
先に結論:BWSは、舌が大きい・臍帯ヘルニア・片側肥大などで気づかれる過成長の病気。腫瘍の早期発見のため、2018年の国際合意は、多くの患者に7歳まで3か月ごとの腹部エコーを勧めている
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな病気か | 11番染色体の11p15.5領域のインプリンティング(遺伝子の働きを調節する仕組み)の異常による過成長症候群。約1万人に1人の頻度と推定される(Brioude 2018、Russo 2025) |
| 主な特徴 | 大きな舌(巨舌)、臍帯ヘルニア(腹壁の欠損)、片側肥大(体の一部の左右差)、新生児の低血糖、巨大児など(Brioude 2018) |
| 腫瘍のリスク | 胎児性腫瘍は約8%。Wilms腫瘍が最も多く、次いで肝芽腫。リスクは分子の型で大きく異なる(Brioude 2018、Maas 2016) |
| 腹部エコー | 2018年の国際合意:多くの型で7歳の誕生日まで3か月ごと。2024年の北米・豪州の更新:肝芽腫のリスクがある型では、3歳までAFP(血液検査)と腹部エコーを3か月ごと(Brioude 2018、Kalish 2024) |
| 受診の目安 | お腹が張る・しこりに気づく、血尿、元気がない・哺乳が悪いときは、定期検査の日を待たずに主治医へ連絡する |
Beckwith-Wiedemann症候群とは
BWSは、遺伝子のスイッチを調節するゲノムインプリンティングの異常で起こる病気です。過成長、巨舌、腹壁の欠損、新生児の低血糖、片側肥大(体の一部が左右で大きさが違う)、胎児性腫瘍になりやすいことなど、症状の出方に幅があり、すべてが揃うとは限りません(Brioude 2018)。11p15.5領域の異常は約80%の患者で見つかり、母方のIC2の低メチル化が約50%、母方のIC1の高メチル化が5〜10%、父方片親性ダイソミー(upd(11)pat)が約20%、CDKN1C遺伝子の変異が孤発例の約5%と家族例の約40%とされています(Brioude 2018)。頻度は、生まれる赤ちゃんの約10,340人に1人と推定され(Brioude 2018)、1万人に1人を超えるとする報告もあります(Russo 2025)。
診断のために、国際合意は「BWS・BWSp(Beckwith-Wiedemann spectrum)」の採点を示しています。巨舌・臍帯ヘルニア・片側肥大・多発あるいは両側のWilms腫瘍・高インスリン血症などを「主要な特徴(各2点)」、出生体重が平均の+2SD超・顔の単純性母斑・羊水過多や胎盤の腫大・耳のしわ・一過性の低血糖・腎や肝の腫大・臍ヘルニアなどを「示唆する特徴(各1点)」とし、合計4点以上で臨床診断の「典型的BWS」とします。遺伝子の確認がなくても臨床診断できます(Brioude 2018)。
胎児期・新生児期の所見
多くは出生後に診断されますが、胎児超音波で気づかれることがあります。イタリアの89人のBWSpの検討では、71.9%(64人)に何らかのエコー所見があり、巨大児32人、臍帯ヘルニア15人、腹部臓器の腫大6人、巨舌11人、副腎の嚢胞・腫瘤2人、腎尿管の異常11人、羊水過多28人、胎盤の腫大2人、胎盤の間葉性異形成4人でした。母体血清マーカーのAFP・エストリオール・hCGは、妊娠15〜18週に高く、腹囲は大きいのに大腿骨長は正常でした(Carli 2021)。
9人のBWS患児の胎児画像(13〜35週、42回)を調べた研究では、臍帯ヘルニアが最も多い所見で、妊娠の早い時期から見つかり、出生後の所見と全例で一致していました。巨大児・巨舌・内臓の腫大・下顎後退は、より遅い時期に見つかっていました(Shieh 2019)。
| 胎児エコーの所見 | メモ |
|---|---|
| 臍帯ヘルニア | 最も多く、早期から分かる(Shieh 2019) |
| 巨大児・腹囲の増大 | 妊娠中期以降に目立つ(Carli 2021、Shieh 2019) |
| 巨舌 | やや遅れて見つかる(Shieh 2019) |
| 腹部臓器の腫大・副腎の嚢胞・腎の異常 | 少数に見られる(Carli 2021) |
| 羊水過多・胎盤の腫大 | 産科の所見として手がかりになる(Carli 2021) |
臍帯ヘルニアがあるからといって、BWSとは限りません。スウェーデンの全国登録の研究では、臍帯ヘルニアの207人のうちBWSと診断されたのは15人(7.2%)でした。追跡の中央値8年で、臍帯ヘルニアの子の誰にも胎児性腫瘍はまだ出ておらず、臍帯ヘルニアを伴うBWSの腫瘍リスクは、以前に言われるほど高くない可能性があるため、出生前の相談では考慮が必要とされています(Fogelström 2023)。
新生児の低血糖
BWS・BWSpの子どもの30〜60%で、インスリンの過剰による低血糖が見られます。多くは数日で治まる一過性ですが、新生児の最大20%で生後1週間を過ぎても続き、薬物治療や、重症では膵臓の手術が必要になることもあります(Brioude 2018)。ぐったりする、哺乳が悪いなどの異変があれば、すぐに医療機関に連絡します。
片側肥大:画像でどう見えるか
片側肥大(合意声明では「lateralized overgrowth」の語を使い、旧称の hemihypertrophy にあたる)は、体の一部が左右で大きさが違う状態です(Brioude 2018)。単純X線では、左右の下肢の骨の長さや骨端核の大きさの違いとして見えることがあります。
