
先に結論:分娩関連の硬膜下血腫は「後ろ寄り・薄い・生後早期・ほかの損傷なし」。この型から外れる所見は、分娩以外の原因を考える手がかりになる
| 項目 | 分娩関連の硬膜下血腫の典型 |
|---|---|
| 頻度 | 症状のない正期産児のMRIで、報告によって約8%〜46%。経腟分娩、とくに器械分娩で多い |
| 分布 | 後頭蓋窩(テント・小脳表面)、後頭葉・頭頂後頭部の表面、大脳半球間裂の後ろ側 |
| 厚さ | 多くは3 mm以下 |
| 消える時期 | 多くは生後1か月までに消え、3か月までにはすべて消えたとする報告がある |
| 合併所見 | 架橋静脈の損傷、頸椎の靱帯損傷、広い脳実質の損傷は伴わない |
分娩関連の硬膜下血腫とは
分娩関連の硬膜下血腫(birth-related subdural hemorrhage)は、分娩の際に生じる硬膜下の出血です。症状のない新生児にもよくみられ、長期的な後遺症は残さないとされます(Krishnan 2024)。ふだん症状のない新生児に頭部MRIを撮ることはないため、実際の頻度や見え方は、研究目的のMRIや、別の理由で撮った画像の検討から分かってきました。
この出血が問題になるのは、乳児の虐待による頭部外傷(AHT)でも硬膜下血腫が中心的な所見になるためです。分娩関連の出血と、出生後の外傷による出血を区別することは、医学的にも法的にも重要です(Krishnan 2024)。分娩関連の硬膜下血腫は、虐待が疑われる乳児の裁判で「別の説明」として持ち出されることが多いとも指摘されています(Nikam 2021)。
どのくらいの頻度でみられるか
症状のない正期産児を対象にしたおもな研究を表にまとめます。検査の時期や装置が違うため、頻度には幅があります。
| 報告 | 対象・方法 | 結果 |
|---|---|---|
| Whitby 2004 | 111人、0.2 TのMRI | 9人に硬膜下血腫。正常経腟分娩で6.1%、吸引不成功後の鉗子分娩で27.8%。全員が治療を要さず、4週後には消えていた |
| Looney 2007 | 88人、3.0 T、生後1〜5週 | 頭蓋内出血17人(硬膜下16人)。全員が経腟分娩で、経腟分娩での頻度は26%。器械分娩や分娩時間の延長とは関連なし |
| Rooks 2008 | 101人、生後72時間以内のMRIと経過観察 | 46人に硬膜下血腫。経腟分娩・帝王切開の両方でみられた。多くは3 mm以下で1か月までに消え、3か月までにすべて消失 |
| Nikam 2021 | 生後1か月未満でCT・MRIを撮った148人 | 37.8%に分娩関連の硬膜下血腫。経腟分娩54.7%、帝王切開17.5% |
| Krishnan 2024 | 健康な正期産児200人、生後0〜2か月 | 33%に頭蓋内出血があり、すべて硬膜下血腫。帝王切開11.8%、経腟分娩43.9%、補助経腟分娩63.3% |
正期産児の頭蓋内出血を集めたメタ解析(20研究)では、全体の頻度は9.3%、症状のない児では5.8%、症状のある児では29.3%で、CT・MRIのほうが超音波より多く検出されていました。最も多いのは脳実質外の出血で、器械分娩では頭蓋内出血のオッズが高くなっていました(オッズ比3.75)(Datta 2024)。
研究ごとに数字が大きく違うのは、撮像の時期(生後数日か数週か)、磁場の強さ、対象の選び方が違うためです。共通していえるのは、症状のない新生児でも硬膜下血腫はまれではなく、経腟分娩、とくに器械分娩で多いことです。一方で、帝王切開でも起こりえます(Rooks 2008、Krishnan 2024)。
画像所見:分布・厚さ・信号
分布:後ろ寄りに集まる
分娩関連の硬膜下血腫は、頭の後ろ側に集まるのが特徴です。後頭蓋窩、テントに沿った部分、頭頂後頭部の表面、大脳鎌の後ろ側に多く、これは胎児の硬膜の静脈叢の分布と一致すると説明されています(Krishnan 2024)。
- Rooks 2008:硬膜下血腫のあった46人全員に、後頭部のテント上の硬膜下血腫がみられ、20人(43%)はテント下にも血腫がありました。
- Nikam 2021:テント上のみ8.9%、テント下のみ25%、両方66.1%。テント上では後頭葉に沿うものが最も多く(73.8%)、後頭蓋窩ではテントに沿うものが最も多い(74.5%)結果でした。
- Krishnan 2024:硬膜下血腫の81.8%が後頭蓋窩にありました。
厚さ:ほとんどが3 mm以下
Krishnan 2024では、硬膜下血腫の最大の厚さは1〜5 mmで、95.5%が3 mm以下、平均は1.8±0.9 mmでした。著者らは、より大きな血腫は外傷による硬膜下血腫を疑わせるとしています。Rooks 2008でも、出生時の血腫の多くは3 mm以下でした。
MRIの信号と時期
Krishnan 2024では、生後11〜25日のMRIで出血が見つかり、生後25日を過ぎた児では頭蓋内出血は見つかりませんでした。信号は日齢とともに一定の変化を示しています。
| 日齢 | T1強調像 | T2強調像 | 拡散強調像 |
|---|---|---|---|
| 13日未満 | すべて高信号 | すべて低信号 | — |
| 13〜21日 | すべて高信号 | 低信号73.1%、混在26.9% | 高信号の血腫はこの群だけにみられた |
| 21日超 | すべて高信号 | すべて低信号 | — |
