
先に結論:下肺の気管支血管束に沿う結節で、中心が低吸収・辺縁が造影されるときに疑う
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 病気 | EBウイルス(EBV)陽性のB細胞リンパ増殖性疾患。血管を壊す(血管侵襲性)のが特徴 |
| 病変の部位 | ほぼ全例で肺。皮膚・中枢神経・肝臓・腎臓にも出る。リンパ節や骨髄の病変はまれ |
| 肺CT | 気管支血管束・胸膜下に沿う結節・腫瘤、下肺優位。中心の低吸収、辺縁の造影、すりガラス影の縁(halo)、エアブロンコグラム、空洞 |
| 脳MRI | 血管周囲腔に沿う点状・線状の造影効果が手がかりになる |
| 診断 | 画像だけでは決められず、病理(EBV陽性B細胞の数と密度でグレード分類)で診断する |
リンパ腫様肉芽腫症(LYG)とは
リンパ腫様肉芽腫症(lymphomatoid granulomatosis、LYG)は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)が関わるまれなB細胞のリンパ増殖性疾患です。EBVに対する免疫監視の働きが弱まっていることが原因と考えられ、ほとんどの患者さんに免疫機能の異常がみられますが、既知の原発性免疫不全があるわけではありません(Melani 2020)。
病理では、EBV陽性の異型B細胞の数と密度でグレード分類され、血管を侵す(血管侵襲性・血管破壊性)反応性T細胞の浸潤と、さまざまな程度の壊死が特徴です(Melani 2020)。診断基準は2016年のWHO分類以降に見直されています(Quintanilla-Martinez 2023)。
病変はほぼ全例で肺にあり、そのほかの代表的な臓器は皮膚・中枢神経・肝臓・腎臓です。一方で、リンパ節や骨髄の病変は極めてまれで、あれば別の診断を考えるとされています(Melani 2020)。1979年の152例の報告では、神経症状と、肺病変の中の異型リンパ網内系細胞の多さが予後不良の因子で、12%にリンパ節のリンパ腫が続いて発生しました(Katzenstein 1979)。当時と現在では診断や治療が異なるため、予後の数字はそのまま当てはめられません。
臨床像とグレード分類
症状は、咳・息切れ・胸痛といった呼吸器症状から、発熱・体重減少・倦怠感などの全身症状まで幅があり、特異的ではありません(Chung 2011)。そのため、画像で多発結節を見たときに、LYGが頭に浮かぶかどうかが診断の入り口になります。
病理のグレードは、大型の異型B細胞の数と壊死の程度で3段階に分けられ、治療方針や予後に関わります(Chung 2011)。
| グレード | 病理の特徴 |
|---|---|
| グレード1 | 多彩なリンパ球浸潤の中に、大型の腫瘍性B細胞は少数。壊死なし |
| グレード2 | 大型の腫瘍性B細胞がより多く、一部に壊死を伴う |
| グレード3 | 大型の腫瘍性B細胞がシート状に増え、広範な壊死を伴う。大細胞型B細胞リンパ腫として扱われる |
(Chung 2011)
4例の報告では、2例が最初はグレード1で、その後グレード3に進みました。別の1例では、2週間後のCTで結節が急速に大きくなっていました(Chung 2011)。同じ患者さんでもグレードが変わることがあるため、前回のCTとの比較と、病変のサイズ変化の記載が重要です。
肺CT所見:結節・腫瘤と血管に沿う分布
肺LYGの特徴は、リンパ増殖性疾患らしいリンパ路に沿った分布と、血管侵襲によると考えられる所見の組み合わせです。4例の報告では、全例で肺の結節または腫瘤があり、気管支血管束・胸膜下に沿って下肺優位に分布していました。全例で中心の低吸収と辺縁の造影効果があり、エアブロンコグラムや空洞もみられました(Chung 2011)。
| 所見 | 意味・見え方 |
|---|---|
| 気管支血管束に沿う結節・腫瘤 | リンパ路に沿った分布。下肺に多い(Chung 2011) |
| 中心の低吸収 | 壊死に対応(Chung 2011) |
| 辺縁の造影効果 | 血管侵襲性・血管破壊性の腫瘍に関連すると考えられる(Chung 2011) |
| すりガラス影の縁(halo) | 結節の周りの出血などを反映すると考えられる(Chung 2011)。CT halo sign参照 |
| エアブロンコグラム・空洞 | 腫瘤内に空気を含む気管支や、中心壊死による空洞(Chung 2011) |
| 粗い不整な陰影・薄壁の小嚢胞・小結節の癒合 | 他の報告で挙げられた所見(Lee 2000) |
