
先に結論:治療後の画像は「比較する・場所を分ける・T2とDWIを使う」で読む
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 基本の姿勢 | 治療前の画像と、前回の治療後画像の両方と比べる。新しく出た所見は、ずっと変わらない所見より疑いを強くする |
| 治療後の変化 | 放射線の直後は浮腫と強い造影、3か月を過ぎると線維化。左右対称で照射野にそろっていれば治療の影響を考える |
| 再発を疑う所見 | 以前の腫瘍に似た腫瘤、手術の断端や皮弁の深部の結節、中間信号のT2と拡散制限(MRI)、強いFDG集積 |
| 報告の型 | ACRのNI-RADS(1〜4)。疑いの強さと次の一手(経過観察・内視鏡・短期再検・生検)を結びつける |
| 撮る時期 | 治療終了後8〜12週が最初の効果判定。6か月までの評価の根拠は強く、その後の長期の撮像の効果は不明 |
なぜ治療後の頭頸部画像は難しいのか
頭頸部癌は、口腔・咽頭・喉頭・鼻副鼻腔・唾液腺などに生じる癌で、多くは扁平上皮癌です。治療は手術、放射線治療、化学放射線治療が中心で、組み合わせも施設や病期で変わります。
治療後の画像が難しい理由は3つあります。
- 解剖が変わっている:切除と再建(皮弁など)、頸部郭清で、筋肉・血管・唾液腺が失われたり位置が変わったりしている
- 放射線による変化が長く続く:浮腫、強い造影、線維化、萎縮が時間とともに変わる
- 再発は粘膜の下から出ることがある:内視鏡で見える粘膜の再発だけでなく、深部の再発を画像で拾う必要がある
治療後の画像には、切除・再建の変化、頸部郭清の変化、放射線壊死、神経の除神経変化、放射線による二次腫瘍など、再発以外のさまざまな所見が現れます。治療が必要なものと、経過をみればよいものがあります(Offiah 2011)。
米国放射線学会(ACR)のNI-RADS委員会は、複雑な切除・再建と放射線・化学療法による変化のため、治療後の首は読影医にとって不安の多い領域であり、報告の仕方がばらつきやすいと述べています(Aiken 2018)。粘膜下の再発をタイミングよく見つけることは、救済手術を受けられるかどうかに直結します(Aiken 2018)。
読影の順番:治療後の首のチェックリスト
| 順番 | 見ること |
|---|---|
| 1 | 何の癌を、いつ、どう治療したか(切除範囲・再建の有無・照射の範囲)を確認する |
| 2 | 治療前の画像と、前回の治療後画像を並べる。再発した腫瘍は元の腫瘍に似た画像になりやすい(Zander 2026) |
| 3 | 原発部位を「粘膜」と「深部」に分けて見る(粘膜の異常は内視鏡で確認できる) |
| 4 | 頸部リンパ節を見る(大きさだけでなく、壊死・造影・数の変化) |
| 5 | 神経に沿った進展(三叉神経など)と頭蓋底への進展を見る。MRIが得意 |
| 6 | 骨・軟骨・血管・肺尖など、放射線や手術の合併症を見る |
治療後に「当たり前に」起こる変化
手術後の変化
舌や下顎骨、上顎の切除では、切除した部分を皮弁などで再建します。再建した皮弁は、切除した部分に新しい組織が入るため、周囲と性質の違う塊として見えます。頸部郭清のあとは、胸鎖乳突筋や内頸静脈、顎下腺などがなくなっていることがあります(Chakrabarty 2024)。こうした解剖のあとを知らないと、「腫瘤」と読み違えます。
放射線治療後の変化
放射線治療後の組織の変化は、早期の炎症・増殖期と、のちの組織の入れ替わり(線維化)の時期に分けられます(Chakrabarty 2024)。
| 時期 | 画像の変化 |
|---|---|
| 早期(2週〜3か月) | 皮下脂肪の濃度上昇、咽頭・喉頭の浮腫と壁の造影増強、唾液腺(顎下腺・耳下腺)の腫大と強い造影、骨髄の脂肪化(照射野に限られる) |
| 晩期(90日を過ぎて) | 皮膚・広頸筋の肥厚、咽頭収縮筋の肥厚、唾液腺・甲状腺の萎縮(線維化) |
(Chakrabarty 2024)