この信号の変化は日齢の推定に役立ちますが、著者ら自身が信頼性には限界があると述べています(Krishnan 2024)。信号だけで出血の時期を決めることはできません。
症例 0歳男児(日齢9) テント上・テント下の硬膜下血腫(症状あり)

引用:Hong HS, et al. Childs Nerv Syst 2018(Figure 1)(CC BY 4.0)
38週6日に経腟分娩で生まれ、生後24時間以内に無呼吸とけいれんがみられた新生児です。初産で分娩は遷延していました。矢状断T1強調像でテント上下にまたがる硬膜下血腫(a)、横断T1強調像で両側の頭頂後頭部の表面と大脳半球間裂の後ろ側に高信号の硬膜下血腫(b)がみられます。グラディエントエコー像では左小脳半球の点状の実質内出血と、小脳表面の硬膜下血腫がみられます(c)。1か月後のMRIでは硬膜下血腫はほぼ消えていました(d)。両眼に網膜出血もみられました。
この症例は症状のある新生児の例ですが、硬膜下血腫の分布は、症状のない分娩関連の血腫で報告されている「後ろ寄り」の分布と重なります。症状のある正期産児42人の検討では、硬膜下血腫が最も多い出血で(95.2%)、テントに沿うもの38人、小脳表面39人、大脳半球間裂10人、後頭葉13人、頭頂後頭葉11人でした。分娩外傷が疑われたのは47.6%、周産期仮死は50.0%で、周産期仮死の既往が予後不良と関連していました(Hong 2018)。
虐待による頭部外傷(AHT)との区別の考え方
AHTは2歳未満の子どもの致死的な頭部外傷の主な原因で、診断は病歴・身体所見・画像・検査所見をもとに多職種のチームで行います(Choudhary 2018)。画像だけで虐待を決めることはできませんが、硬膜下血腫の見え方には、分娩関連と考えやすい型と、そうでない型があります。
| 見る点 | 分娩関連の硬膜下血腫 | AHTで報告される硬膜下血腫 |
|---|---|---|
| 分布 | 後頭蓋窩・テント・後頭部、大脳半球間裂の後ろ側 | 片側または両側の大脳半球を覆い、両側の円蓋部と大脳半球間裂に沿うことが多い。前方の大脳半球間裂に及ぶ傾向 |
| 厚さ | 多くは3 mm以下 | より大きい血腫は外傷を疑わせる |
| 信号・濃度 | 日齢に応じた変化 | 均一でなく混在した信号・濃度のときはとくに疑わしい |
| 合併所見 | 架橋静脈の損傷・頸椎の靱帯損傷・広い脳実質損傷はない | 架橋静脈の損傷、脳実質の損傷、頸椎靱帯の損傷を伴うことが多い |
| 時期 | 生後早期。生後1か月前後で消える | 出生から時間がたってから見つかる |
表は Krishnan 2024 の考察と結果をもとにしています。ただし、前方の大脳半球間裂への広がりなどの特徴は特異的ではないとする研究もあると、同じ論文が述べています(Krishnan 2024)。一つの所見だけで判断しないことが大切です。
「分娩時の血腫が後で再出血した」という説明について
AHTに関する国際的なコンセンサス声明(2018年)は、出生から時間がたった時点で、症状のなかった分娩関連の硬膜下血腫が再出血を起こして急に倒れる、という説明には裏付けがないと述べています(Choudhary 2018)。同じ声明は、脳静脈洞血栓症、低酸素性虚血性障害、腰椎穿刺、むせ込み・嘔吐が、AHTの一連の損傷の原因になるという信頼できる医学的根拠はないとしています。一方で、AHTに似る病気を除外する検査が必要であるとも述べています(Choudhary 2018)。
実際に読むときの手順
- 日齢と分娩歴を確認する:経腟分娩か、器械分娩か。生後何日の検査か。生後1か月を大きく過ぎて新たに見つかった硬膜下血腫は、分娩だけでは説明しにくくなります。
- 分布をみる:後頭蓋窩・テント・後頭部の薄い血腫か、円蓋部や前方の大脳半球間裂に広がる血腫か。
- 厚さを測る:3 mmを大きく超えるか。
- 信号・濃度の混在をみる:時期の違う出血が混じっていないか。
- 合併所見を探す:架橋静脈の損傷、脳実質の損傷・浮腫、頸椎の靱帯損傷。必要に応じて全身骨の評価や眼底検査は小児科・虐待対応のチームと相談する。
- 前の画像と比べる:以前の画像があれば、血腫が消えていく途中か、新しく増えているか。
報告書には、所見と、それが分娩関連の典型に合うか合わないかを事実として書き、原因の断定は臨床情報とあわせて多職種で行います。
症状のある新生児では別に考える
ここまでの「よくある・後遺症を残さない」という話は、症状のない新生児の、薄く後ろ寄りの硬膜下血腫についてのものです。けいれん・無呼吸・哺乳不良・意識の変化などの症状がある新生児の頭蓋内出血は、別に評価が必要です。症状のある正期産児42人の検討では、けいれん(様の動き)が最も多い症状(40.5%)で、無呼吸が16.7%でした。27人の経過を追えた範囲では44.4%が予後不良で、周産期仮死が最も強く関連していました。1人は硬膜外血腫の穿頭ドレナージを、3人は閉塞性水頭症のためのシャント手術を要しました(Hong 2018)。
症状のある新生児では、出血の部位と量に加えて、低酸素性虚血性脳症の所見、脳梗塞、静脈洞血栓症、水頭症の有無もあわせて読みます。新生児のけいれんのMRIの読み方は、新生児・乳児けいれんのMRIにまとめています。
頭皮の下の出血(頭血腫・帽状腱膜下血腫)は硬膜下血腫とは層が違い、見方も異なります。帽状腱膜下血腫とは?頭血腫・産瘤との違いもあわせてご覧ください。乳児期の頭囲拡大と硬膜下の液体貯留については乳児の頭囲拡大の原因、年長児・成人の急性硬膜下血腫の典型的な形は急性硬膜下血腫とはで解説しています。
