
先に結論:CTXの典型的な脳MRI所見は、両側の小脳歯状核とその周囲の白質のT2・FLAIR高信号。進むと空胞化や石灰化・ヘモジデリンでT1・FLAIR・SWIの低信号が加わる。アキレス腱の紡錘状の腫大(黄色腫)と合わせて、血清コレスタノールと遺伝子検査につなげる
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな病気か | CYP27A1遺伝子の変異による常染色体潜性(劣性)遺伝の脂質蓄積症。胆汁酸の合成が減り、コレスタノールが組織にたまる(Nie 2014) |
| 脳MRI | 両側の歯状核とその周囲の小脳白質のT2高信号が典型。大脳白質・錐体路・脳幹にも信号異常が出る(Nóbrega 2022) |
| 腱の画像 | アキレス腱の紡錘状の腫大。成人の76%に腱黄色腫(Nóbrega 2022) |
| なぜ急ぐか | 24歳までに治療を始めた群は経過がよかった(Stelten 2019)。診断までの遅れは平均16〜18年(Nie 2014、Zubarioglu 2024) |
| 注意点 | 歯状核の信号異常がなくても否定できない(Nóbrega 2022)。腱黄色腫がない例もある |
脳腱黄色腫症(CTX)とは
脳腱黄色腫症(cerebrotendinous xanthomatosis、CTX)は、CYP27A1遺伝子の変異で起こる常染色体潜性(劣性)遺伝の脂質蓄積症です。CYP27A1はミトコンドリアの酵素ステロール27-水酸化酵素をつくる遺伝子で、この働きが落ちると胆汁酸の合成が減り、その代わりにコレスタノールが過剰につくられて、脳・腱・水晶体などにたまります(Nie 2014)。
頻度ははっきりしておらず、世界で10万人に5人未満とする推定があります(Nie 2014)。診断時の平均年齢は35歳、症状が出てから診断までの遅れは平均16年と報告され(Nie 2014)、トルコの100人の全国調査でも、診断時の平均年齢28.16歳、診断の遅れは平均18.39年でした(Zubarioglu 2024)。実際より見逃されている可能性が指摘されています(Zubarioglu 2024)。
症状:神経以外の手がかりが早く出る
CTXでは、神経症状より前に、神経以外の症状が出ることが多いのが特徴です。乳児期からの下痢、小児期からの白内障、腱黄色腫、若年での動脈硬化、骨粗鬆症などがあり、成人になると小脳失調、ジストニア、認知機能低下、てんかん、精神症状、末梢神経障害などの神経症状が進みます(Nie 2014)。
| 成人での症状 | 報告された頻度(Nóbrega 2022) |
|---|---|
| 腱黄色腫 | 76% |
| 認知機能低下 | 87% |
| 痙性対麻痺など錐体路徴候 | 64〜92% |
| 小脳失調 | 36〜83% |
| 末梢神経障害 | 45% |
| 精神症状 | 11.4% |
失調が目立つ印象がありますが、実際には錐体路徴候の方が小脳症状より多いとされています(Nóbrega 2022)。脊髄が主に障害される「脊髄型」もあり、まとめられた34例では、23.5%が痙性対麻痺だけを示し、黄色腫があったのは31%でした(Nóbrega 2022)。
脳MRI所見
CTXの脳MRIで最も特徴的なのは、両側の小脳歯状核の信号異常です(Nie 2014、Nóbrega 2022)。38人の検討では、大脳皮質と小脳の萎縮、大脳の皮質下・脳室周囲・小脳白質のT2・FLAIR高信号、脳幹の病変、歯状核の病変が見られました(Mignarri 2017)。別の総説では、38人の84%に脳MRIの異常があったと紹介されています(Nóbrega 2022)。中南米の報告をまとめた検討でも、主な脳MRI所見は歯状核の異常でした(Martínez-Hernández 2026)。
| 部位 | MRIでの見え方 |
|---|---|
| 歯状核と周囲の小脳白質 | 両側対称のT2・FLAIR高信号、T1低信号(Nóbrega 2022)。歯状核のT2高信号が典型像 |
| 歯状核(進行例) | T1・FLAIR低信号=空胞化。T1・FLAIR・SWI低信号=石灰化(Mignarri 2017)。空胞化のあとの微小出血・ヘモジデリン沈着による低信号(Nóbrega 2022) |
| 大脳白質・錐体路 | 脳室周囲白質、内包後脚、大脳脚、橋の前部に対称性のT2・FLAIR高信号(Nóbrega 2022、Ma 2021) |
| その他 | 淡蒼球、黒質、下オリーブ核の信号異常。大脳と小脳の萎縮(Nóbrega 2022、Mignarri 2017) |
| 脊髄 | 後索などに長い範囲のT2高信号(脊髄型)(Ma 2021、Nóbrega 2022) |
| MRS | 病変部で脂質のピーク、コリンの上昇、NAAの低下(Nóbrega 2022) |
歯状核の所見は「T2で白い」だけでなく、病期で変わります。初めはT2高信号で、進むと組織が抜けて空胞化し(T1・FLAIRで低信号)、さらに石灰化やヘモジデリン沈着が加わるとT2*・SWIで低信号になります(Mignarri 2017、Nóbrega 2022)。歯状核は正常でもSWIやDWIで低信号に見えやすい場所なので、左右差のない生理的な低信号と区別するために、T2・FLAIRの高信号と組み合わせて見ます。正常の歯状核の見え方は脳MRIのDWIで低信号(黒く)見える場所で解説しています。