FDG-PETでは、早期の放射線の変化は、照射野に限られた、左右対称の軽い集積として現れ、照射野内の筋肉の集積が上がることもあります(Chakrabarty 2024)。左右対称で、照射野の形にそろっていることは、治療の影響を考える手がかりです。再発は一般に、片側の限局した腫瘤として現れます。
なお、頸部の解剖を確認したいときは頸部MRIの正常解剖ツール、深頸筋膜の区画は頸部間隙と深頸筋膜が参考になります。
再発を疑うとき
粘膜の異常と深部の異常を分ける
原発部位は、粘膜の異常と深部の異常に分けて考えると整理しやすくなります。NI-RADSでも、原発部位の「疑いが低い」カテゴリーは、粘膜の異常(2a)と深部の所見(2b)に分けられています(Zander 2026)。粘膜の異常には内視鏡で直接見るのが基本で、深部の所見には短期間での再検査が勧められます(Zander 2026)。
MRIではT2強調像と拡散強調像が助けになる
治療後の線維化や瘢痕は、T1・T2とも低信号の、腫瘤をつくらない軟部組織のゆがみとして見えます(Zander 2026)。一方、再発した腫瘍は中間のT2信号と低い拡散(ADCが低い)を示します(Zander 2026)。MRIのNI-RADSの早期の検討では、拡散強調像(ADC平均値の閾値1.3×10−3mm2/s)と中間のT2信号の組み合わせで、陽性的中率は原発・リンパ節とも80%を超えました(Zander 2026)。
頭頸部扁平上皮癌の治療後MRI 69例では、NI-RADSにT2信号と拡散の基準を加えると、原発部位の感度は84.6%から92.3%、特異度は81.4%から90.7%に上がりました(Ashour 2021)。
| 治療の影響を考える | 再発を考える |
|---|---|
| 左右対称で、照射野の形にそろう | 片側の限局した腫瘤・結節 |
| 腫瘤をつくらない軟部のゆがみ、T1・T2とも低信号(瘢痕・線維化) | 中間のT2信号で、拡散が低い(MRI) |
| 前回の画像から変わらない | 前回にない新しい所見、増大する所見 |
| 軽い集積が照射野に広がる(FDG-PET) | 限局した強い集積(FDG-PET) |
| 骨に変化があっても、局所の造影される軟部腫瘤がない | 骨の変化に局所の造影される軟部腫瘤を伴う |
症例 皮弁の深部に再発した頭頸部扁平上皮癌

引用:Zander DA, et al. Cancer Imaging. 2026;26:8(Figure 1)、CC BY 4.0(図は加工していません)
遊離皮弁による再建の深部の縁に再発した頭頸部扁平上皮癌で、MRIのNI-RADSでは原発部位のカテゴリー3とされています。T2強調像で中間の信号、拡散強調像で拡散の低下があり、周囲の治療後の変化と区別できます。FDG-PET/CTでも強い集積があります。
NI-RADSの考え方
NI-RADS(Neck Imaging Reporting and Data System)は、BI-RADSなどと同じように、用語の統一・リスクの段階づけ・次の一手を結びつけた報告の型です。原発部位とリンパ節それぞれにスコアを付けます。2018年にCTとFDG-PET/CT向けのホワイトペーパーとして発表され、2025年にMRI版が公開されました(Zander 2026)。
| カテゴリー | 意味 | CT・PET/CTでの再発の割合(原発/リンパ節) | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| 0 | 必要な過去画像がなく評価できない | — | 過去画像と比較する |
| 1 | 再発の所見なし(正常、または予想される変化) | 4.2%/3.5% | 通常の経過観察 |
| 2 | 再発の疑いが低い(原発は2a粘膜・2b深部) | 29.0%/14.3% | 粘膜は内視鏡、深部やリンパ節は短期の再検査 |
| 3 | 再発の疑いが高い | 74.4%/73.3% | 生検 |
| 4 | 再発が確定、または証明されている | — | 臨床チームが決める |
(Zander 2026)