赤ちゃんにけいれん、ぐったりしている、ミルクを飲まない、繰り返し吐く、頭が急に大きくなる、といった様子があれば、すぐに医療機関を受診してください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 帝王切開で生まれた子に硬膜下血腫があれば、分娩関連ではないと考えるべきですか?
いいえ。頻度は低いものの、帝王切開で生まれた児にも分娩関連と考えられる硬膜下血腫がみられています(帝王切開で11.8%:Krishnan 2024、17.5%:Nikam 2021)。Rooks 2008でも経腟分娩・帝王切開の両方でみられました。分娩方法だけで原因を決めることはできません。
Q2. 分娩関連の硬膜下血腫は、いつまで見えますか?
Whitby 2004では全員が4週後に消えており、Rooks 2008では多くが1か月までに、すべてが3か月までに消えていました。Krishnan 2024では生後25日を過ぎた児に出血はみられませんでした。生後1か月を大きく過ぎてから新しく見つかった硬膜下血腫は、分娩以外の原因も考えて評価します。
Q3. 超音波で見つからなければ、硬膜下血腫はないと考えてよいですか?
超音波は硬膜下血腫の検出に限界があります。Rooks 2008では、MRIで見つかったテント下の硬膜下血腫20例のうち超音波で見つかったのは11例(55%)で、テント上の硬膜下血腫は超音波では1例も見つかりませんでした。メタ解析でも、CT・MRIのほうが超音波より頭蓋内出血の検出が多くなっていました(Datta 2024)。
Q4. 分娩関連の硬膜下血腫は治療が必要ですか?
症状のない分娩関連の硬膜下血腫は、報告された研究では治療を要さずに消えています(Whitby 2004)。Rooks 2008でも、硬膜下血腫のあった子どもの多くは24か月の発達評価で正常でした。症状がある場合や、血腫が大きい・増えている場合は、主治医が個別に判断します。
参考文献
- Krishnan V, Jaganathan S, Choudhary AK, et al. Birth-related subdural hemorrhage in asymptomatic neonates: evolution over time and differentiation from traumatic subdural hemorrhage. Pediatr Radiol. 2024;54(10):1631-1642. PubMed
- Nikam RM, Kandula VV, Yue X, et al. Birth-related subdural hemorrhage: prevalence and imaging morphology. Pediatr Radiol. 2021;51(6):939-946. PubMed
- Rooks VJ, Eaton JP, Ruess L, et al. Prevalence and evolution of intracranial hemorrhage in asymptomatic term infants. AJNR Am J Neuroradiol. 2008;29(6):1082-9. PubMed
- Whitby EH, Griffiths PD, Rutter S, et al. Frequency and natural history of subdural haemorrhages in babies and relation to obstetric factors. Lancet. 2004;363(9412):846-51. PubMed
- Looney CB, Smith JK, Merck LH, et al. Intracranial hemorrhage in asymptomatic neonates: prevalence on MR images and relationship to obstetric and neonatal risk factors. Radiology. 2007;242(2):535-41. PubMed
- Datta D, Chisvin R, Tu A. Prevalence, type, and risk factors of intracranial hemorrhage in term neonates: a systematic review and meta-analysis. Childs Nerv Syst. 2024;41(1):32. PubMed
- Hong HS, Lee JY. Intracranial hemorrhage in term neonates. Childs Nerv Syst. 2018;34(6):1135-1143. PubMed
- Choudhary AK, Servaes S, Slovis TL, et al. Consensus statement on abusive head trauma in infants and young children. Pediatr Radiol. 2018;48(8):1048-1065. PubMed
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