄脂肪腫)のMRI画像診断と終糸脂肪腫との違いや、病型の早見表を扱った脊髄癒合不全(spinal dysraphism)の分類別記事も参考になります。
脊髄円錐の正常な位置
脊髄円錐の位置は、係留の有無を判断する最初の手がかりです。正常な小児184人(新生児から20歳)のMRIを調べた研究では、円錐の位置はT12からL3の範囲でした。0〜2歳でも19〜20歳でも平均はL1-L2で、円錐は、以前の説明のように小児期を通して上昇するのではなく、生後数か月のうちに成人の高さに達すると考えられています。この研究は、L2-L3か、それより頭側にある円錐は、年齢を問わず正常とし、L3は、正常にも係留にもありうるので判断を保留するとしました(Wilson 1989)。
引用元の図 円錐の位置と低位円錐

引用:Yang J et al. J Korean Neurosurg Soc 2021(Fig. 1)(CC BY-NC)
図:A:T1強調矢状断で、L1の高さに先端が鈍な円錐(円)がみられます。B:T2強調矢状断で、脂肪を含む終糸と、低い位置の円錐(矢印)がみられます。
ただし、円錐の位置が正常でも、係留による症状が出ることがあります。25人の小児の緊張終糸症候群の報告では、MRIの異常は、低位円錐(14人、うち太い終糸が2人)、円錐は正常だが終糸に脂肪があるもの(2人)、MRIが「厳密に正常」なもの(9人)でした。この報告では、円錐がL2の中央以上にあり、終糸の太さが2 mm未満のものを、MRI正常と定義しています。MRIが正常でも係留症状がそろう9人は、いずれも少なくとも1つの症状領域が手術後に改善していました(Cornips 2012)。
終糸の太さと脂肪
終糸は、円錐の先から硬膜嚢の下端へ伸びる細い構造です。これが太く、短いと、脊髄を下方に引く緊張終糸(tight filum terminale)になります。MRIでは、T1強調像で太く短い終糸が見え、円錐が低位にあり、円錐に脊髄空洞症(嚢胞状の病変)を伴う例が示されています(Kumar 2017、図17)。
引用元の図 緊張終糸

引用:Kumar J et al. World J Radiol 2017(Figure 17)(CC BY-NC)
図:緊張終糸。T1強調矢状断で、太く短い終糸(黒矢印)と、低い位置の脊髄がみられます。円錐内に髄液と同じ信号の病変(白矢印)があり、脊髄空洞症を疑う所見です。
終糸に脂肪がある場合は、終糸脂肪腫(filar lipoma)です。T1・T2強調像のどちらでも高信号で、皮下脂肪と同じ信号を示します。この例では、終糸が太くなり、係留されていました(Kumar 2017、図15)。
引用元の図 終糸脂肪腫

引用:Kumar J et al. World J Radiol 2017(Figure 15)(CC BY-NC)
図:終糸脂肪腫。T2強調矢状断(A)とT1強調軸位断で、T1・T2強調像で高信号の病変(黒矢印)が見え、終糸が太く、係留されています(白矢印)。
注意したいのは、終糸の脂肪が、すべて症状のある係留を意味するわけではない点です。60歳男性で、終糸に線状の脂肪の高信号が偶然みつかった例では、円錐は低位ではなく、馬尾の係留もありませんでした(Kumar 2017、図16)。脂肪の有無だけで判断せず、円錐の位置・終糸の太さ・症状を合わせて評価します。
遺残髄索
二次神経管形成の退縮がとまると、円錐から硬膜嚢の下端まで続く索状の構造が残ることがあります。これを遺残髄索(retained medullary cord)と呼びます。小児の38人のMRIを調べた研究では、全例で円錐が低位にありました。索状構造の形は、なめらかに細くなるものと、砂時計状で先端が嚢胞状に拡張するものが半数ずつでした。T2強調像で低信号の細い神経(痕跡的な神経根)や、硬膜内の脂肪の塊が89.5%にみられ、硬膜外の仙骨部くも膜嚢胞も8人にありました。この報告は、従来「低位円錐を伴う終末嚢胞(terminal syrinx)」と呼ばれた所見の一部が、遺残髄索にあたる可能性を示しています(Lee 2024)。
引用元の図 遺残髄索