治療後12週のFDG-PET/造影CTをNI-RADSで読んだ199例では、治療が失敗した割合はカテゴリー1で4.3%、2で9.1%、3で42.1%と、段階が上がるほど高くなりました(Hsu 2019)。数字は報告によって幅があり、カテゴリー2の再発の割合は研究ごとに違うため、「疑いが低くても、経過をみる」ことが前提になります。FDG-PETは神経周囲進展への感度が高くないため、神経に沿った再発が疑われるときはMRIが勧められています(Zander 2026)。
なお、FDGの偽陽性が問題になる場面はFDG-PETの偽陽性にまとめています。
いつ撮るか:12週のPET-CTと撮像の期間
- 最初の評価は治療終了後8〜12週:12週のPET-CTは、原発部位の残存・再発の検出で、まとめた感度86.2%・特異度82.3%でした(Zander 2026)
- 6か月までの撮像の根拠は強いが、6か月を過ぎた長期の撮像の効果は、データが限られていて不明です(Zander 2026)
- 2回続けて陰性なら終了も考える:6か月あけて2回続けてFDG-PET/CTが陰性のとき、陰性的中率98%という報告があり、NI-RADSでも8〜12週と6か月後の両方が陰性なら撮像の終了が示されています(Zander 2026)
- 症状のない再発の約95%は治療後2年以内に見つかるとされますが、腺様嚢胞癌のように遅れて再発する腫瘍もあります(Zander 2026)
頸部リンパ節転移が進んだ(N2・N3)患者さんで、化学放射線治療後に、12週のPET-CTの結果をみて頸部郭清を決める方法と、あらかじめ郭清をする方法を比べた無作為化試験があります(564例、PET-NECK試験)。2年全生存率はPET-CT監視群84.9%、計画郭清群81.5%で、監視群は劣らず、頸部郭清の回数は54回対221回と少なくなりました(Mehanna 2016)。この試験の患者さんは、84%が中咽頭癌で、75%がp16陽性でした(Mehanna 2016)。
晩期の合併症と再発の見分け
放射線治療後の晩期合併症には、粘膜壊死、開口障害(咀嚼筋・顎関節の線維化)、骨壊死(下顎骨が最も多い)、喉頭軟骨壊死、頸動脈の血栓や動脈硬化、側頭葉の壊死、神経障害などがあります(Chakrabarty 2024)。
| 合併症 | 画像の特徴(Chakrabarty 2024) |
|---|---|
| 粘膜壊死 | 粘膜の造影がなく、潰瘍を伴うことがある。周囲のガスは壊死を示す。ただし、深い潰瘍に充実性の造影があれば再発を疑う |
| 骨壊死 | CTで斑状の透亮像、不規則な硬化、皮質の破壊、病的骨折。MRIで骨髄の異常信号とびまん性の強い造影。局所の軟部腫瘤はない |
| 咀嚼筋の変化 | 翼突筋の萎縮とT2信号の上昇・造影が、照射野の中に直線状の境界で限られる |
骨壊死のFDG-PET/CTでは、骨の周囲に強い集積をみることがありますが、局所の造影される軟部組織がないことが再発との違いです(Chakrabarty 2024)。腫瘍の部位から離れた場所の皮質の欠損は、骨壊死を強く示唆します(Chakrabarty 2024)。
症例 化学放射線療法後に下顎骨壊死をきたした頬粘膜癌

引用:Chakrabarty N, et al. Br J Radiol. 2024;97(1164):1898-1914(Figure 8)、CC BY 4.0(図は加工していません)
下顎の半側切除と術後化学放射線療法のあとの症例です。下顎骨体部に骨折した骨片と複数の透亮像があり、疑わしい造影される軟部組織はなく、放射線治療の晩期合併症である骨壊死と考えられています。
研修医が見落としやすい点
- 画像が左右非対称でも、片側だけ照射した場合は照射側に変化が出る。照射の範囲を確認する
- 粘膜の薄い異常は、CTやMRIで見えないことがある。臨床の診察や内視鏡の所見と合わせる
- FDG-PETは早期の炎症や骨壊死でも集積するので、集積だけで再発とは決めない
- 神経周囲進展(頭蓋底の孔の拡大など)は、PETで見逃しやすい
- 部位ごとの治療後の解剖(咽頭・喉頭では下咽頭癌の画像診断、上咽頭では上咽頭癌のCT・MRI)も復習しておく
よくある疑問(Q&A)
Q1. 放射線治療のあと、唾液腺が腫れて強く造影されるのは再発ですか?