症例 8か月の女児 Beckwith-Wiedemann症候群の下肢X線

引用:Alhamdan AA, Shajira ES. Unusual Presentation of Beckwith-Wiedemann Syndrome in an Extremely Low Birth Weight Infant. Cureus 2024;16(6):e63099(Figure 2)(CC BY 4.0)
在胎28週、出生体重980gで生まれた女児が、生後8か月の外来で、左の下肢の方が約2cm太く長いことに気づかれた例です。もともと小さな臍ヘルニアと突出した舌、頭部の血管腫がありましたが、早産児に見られる所見と考えられ、BWSは疑われていませんでした。下肢のX線(frog-leg像)では、大腿骨の近位の骨端核の骨化が左右で違い、左の方が大きく、片側肥大が確認されました。
腫瘍のリスクと、腹部エコーによる早期発見
BWS・BWSpの子どもの約8%に胎児性腫瘍が起こります。腫瘍の種類は、Wilms腫瘍が52%、肝芽腫が14%、神経芽腫が10%、横紋筋肉腫が5%、副腎癌が3%でした(Brioude 2018)。リスクは遺伝子の型で大きく違い、1,971人のまとめでは、次のようになります(Maas 2016)。
| 分子の型 | 腫瘍の頻度 | 主な腫瘍 |
|---|---|---|
| IC1の高メチル化 | 28% | Wilms腫瘍24% |
| 父方片親性ダイソミー(pUPD) | 16% | Wilms腫瘍7.9%、肝芽腫3.5% |
| CDKN1C変異 | 6.9% | 神経芽腫(2.8%) |
| IC2の低メチル化 | 2.6% | 肝芽腫0.7% |
| 分子異常が見つからない | 6.7% | — |
Wilms腫瘍の診断年齢の中央値は24か月で、肝芽腫は常に30か月未満で見つかっていました(Maas 2016)。こうした発症時期を踏まえ、検診は乳幼児期を中心に設計されています。
腹部エコーの間隔:版ごとの違い
Wilms腫瘍の検診では、腹部エコーが推奨される検査です。腫瘍細胞の倍加時間は11〜13日と推定され、3〜4か月ごとのエコーが勧められています(Brioude 2018)。肝臓は、エコーで描出しにくい部分があり、小さな腫瘍を見逃すことがあります。そのため、肝芽腫の95%を超えるものが分泌するAFPという血液の検査を併用する案があります(Brioude 2018)。検診の方針は、次のように文書ごとに違います。
| 文書(発行年) | 腹部エコー・AFPの内容 |
|---|---|
| 国際合意声明(Brioude 2018) | IC2低メチル化のみの型を除く多くの型で、7歳の誕生日まで3か月ごとの腹部エコー。CDKN1C変異では神経芽腫の確認が目的。AFPは日常的には勧めない(肝芽腫の頻度が低く、解釈が難しく偽陽性の恐れがあるため)。医療制度により運用は変わりうるとも述べている |
| 北米・豪州の更新(Kalish 2024) | Wilms腫瘍:出生時から7歳の誕生日まで3か月ごとの腎エコー。肝芽腫のリスクがある型:AFPと腹部エコーを3歳の誕生日まで3か月ごと。その後は腎エコーに切り替える。副腎も一緒に観察する。2017年の版では48か月までだった肝芽腫の検診を36か月に短縮 |
| イタリア協会の更新(Russo 2025) | 3歳まで全員にAFP検診。Wilms腫瘍は遺伝子の型に応じた方法。CDKN1C関連の神経芽腫も扱う |
2024年の更新によると、BWSpでは肝芽腫のリスクが一般の約2,280倍と見積もられ、Wilms腫瘍の約95%が7歳の誕生日までに見つかっています(Kalish 2024)。検診で見つかったWilms腫瘍は、散発例より小さい傾向があり、生存率は同程度(4年で90%以上)でした。早期発見の主な意義は、生存率の向上よりも、部分切除など腎臓を残す治療が可能になり、治療の負担が減ることです(Brioude 2018)。
検診の間隔・期間は、遺伝子の型、通院先、国や制度によって異なります。日本での具体的な運用は、小児科・遺伝診療科の主治医の指示に従ってください。腎腫瘍の画像は腎芽腫(Wilms腫瘍)の症状、年齢、CT所見、治療、肝芽腫は肝芽腫とは?症状・PRETEXT分類・治療・予後と画像診断、乳児の腹部腫瘤全体の見方は新生児・乳児の腹部腫瘤にまとめています。エコーそのものの見方は腹部エコーのやり方と見落としやすい所が参考になります。
腎臓の異常もよくある
BWSpでは、腎・尿路の異常の割合が28〜61%と報告されています。腎の皮質・髄質の嚢胞が約10%にあり、高カルシウム尿症や腎結石も一般より多くなります。国際合意は、診断時と成人移行期に腎・泌尿器の評価をすること、腫瘍検診で腹部エコーを受ける人では腎石灰化や結石も確認することを勧めています(Brioude 2018)。
こんなときは受診を
- お腹が張る、しこりに触れる、血尿がある、原因のはっきりしない腹痛:腎臓・肝臓の腫瘍の確認が必要です。定期検査の日まで待たずに連絡します。
- 新生児で、ぐったりしている、哺乳が悪い、けいれんがある:低血糖の可能性があり、すぐに受診します。
- 舌が大きくて、哺乳や呼吸がしにくい:小児科や専門の医療機関に相談します。