| 大きな腫瘤・大血管の閉塞 | まれにみられる(Lee 2000) |
別の報告は、結節が血管内と血管周囲の異型リンパ球の浸潤によるものと対応づけています(Lee 2000)。
症例 男性 リンパ腫様肉芽腫症(グレード2)

引用:Chung JH, et al. Korean J Radiol. 2011;12(6):671-678(Figure 1)、CC BY-NC 3.0(図は加工していません)
(A)単純CTで、気管支血管束に沿う肺の結節・腫瘤と、少量の左胸水があります。(B)造影CTでは、結節・腫瘤の辺縁が造影され、中心が低吸収です。(C)肺野条件で、左下葉の2個の結節にすりガラス影の縁(halo)があり、左下葉の結節の中にエアブロンコグラムがあります。右下葉の腫瘤の前外側にはすりガラス影があります。(D)FDG-PETでは、結節・腫瘤の辺縁に集積があります。
FDG-PETでの見え方と限界
FDG-PETでは、肺の結節・腫瘤に強い集積があります。2cmより大きい結節・腫瘤では、中心の集積が乏しく、壊死に一致します(Chung 2011)。FDG-PET/CTは、病勢や治療への反応のモニタリングに使われますが、肺と皮膚など複数の臓器でグレードが一致しない例があり、全身の病変のグレードを判断する限界も指摘されています(Yang 2021)。
脳MRIの所見
中枢神経の病変は、肺や皮膚の病変がない患者さんでは診断が難しいことがあります。脳病変が組織で確認された4例(35〜72歳)では、T2強調像で両側の大脳白質に広がる高信号(3例)、脳幹・小脳半球の病変(1例)、脳幹の斑状の高信号(2例)がみられ、全例が多発性でした。造影T1強調像では、血管周囲腔に沿う点状・線状の造影効果が4例全例で、結節状の造影が2例、リング状が1例、大きな腫瘤が1例でした(Tateishi 2001)。著者らは、血管周囲腔に沿う多発の点状・線状の造影効果がLYGを示唆するとしています。血管周囲腔に沿う造影効果の鑑別は脳造影MRIで血管周囲腔に沿う点状・線状の造影効果の鑑別にまとめています。
鑑別診断と見落としやすい点
多発する肺の結節・腫瘤は鑑別が広く、LYGは「見たことがない」ために見逃されやすい病気です。肺の血管炎・肉芽腫性疾患として、多発血管炎性肉芽腫症(旧ウェゲナー肉芽腫症)、リンパ腫様肉芽腫症、壊死性サルコイド肉芽腫症、気管支中心性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症が挙げられ、いずれも多発結節・腫瘤(空洞を伴うことがある)が典型で、転移や感染が鑑別に上がります(Frazier 1998)。
| 鑑別 | LYGとの違い・注意 |
|---|---|
| 肺転移・多発肺癌 | 分布が血管周囲・リンパ路に沿うか、中心の壊死・辺縁の造影があるかを見る。エアブロンコグラムは感染症、肺癌(特に細気管支肺胞上皮癌と呼ばれた型)、リンパ腫、GPAにも報告がある(Chung 2011) |
| 血管侵襲性真菌症(アスペルギルス) | haloは血管侵襲性アスペルギルス症で最初に報告されたが、他にも多くの病態で見られる(Chung 2011)。CT halo sign |
| 多発血管炎性肉芽腫症(GPA)など | 上気道病変(副鼻腔炎)や腎障害があればGPAを考える(Frazier 1998)。肺の血管炎の画像診断 |
| 悪性リンパ腫(MALTリンパ腫など) | エアブロンコグラムを伴う肺病変が似る(Chung 2011)。肺原発悪性リンパ腫(MALTリンパ腫) |
| 移植後リンパ増殖性疾患(PTLD) | EBV関連のリンパ増殖性疾患。PTLDの画像所見 |
診断では画像ガイド下の針生検で診断に至らないことがあります。4例中3例で行われたCTガイド下の針生検ではLYGの確定診断が得られず、手術による生検または剖検で診断されました。病変の中心が壊死していることが理由と考えられています(Chung 2011)。画像でLYGを疑うことは、B細胞マーカーの免疫染色やEBV-encoded RNAのin situ hybridizationを依頼する手がかりにもなります(Chung 2011)。
読影のチェックリスト
| 順番 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 結節・腫瘤の分布:気管支血管束・胸膜下、下肺優位か |
| 2 | 結節の内部:中心の低吸収、辺縁の造影、空洞、エアブロンコグラム |
