
先に結論:病型は「瘻孔の位置」で分け、画像では高さ・瘻孔・合併奇形の3点を確認する
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな病気か | 直腸と肛門が正しくできない先天異常。出生約5,000人に1人(Levitt 2007) |
| 病型の分け方 | 国際分類(Krickenbeck分類 2005)は瘻孔の位置が基準。会陰・直腸尿道・直腸膀胱・前庭・総排泄腔・瘻孔なし・肛門狭窄 |
| 画像で調べること | 直腸盲端の高さ、瘻孔の有無と行き先、肛門括約筋・肛門挙筋の発達。造影(distal colostogram)とMRIを組み合わせる |
| 合併奇形 | 7割以上に何らかの合併奇形(Nah 2012)。脊椎・脊髄、腎・尿路、心臓などを病型に関係なく調べる |
| 見落とせない所見 | 脊髄係留(脊髄の低位・係留)。超音波で低位が疑われたらMRIで確認する |
直腸肛門奇形とは
直腸肛門奇形(anorectal malformation:ARM、鎖肛とも呼ばれます)は、肛門と直腸の末端、さらに泌尿器・生殖器の出口にまたがる先天異常の総称です。ごく軽いものから複雑なものまで幅広く、出生約5,000人に1人とされます(Levitt 2007)。男の子にも女の子にもみられます。
多くの国のデータを集めた研究では、直腸肛門奇形の約6割が「複数の奇形を伴う」または「症候群の一部」でした(Kancherla 2023)。つまり、肛門の形だけを見て終わりにせず、体全体の奇形を探す姿勢が画像診断の前提になります。ここでは出生直後の評価の流れを、研修医が画像を依頼し、読むときの目線で整理します。新生児の腹部X線の基本は新生児の腹部レントゲンにまとめています。
病型の分け方:瘻孔の位置が基準
2005年のKrickenbeck会議で、国際的な分類が整理されました。瘻孔の位置に基づく主な群と、まれな型は次のとおりです(Holschneider 2005)。
| 群 | 内容 |
|---|---|
| 会陰(皮膚)瘻 | 直腸が会陰の皮膚に細い瘻孔で開く。最も軽い型 |
| 直腸尿道瘻 | 男児で直腸が尿道につながる。尿道の球部につながる型と前立腺部につながる型がある |
| 直腸膀胱瘻 | 男児で直腸が膀胱につながる |
| 前庭瘻 | 女児で直腸が腟前庭に開く |
| 総排泄腔(cloaca) | 女児で直腸・腟・尿道が1本の共通管に合流する |
| 瘻孔なし | 直腸が行き止まりで、どこにもつながらない |
| 肛門狭窄 | 肛門が狭い |
| まれな型 | pouch colon、直腸閉鎖・狭窄、直腸腟瘻、H型瘻など |
なお、画像の報告書では、直腸の盲端が骨盤底より上にあるか、同じ高さか、下にあるかで高位・中間位・低位と書くことがあります(Madhusmita 2018)。国際分類の7群とは別の軸の言い方で、「瘻孔の行き先」と「盲端の高さ」を両方読む、と覚えておくと、報告書の表現にとまどいません。
まれな型のH型瘻は、肛門が正常な位置またはずれた位置にあり、それとは別に直腸と泌尿生殖路をつなぐ通路がある型です。国際分類では、まれな型の1つに数えられています(Holschneider 2005)。
画像検査の使い分け
出生直後の最初の診断は、外陰部・会陰の診察で行います。画像は「診察だけでは分からない情報」を補う役割です。病型を決める点は次の3つです。
| 知りたいこと | 主な検査 |
|---|---|
| 直腸盲端の高さ、瘻孔の位置 | 高圧のdistal colostogram(人工肛門ができたあとの肛門側の腸への造影)、MRI |
| 肛門括約筋・肛門挙筋の発達 | MRI(T2強調像) |
| 合併奇形(脊椎・脊髄、腎・尿路、心臓など) | 超音波・MRI・心エコーなどの組み合わせ |
distal colostogram(高圧の肛門側造影)
人工肛門(ストーマ)が作られたあと、根治手術の前に、肛門側の腸へ造影剤を入れて、瘻孔の位置と高さを調べる検査です。技術的に不十分な造影は診断と治療の開始を遅らせ得るため、検査の質が大切だと報告されています(Abdalla 2017)。その手技のコツと落とし穴も報告されています。
MRIとの比較では、直腸盲端の高さを正しく判断できた割合がMRIで93.33%、distal colostogramで76.9%でした(30人の小規模な研究、Madhusmita 2018)。瘻孔の有無はMRI 76.6%、distal colostogram 76.9%でほぼ同じで、瘻孔の走行を正しくとらえた割合はMRI 76%、distal colostogram 65%でした。造影でもMRIでも限界があり、組み合わせて評価するのが現実的です。
症例 18か月の男児 高位の直腸尿道瘻(造影とMRI)

引用:Madhusmita, Ghasi RG, Mittal MK, et al. Indian J Radiol Imaging. 2018;28(2):187-194 (Figure 7)。PMC CC BY-NC-SA 4.0(図は加工していません)