症例 40歳代男性 脳腱黄色腫症の小脳

引用:Ma C, Ren YD, Wang JC, et al. The clinical and imaging features of cerebrotendinous xanthomatosis: A case report and review of the literature. Medicine (Baltimore) 2021;100(9):e24687(Figure 2)(CC BY 4.0)
(A、B)CTで両側の小脳半球に低吸収域があります。(C)T1強調像で両側の歯状核と小脳深部白質が低信号、(D)T2強調像で小脳深部白質が高信号で、歯状核の部分は低信号です。(E)FLAIR像では同じ部分が低信号で、小脳の空胞化に合う所見です。(F)SWIでは両側の歯状核が低信号で、微小な石灰化に合う所見です。
MRIは経過と予後の手がかりにもなる
38人のうち治療前の16人を長期に追った検討では、臨床症状とMRIの安定・進行はほぼ一致していました。最初に小脳の空胞化があった人は経過中に悪化し、空胞化がなかった人は臨床的にもMRI上も安定していました(Mignarri 2017)。著者らは、空胞化を進行や治療反応不良のマーカーに、歯状核の信号変化がないことを予後良好の指標と考えています(Mignarri 2017)。
オランダの長期観察では、診断時に24歳以上だった7人は全員でMRIの異常が進み、24歳未満の5人では進行は1人だけでした。24歳未満で診断された人の多くは、もともとMRIが正常で、25年以上たっても正常のままでした(Stelten 2022)。
アキレス腱の腫大(腱黄色腫)
腱黄色腫は、成人のCTXの76%に見られ、最も多いのはアキレス腱で、脛骨粗面、上腕三頭筋腱、手指の腱にもできます(Nóbrega 2022)。MRIでは、アキレス腱が紡錘状に太くなり、内部は筋と同じくらいの信号で、横断像では脂質の浸潤の中に低信号の腱線維の束が点在して見えます(Ma 2021)。正常のアキレス腱が細く均一な低信号であるのと比べると、腫大と内部の不均一さがはっきり分かります。
アキレス腱の黄色腫は、家族性高コレステロール血症(FH)でも見られます。CTXでは、若年性の白内障や神経症状を伴う点が、FHやシトステロール血症などの脂質の病気と区別する手がかりになります(Nie 2014)。FHのアキレス腱黄色腫の画像はアキレス腱黄色腫とはで解説しています。
症例 40歳代男性 脳腱黄色腫症のアキレス腱黄色腫

引用:Ma C, Ren YD, Wang JC, et al. The clinical and imaging features of cerebrotendinous xanthomatosis: A case report and review of the literature. Medicine (Baltimore) 2021;100(9):e24687(Figure 3)(CC BY 4.0)
(A)T1強調矢状断像、(B)プロトン密度強調像、(C)STIR像で、右のアキレス腱が紡錘状に腫大しています(矢印)。黄色腫は筋とほぼ同じ信号です。(D)プロトン密度強調横断像では、びまん性の脂質の浸潤の中に、低信号の腱の線維束が散らばって見えます(矢印)。歩きにくさが進み、両足首に卵大の硬いしこりがあった患者で、遺伝子検査でCTXと確定しました。
診断の流れ:画像からどうつなげるか
CTXを疑うきっかけとして、疑いの強さを点数にする指標(Mignarriの suspicion index)が紹介されています。腱黄色腫や同胞のCTXは「非常に強い指標」、若年性白内障、小児期からの慢性下痢、失調や痙性対麻痺、脳MRIの歯状核の信号変化などは「強い指標」とされ、点数に応じて血清コレスタノールや遺伝子検査を行う流れです(Nóbrega 2022)。若年性白内障・下痢・進行する神経症状・腱黄色腫の4つのうち2つがそろえば、検査を進めるべきという考え方もあります(Nóbrega 2022)。
診断は、血清コレスタノールの上昇、尿中の胆汁アルコール、脳MRI、CYP27A1遺伝子の変異で確かめます(Nie 2014)。ただし、トルコの100人の調査では、神経症状があるのに血清コレスタノールが正常だった人が7人おり、疑いが強ければ遺伝子検査を勧めています(Zubarioglu 2024)。脳MRIで歯状核や白質の信号異常がなくても、CTXは否定できません(Nóbrega 2022)。成人では、遺伝性痙性対麻痺、遺伝性脊髄小脳失調症、多発性硬化症、白質ジストロフィー、ミトコンドリア病などとの区別が問題になり、腱黄色腫と白内障が最も重要な手がかりとされています(Nóbrega 2022)。
治療と、早く見つける意味
CTXは、ケノデオキシコール酸(CDCA)で不足する胆汁酸を補う治療ができる遺伝性の神経代謝疾患です(Nie 2014、Nóbrega 2022)。オランダの56人の長期観察(中央値8年)では、24歳までに診断・治療を始めた人の経過が明らかによく、服薬をきちんと続けた人では、24歳前に治療を始めた全員で神経症状が消え、新しい神経症状も出ませんでした。一方、24歳以降に治療を始めた人の61%で神経症状が悪化し、パーキンソニズムは治療に反応しにくい症状でした(Stelten 2019)。