- 妊娠中に胎児エコーで臍帯ヘルニアや巨大児などを指摘された:産科・小児科の専門医と、検査の内容や出生後の準備を相談します。
気になる症状があれば、医療機関に相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. BWSの子どもは、全員が腫瘍になりますか?
A. いいえ。胎児性腫瘍が起こるのは約8%です(Brioude 2018)。型によってリスクは大きく違い、IC2の低メチル化では2.6%にとどまります(Maas 2016)。
Q. 腹部エコーはいつまで続けますか?
A. 2018年の国際合意では、多くの型で7歳の誕生日まで3か月ごと、2024年の北米・豪州の更新でも、腎エコーは7歳の誕生日まで3か月ごとです。肝芽腫を目的とするAFPと腹部エコーは、3歳までが提案されています(Brioude 2018、Kalish 2024)。実際の方針は主治医に確認してください。
Q. 臍帯ヘルニアがあればBWSですか?
A. いいえ。臍帯ヘルニアの子のうちBWSの割合は7.2%という報告があります(Fogelström 2023)。診断には、他の特徴や遺伝子の検査を合わせて行います。
Q. 検診で腫瘍が見つからなければ安心ですか?
A. 検診は腫瘍の見逃しを減らす方法ですが、肝臓の小さな腫瘍は、エコーで見えにくいことがあります(Brioude 2018)。間の期間にお腹の張りやしこりに気づいたら、受診してください。
あわせて読みたい:腎芽腫(Wilms腫瘍・ウィルムス腫瘍)の症状、年齢、CT所見、治療
あわせて読みたい:胎盤間葉性異形成(PMD)の超音波・MRI|多嚢胞性の胎盤と部分胞状奇胎との違い、BWSとの関連
参考文献
- Brioude F, Kalish JM, Mussa A, et al. Expert consensus document: Clinical and molecular diagnosis, screening and management of Beckwith-Wiedemann syndrome: an international consensus statement. Nat Rev Endocrinol. 2018;14(4):229-249. PubMed
- Kalish JM, Becktell KD, Bougeard G, et al. Update on Surveillance for Wilms Tumor and Hepatoblastoma in Beckwith-Wiedemann Syndrome and Other Predisposition Syndromes. Clin Cancer Res. 2024;30(23):5260-5269. PubMed
- Russo S, Milani D, Mussa A, et al. Beckwith-Wiedemann spectrum (BWSp): an update on diagnosis, management, and follow-up from the scientific committee of the Italian BWSp association. Ital J Pediatr. 2025;51(1):287. PubMed
- Maas SM, Vansenne F, Kadouch DJ, et al. Phenotype, cancer risk, and surveillance in Beckwith-Wiedemann syndrome depending on molecular genetic subgroups. Am J Med Genet A. 2016;170(9):2248-2260. PubMed
- Carli D, Bertola C, Cardaropoli S, et al. Prenatal features in Beckwith-Wiedemann syndrome and indications for prenatal testing. J Med Genet. 2021;58(12):842-849. PubMed
- Shieh HF, Estroff JA, Barnewolt CE, et al. Prenatal imaging throughout gestation in Beckwith-Wiedemann syndrome. Prenat Diagn. 2019;39(9):792-795. PubMed
- Fogelström A, Caldeman C, Wester T, et al. Prevalence of Beckwith Wiedemann Syndrome and Risk of Embryonal Tumors in Children Born with Omphalocele. J Pediatr Surg. 2023;58(11):2114-2118. PubMed
- Alhamdan AA, Shajira ES. Unusual Presentation of Beckwith-Wiedemann Syndrome in an Extremely Low Birth Weight Infant. Cureus. 2024;16(6):e63099. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