引用元の説明では、18か月の男児です。Aのdistal cologramで高位の直腸尿道瘻が分かり、BのMRI矢状断像では、直腸盲端から尿道の前立腺部の下部へつながる低信号の瘻孔(矢印)が確認できると記載されています。造影の「点」の情報が、MRIで周囲の解剖と一緒に「線」としてつながる例です。
MRIで何を見るか
MRIでは、T2強調の矢状断像で次の点を順に見ます(Madhusmita 2018)。
| 見る点 | 読み方 |
|---|---|
| 直腸盲端の高さ | 直腸の粘膜は高信号に見える。その位置が骨盤底の上・同じ高さ・下のどこかで、高位・中間位・低位に分ける |
| 瘻孔 | 尿路への瘻孔は、直腸と違ってT2高信号の粘膜がない。細い低信号の線として追う |
| 括約筋 | 恥骨直腸筋・外肛門括約筋などの発達の程度。T2での主観的な評価は、手術で見た発達とよく相関した(P=0.016〜0.019) |
| 周囲の合併奇形 | 仙骨・腰椎の奇形、脊髄、尿路(同じ撮像の範囲で拾える) |
この研究では、MRIで腰仙椎の奇形が33.3%にあり、腎・尿路の異常は40%で、膀胱尿管逆流と腎無形成が多くみられました。骨盤を撮るついでに、仙骨の欠損や脊髄の位置まで目を通す癖をつけておくと、見落としが減ります。
症例 高位・中間位・低位のMRI

引用:Madhusmita, Ghasi RG, Mittal MK, et al. Indian J Radiol Imaging. 2018;28(2):187-194 (Figure 1)。PMC CC BY-NC-SA 4.0(図は加工していません)
引用元の図は、T2強調の矢状断像で、直腸粘膜の高信号(*)が骨盤底(矢印)より上(A:高位型)、同じ高さ(B:中間型)、下(C:低位型)にある例を並べています。Cは直腸が腟前庭に開口(直腸腟前庭瘻)していると記載されています。
合併奇形を一緒に調べる
直腸肛門奇形の診療では、合併奇形の検索が標準です。99人の後ろ向き検討では、78%に1つ以上の合併奇形があり、最も多かったのは泌尿生殖器の異常(28%)と脊椎の異常(26%)でした(Nah 2012)。病型ごとの傾向もあり、会陰瘻と比べると、直腸膀胱瘻では泌尿生殖器の異常が多く(オッズ比41.3)、総排泄腔と前庭瘻では大きな脊椎の異常が多くみられました(Nah 2012)。
| 調べる臓器 | 調べ方の例 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 脊椎・脊髄 | 脊椎のX線、脊髄の超音波、MRI | 脊髄係留、仙骨の欠損や形成不全 |
| 腎・尿路 | 腹部・骨盤の超音波 | 水腎症、腎の欠損、膀胱尿管逆流 |
| 心臓 | 心エコー | VACTERL連合の一部として見つかる |
| 食道・気管 | 胃管の通過、X線 | 食道閉鎖・気管食道瘻の合併 |
| 四肢 | 診察、必要に応じてX線 | VACTERL連合の一部として見つかる |
VACTERL連合は、椎体(V)・肛門(A)・心臓(C)・気管食道(TE)・腎(R)・四肢(L)の奇形のうち3つ以上が重なる状態です。ヨーロッパの先天異常登録(EUROCAT)でVACTERLと記録された501例の解析では、診断基準を満たした397例(79%)のうち、直腸肛門奇形と食道閉鎖・気管食道瘻がどちらも62%、心奇形57%、腎51%、椎体33%、四肢25%でした(van de Putte 2020)。組み合わせは「あらゆるパターン」があるため、どれか1つが見つかっても、残りを順に探します。症状の側からのまとめはVATER(VACTERL)連合の症状、特徴に、食道閉鎖の画像は先天性食道閉鎖症にあります。
この研究では、軽い型を含め、病型にかかわらずすべての赤ちゃんで系統的な検索を行うことが勧められています(Nah 2012)。会陰瘻などの軽い型は検索が省かれがちですが、合併奇形の頻度は病型の軽さだけでは決まりません。
脊髄係留の拾い方
直腸肛門奇形では脊髄係留(脊髄の下端が低い位置にとどまる状態)が重要です。脊髄の超音波は生後早期(研究では生後4か月まで)に行える手軽な検査で、シドニーの研究では、MRIと比べた超音波の感度は91%、特異度は75%でした。超音波が正常だった子どもで、後から脊髄の係留解除術が必要になった子はいませんでした。一方、超音波で脊髄下端(脊髄円錐)が低位・境界・係留と報告された場合は、MRIで確認する必要があるとされます(Jehangir 2020)。この研究では、脊髄円錐が先細りの形で、L2/3椎間板の高さかそれより上で終わるものを正常としています。
手術後と将来の見通し