報告例でも、治療によりアキレス腱の黄色腫が小さくなり始め、神経症状は改善はしていないものの悪化は止まっていました(Ma 2021)。進行してからでは戻りにくいため、若い患者の歯状核の信号異常や、原因の分からない腱の腫大を見たときにCTXを挙げることが、画像診断の役割になります。治療の内容や開始時期は主治医(神経内科・代謝の専門医)と相談して決めます。
よくある疑問(Q&A)
Q. 両側の歯状核のT2高信号があれば、CTXですか?
A. いいえ。CTXに特徴的ですが、それだけでは決められません。腱黄色腫、白内障、下痢などの神経以外の所見と、血清コレスタノールや遺伝子検査を合わせて診断します(Nie 2014、Nóbrega 2022)。
Q. 腱黄色腫がなければ、CTXは考えなくてよいですか?
A. いいえ。成人でも腱黄色腫は76%で(Nóbrega 2022)、脊髄型ではまとめられた例の31%にしかありませんでした(Nóbrega 2022)。痙性対麻痺だけの例もあります。
Q. 血清コレスタノールが正常なら否定できますか?
A. 否定はできません。神経症状があるのにコレスタノールが正常だった例が100人中7人いました(Zubarioglu 2024)。疑いが強ければ遺伝子検査を考えます。
Q. 治療でMRIの所見はよくなりますか?
A. 早く治療を始めた人では、MRIが正常のまま長く保たれていました(Stelten 2022)。一方、小脳の空胞化がある人は経過中に悪化していました(Mignarri 2017)。ふらつきや歩きにくさ、若いころからの白内障などが気になる方は、医療機関に相談してください。
参考文献
- Nie S, Chen G, Cao X, et al. Cerebrotendinous xanthomatosis: a comprehensive review of pathogenesis, clinical manifestations, diagnosis, and management. Orphanet J Rare Dis. 2014;9:179. PubMed
- Nóbrega PR, Bernardes AM, Ribeiro RM, et al. Cerebrotendinous Xanthomatosis: A practice review of pathophysiology, diagnosis, and treatment. Front Neurol. 2022;13:1049850. PubMed
- Mignarri A, Dotti MT, Federico A, et al. The spectrum of magnetic resonance findings in cerebrotendinous xanthomatosis: redefinition and evidence of new markers of disease progression. J Neurol. 2017;264(5):862-874. PubMed
- Stelten BML, Lycklama À Nijeholt GJ, Hendriks E, et al. Long-term MRI Findings in Patients With Cerebrotendinous Xanthomatosis Treated With Chenodeoxycholic Acid. Neurology. 2022;99(13):559-566. PubMed
- Stelten BML, Huidekoper HH, van de Warrenburg BPC, et al. Long-term treatment effect in cerebrotendinous xanthomatosis depends on age at treatment start. Neurology. 2019;92(2):e83-e95. PubMed
- Zubarioglu T, Kıykım E, Köse E, et al. Clinical, biochemical, and molecular insights into Cerebrotendinous Xanthomatosis: A nationwide study of 100 Turkish individuals. Mol Genet Metab. 2024;142(2):108493. PubMed
- Ma C, Ren YD, Wang JC, et al. The clinical and imaging features of cerebrotendinous xanthomatosis: A case report and review of the literature. Medicine (Baltimore). 2021;100(9):e24687. PubMed
- Martínez-Hernández HR, Villa-Villegas L, Piña-Avilés CE, et al. Cerebrotendinous Xanthomatosis: Clinical Features of Affected Individuals From Latin America. Neurol Genet. 2026;12(6):e200443. PubMed
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