引用:Kim KH et al. J Korean Neurosurg Soc 2020(Fig. 5)(CC BY-NC)
図:遺残髄索の例。a:仙骨部にまで伸びる索状の構造がみられます。b:L5レベルの軸位断。c:L5の部分的な椎弓切除で、軟膜に覆われた太い髄索が確認されています。d:非機能的な部分を切除した後の写真です。
症状と、成人の係留脊髄
小児では、神経、泌尿器、整形外科、皮膚の4つの領域の症状を組み合わせて評価します。前述の25人の報告(年齢2〜18歳)の内訳は、次のとおりです(Cornips 2012)。
| 症状の領域 | 人数(25人中) |
|---|---|
| 神経 | 25人(全員) |
| 泌尿器 | 17人 |
| 整形外科(側弯を含む) | 21人(うち側弯8人) |
| 皮膚 | 11人 |
この報告は、2つ以上の領域に症状がある子は、MRIに異常があってもなくても、手術で改善する可能性が高いとし、そうした場合には全脊椎のMRIを含む評価を勧めています(Cornips 2012)。係留の解放は、側弯の進行を止める可能性があるとも報告されています(Lew 2007)。
成人でも、症状が出ることがあります。腰椎椎間板ヘルニアに似た症状で受診した4人の報告では、2人でMRIで終糸が太く脂肪を含み、2人は終糸が正常な太さでした。体性感覚誘発電位が全員で異常を示し、終糸の切断で全員に利益がありました(Umur 2008)。例数が少ない報告ですが、MRIで椎間板の異常がない腰痛では、係留も考えるきっかけになります。気になる症状があれば、医療機関に相談してください。
術後の再係留
手術のあとにも、再び脊髄が引かれる再係留(retethering)が起こることがあります。緊張終糸を切断した58人の報告では、再係留は5.2%(3人)でした。術後のMRIで円錐の高さが変わらない、脊髄空洞症が改善しない、脊髄の太さが変わらない、という例では、再係留のリスクが高い傾向がありました(Finger 2020)。
円錐部の脂肪腫に対して小児期に手術した51人を100か月以上追跡した報告では、12人が再係留による神経症状の悪化を経験しました。無増悪生存率は、10年で82.3%、15年で75.1%でした。リスクとして、脂肪脊髄髄膜瘤型であること(ハザード比5.16)と、術後の成長速度が速いことが挙げられています(Hayashi 2022)。術後の画像では、再係留の評価のため、術前と同じ指標(円錐の高さ、脊髄の太さ、空洞症)を比べます。
所見の組み合わせと考え方
円錐の位置、終糸、症状の組み合わせで、次のように整理できます。
| MRI所見 | 考え方 |
|---|---|
| 円錐が低位で、終糸が太く短い、または脂肪がある | 緊張終糸・終糸脂肪腫による係留を考える(Kumar 2017) |
| 円錐が極端に低位で、仙骨部へ伸びる索状構造がある | 遺残髄索を考える。細い痕跡的な神経や硬膜内の脂肪を探す(Lee 2024) |
| 円錐は正常で、終糸に脂肪があるだけ(症状なし) | 偶然の所見のことがある。係留の所見がなければ、直ちに係留とは考えない(Kumar 2017) |
| 円錐も終糸も正常だが、係留に合う症状がある | 画像が正常でも緊張終糸に伴う症状の報告がある。臨床像と合わせて専門医が判断する(Cornips 2012、Umur 2008) |
画像診断のコツ
- 円錐の高さ:矢状断で、椎体の高さとして数える。L3は判断が分かれる。
- 終糸:軸位断T1で太さと脂肪を確認する。
- 合併奇形:背側皮膚洞、脊髄分割奇形、遺残髄索、脂肪脊髄(髄膜)瘤を探す。
- 周辺の臓器:肛門直腸奇形には脊髄係留を合併することがあります。直腸肛門奇形(鎖肛)の画像診断を参照してください。
- 骨の変化:椎弓の癒合不全・欠損の種類とCT画像も参考になります。
よくある疑問(Q&A)
Q. MRIで円錐がL3にあると言われました。係留ですか?
A. L3は、正常にも係留にもありうる位置とされます(Wilson 1989)。症状、終糸の太さや脂肪、背側皮膚洞などの合併を合わせて判断します。
Q. 終糸に脂肪があるとだけ言われました。手術が必要ですか?
A. 脂肪だけで手術が必要とは限りません。円錐が低位でなく、係留の所見もない偶然の脂肪の例が報告されています(Kumar 2017)。症状と画像の両方で、専門医が判断します。
Q. MRIが正常でも、係留脊髄のことはありますか?
A. 小児の報告では、MRIが「厳密に正常」でも、係留症状がそろう子の手術後に改善がみられました(Cornips 2012)。症状が強い場合は、MRIの正常だけで除外せず、専門医に相談します。
Q. 手術をしたら、再び係留することはありませんか?
A. 再係留はありえます。緊張終糸の切断後は5.2%(Finger 2020)、円錐部の脂肪腫の手術後は10年の無増悪生存率が82.3%(Hayashi 2022)と、病型によって差があります。術後も定期的な経過観察が大切です。
あわせて読みたい:脂肪脊髄髄膜瘤(脊髄脂肪腫)のMRI画像診断と終糸脂肪腫との違い
あわせて読みたい:脊髄癒合不全(spinal dysraphism)の分類、背側皮膚洞(先天性皮膚洞)のMRI
参考文献
- Wilson DA, Prince JR. John Caffey award. MR imaging determination of the location of the normal conus medullaris throughout childhood. AJR Am J Roentgenol. 1989;152(5):1029-1032. PubMed
- Lew SM, Kothbauer KF. Tethered cord syndrome: an updated review. Pediatr Neurosurg. 2007;43(3):236-248. PubMed
- Cornips EM, Vereijken IM, Beuls EA, et al. Clinical characteristics and surgical outcome in 25 cases of childhood tight filum syndrome. Eur J Paediatr Neurol. 2012;16(2):103-117. PubMed
- Kumar J, Afsal M, Garg A. Imaging spectrum of spinal dysraphism on magnetic resonance: A pictorial review. World J Radiol. 2017;9(4):178-190. PubMed
- Lee SB, Lee S, Cho YJ, et al. Image characteristics of retained medullary cord in secondary neurulation arrest: an observational study. Sci Rep. 2024;14(1):29447. PubMed
- Umur AS, Selcuki M, Selcuki D, et al. Adult tethered cord syndrome mimicking lumbar disc disease. Childs Nerv Syst. 2008;24(7):841-844. PubMed
- Finger T, Schaumann A, Grillet F, et al. Retethering after transection of a tight filum terminale, postoperative MRI may help to identify patients at risk. Childs Nerv Syst. 2020;36(7):1499-1506. PubMed
- Hayashi T, Kimiwada T, Shirane R, et al. Retethering risk in pediatric spinal lipoma of the conus medullaris. J Neurosurg Pediatr. 2022;29(3):342-349. PubMed
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