| 3 | 周囲:すりガラス影の縁(halo)、小結節の癒合、薄壁の小嚢胞 |
| 4 | リンパ節・骨髄病変がないか(あれば別の診断を考える) |
| 5 | 他臓器:皮膚・脳(血管周囲腔に沿う造影)・肝臓・腎臓 |
| 6 | PET:辺縁優位の集積、中心の欠損 |
| 7 | 生検方針の相談:針生検で診断がつかないことがある |
治療は病理のグレードをもとに主治医・血液内科が判断します。
よくある疑問(Q&A)
Q. リンパ腫様肉芽腫症は悪性リンパ腫ですか?
A. EBV陽性のB細胞のリンパ増殖性疾患で、グレードが高いと大細胞型B細胞リンパ腫のように扱われます。グレードは病理で決まります(Melani 2020、Chung 2011)。
Q. 画像だけで診断できますか?
A. できません。CTで疑う所見はありますが、診断は病理で行います。針生検で診断がつかないこともあり、手術での生検が必要になった報告があります(Chung 2011)。
Q. 肺の多発結節があると言われました。LYGの可能性はどれくらいですか?
A. 多発する肺の結節・腫瘤は転移や感染、血管炎などが先に考えられ、LYGはまれです(Frazier 1998)。気になる症状が続くときは、担当の医師に相談してください。
あわせて読みたい:ワクチン接種後のリンパ節腫大の画像
参考文献
- Melani C, Jaffe ES, Wilson WH. Pathobiology and treatment of lymphomatoid granulomatosis, a rare EBV-driven disorder. Blood. 2020;135(16):1344-1352. PubMed
- Chung JH, Wu CC, Gilman MD, et al. Lymphomatoid granulomatosis: CT and FDG-PET findings. Korean J Radiol. 2011;12(6):671-8. PubMed
- Lee JS, Tuder R, Lynch DA. Lymphomatoid granulomatosis: radiologic features and pathologic correlations. AJR Am J Roentgenol. 2000;175(5):1335-9. PubMed
- Katzenstein AL, Carrington CB, Liebow AA. Lymphomatoid granulomatosis: a clinicopathologic study of 152 cases. Cancer. 1979;43(1):360-73. PubMed
- Tateishi U, Terae S, Ogata A, et al. MR imaging of the brain in lymphomatoid granulomatosis. AJNR Am J Neuroradiol. 2001;22(7):1283-90. PubMed
- Quintanilla-Martinez L, Swerdlow SH, Tousseyn T, et al. New concepts in EBV-associated B, T, and NK cell lymphoproliferative disorders. Virchows Arch. 2023;482(1):227-244. PubMed
- Yang M, Rosenthal AC, Ashman JB, et al. The Role and Pitfall of F18-FDG PET/CT in Surveillance of High Grade Pulmonary Lymphomatoid Granulomatosis. Curr Probl Diagn Radiol. 2021;50(3):443-449. PubMed
- Frazier AA, Rosado-de-Christenson ML, Galvin JR, et al. Pulmonary angiitis and granulomatosis: radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 1998;18(3):687-710; quiz 727. PubMed
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