手術は1980年に導入された後矢状切開(posterior sagittal approach)が出発点で、直腸と尿路・生殖器の境目を直視下に確認しながら修復できるようになりました。手術後に便や尿の失禁が起こる主な原因は、仙骨の発育が悪いこと、神経の分布が不十分なこと、脊髄の異常などで、解剖学的に良好な修復でも起こり得ます(Levitt 2007)。最初に脊髄・仙骨・尿路まで調べておく理由の1つです。
ご家族が気にされる点は排便と排尿のコントロールです。気になる症状や不安があれば、小児外科など担当の医療機関に相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 外見が軽い型でも、全身の検査は必要ですか?
A. 必要とされています。軽い型でも合併奇形が見つかるため、病型に関係なく系統的に調べることが勧められています(Nah 2012)。どの検査をいつ行うかは担当の医師の判断に従ってください。
Q. 脊髄の超音波が正常なら、MRIは不要ですか?
A. 研究では、超音波が正常だった子で後に係留解除術が必要になった例はありませんでした(Jehangir 2020)。ただし超音波は感度91%・特異度75%の検査で、疑いが残るときはMRIで確認します。
Q. distal colostogramとMRIは、どちらか1つでよいのですか?
A. 瘻孔の走行の描出はMRIがやや優れるという報告がありますが(Madhusmita 2018)、造影の質と症例によって結果が変わります。両者の長所を組み合わせて評価するのが一般的です。
Q. VACTERL連合とは同じ意味ですか?
A. 同じではありません。直腸肛門奇形は、VACTERL連合の構成要素の1つです。他の奇形が3つ以上重なったときにVACTERL連合と呼びます(van de Putte 2020)。
参考文献
- Holschneider A, Hutson J, Peña A, et al. Preliminary report on the International Conference for the Development of Standards for the Treatment of Anorectal Malformations. J Pediatr Surg. 2005;40(10):1521-6. PubMed
- Levitt MA, Peña A. Anorectal malformations. Orphanet J Rare Dis. 2007;2:33. PubMed
- Kancherla V, Sundar M, Tandaki L, et al. Prevalence and mortality among children with anorectal malformation: A multi-country analysis. Birth Defects Res. 2023;115(3):390-404. PubMed
- Abdalla WMA, De La Torre L. The high pressure distal colostogram in anorectal malformations: technique and pitfalls. J Pediatr Surg. 2017;52(7):1207-1209. PubMed
- Madhusmita, Ghasi RG, Mittal MK, et al. Anorectal malformations: Role of MRI in preoperative evaluation. Indian J Radiol Imaging. 2018;28(2):187-194. PubMed
- Nah SA, Ong CC, Lakshmi NK, et al. Anomalies associated with anorectal malformations according to the Krickenbeck anatomic classification. J Pediatr Surg. 2012;47(12):2273-8. PubMed
- van de Putte R, van Rooij IALM, Marcelis CLM, et al. Spectrum of congenital anomalies among VACTERL cases: a EUROCAT population-based study. Pediatr Res. 2020;87(3):541-549. PubMed
- Jehangir S, Adams S, Ong T, et al. Spinal cord anomalies in children with anorectal malformations: Ultrasound is a good screening test. J Pediatr Surg. 2020;55(7):1286-1291. PubMed
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