放射線治療後の早期(2週〜3か月)には、顎下腺や耳下腺が腫大して強く造影されることがあり、予想される治療の影響です(Chakrabarty 2024)。90日を過ぎると、萎縮へと変わっていきます。
Q2. 12週のPET-CTで集積が残っていたら、すぐ手術になりますか?
12週のPET-CTは、残存の評価のための検査で、画像だけで手術が決まるわけではありません。PET-NECK試験では、PET-CTで反応が十分でない、または判断のつかないときにだけ頸部郭清を行いました(Mehanna 2016)。生検や短期の再検査を含め、頭頸部腫瘍のチームで決められます。
Q3. 治療後の画像で異常なしと言われたら、もう再発の心配はないのですか?
NI-RADSのカテゴリー1でも、CT・PET/CTの再発の割合は原発4.2%、リンパ節3.5%でした(Zander 2026)。ゼロではないので、診察などの定期的な経過観察は続きます。気になる症状があれば、早めに主治医に相談してください。
Q4. 画像で再発かどうか決められないときは?
NI-RADSでは、疑いに応じて内視鏡、短期の再検査、生検が結びつけられています(Zander 2026)。MRIの拡散強調像やT2強調像、PET/CTを組み合わせて判断します。
あわせて読みたい:多発外傷の頭頸部評価、頭頸部のサルコイドーシス、有毛性ポリープ(鼻咽頭)のCT・MRI
参考文献
- Zander DA, Aiken AH, Chang YS, et al. NI-RADS in posttreatment head and neck cancer surveillance: a framework for standardized imaging with clinical impact. Cancer Imaging. 2026;26(1):8. PubMed
- Chakrabarty N, Mahajan A, Agrawal A, et al. Comprehensive review of post-treatment imaging in head and neck cancers: from expected to unexpected and beyond. Br J Radiol. 2024;97(1164):1898-1914. PubMed
- Aiken AH, Rath TJ, Anzai Y, et al. ACR Neck Imaging Reporting and Data Systems (NI-RADS): A White Paper of the ACR NI-RADS Committee. J Am Coll Radiol. 2018;15(8):1097-1108. PubMed
- Hsu D, Chokshi FH, Hudgins PA, et al. Predictive Value of First Posttreatment Imaging Using Standardized Reporting in Head and Neck Cancer. Otolaryngol Head Neck Surg. 2019;161(6):978-985. PubMed
- Mehanna H, Wong WL, McConkey CC, et al. PET-CT Surveillance versus Neck Dissection in Advanced Head and Neck Cancer. N Engl J Med. 2016;374(15):1444-54. PubMed
- Offiah C, Hall E. Post-treatment imaging appearances in head and neck cancer patients. Clin Radiol. 2011;66(1):13-24. PubMed
- Ashour MM, Darwish EAF, Fahiem RM, et al. MRI Posttreatment Surveillance for Head and Neck Squamous Cell Carcinoma: Proposed MR NI-RADS Criteria. AJNR Am J Neuroradiol. 2021;42(6):1123-1129. PubMed
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