脳の寄生虫症 嚢虫・顎口虫・スパルガヌムの画像

海外に滞在歴のある患者さんの頭部MRIで、脳に造影される病変が多発していました。腫瘍でも感染でもなさそうで、寄生虫を疑うと言われました。どんな寄生虫で、画像はどう違うのですか?
中枢神経の寄生虫病は種類によって画像の特徴が分かれます。嚢虫、顎口虫、スパルガヌム、広東住血線虫、肺吸虫を中心に、MRIの見え方と、画像の前に確認したい生食歴・渡航歴を整理します。

先に結論:寄生虫の画像診断は「画像の型」と「食べ物・渡航の病歴」をセットで読む

寄生虫 画像の特徴
有鉤嚢虫(嚢虫症) 嚢胞(内部に頭節が見えることがある)、造影される病変、多房性の嚢胞、石灰化
顎口虫 出血を伴う病変、脊髄炎のパターンが多い(広東住血線虫との比較)
スパルガヌム(裂頭条虫類の幼虫) tunnel sign(トンネル状)、多房性の縁取り造影、数か月後に場所が動く
広東住血線虫 髄膜の造影が主体。画像は特異的でなく、CTは正常なことも多い
肺吸虫 慢性期の石灰化と嚢胞性病変、脳軟化。肺の病歴が手がかり

寄生虫による中枢神経病変:まず何を確認するか

寄生虫が脳や脊髄にいたると、けいれん、頭痛、麻痺、意識障害などが起こります。診断には画像診断に加え、曝露の病歴(旅行・食事)と検査が欠かせません。国際的な放射線科医の共同レビューでは、アメーバ症、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、トキソプラズマ症、肺吸虫症、嚢虫症、包虫症、スパルガヌム症、広東住血線虫症、顎口虫症、トキソカラ症、ハエ幼虫症の12の神経寄生虫症について、分布、生活環、診断検査、画像所見がまとめられています(Robertson 2025)。

画像診断だけで種類まで決めることは難しいため、依頼票に書かれた流行地域への滞在歴、生の貝・魚・肉などの食事歴、免疫抑制の有無を確認します。ここでは、画像で見る機会があるものを5つに絞って整理します。

有鉤嚢虫症(嚢虫症)

神経嚢虫症は、有鉤条虫の幼虫が中枢神経に入って起こる病気です。診断基準(2017年の改訂版)では、神経画像が診断に必須で、他の情報は間接的な証拠とされています。画像の主な基準は、頭節のない嚢胞性病変、造影される病変、多房性の嚢胞、石灰化で、水頭症や軟膜の造影は副次的な基準です。嚢胞の中に頭節を示す所見があれば確実とされ、治療後に嚢胞が消える・単独の造影病変が自然に消えるなどは、診断を確かめる所見になります(Del Brutto 2017)。

詳しい画像の見方は有鉤嚢虫症(脳有鉤嚢虫症)の画像診断で解説しています。石灰化が目立つときは脳の石灰化の鑑別疾患も参考になります。

顎口虫症(神経顎口虫症)

顎口虫症は、顎口虫(Gnathostoma)の第3期幼虫による食物由来の人獣共通感染症です。アジアとラテンアメリカに流行地がありますが、中枢神経に入る神経顎口虫症は、ほとんどがタイからの報告で、ヨーロッパでは旅行者の症例も報告されています(Katchanov 2011)。

顎口虫症15人と広東住血線虫症12人を比べた検討では、顎口虫症で脳内出血と脊髄炎のパターンが有意に多く、広東住血線虫症では特異的な所見が乏しく、CTが正常な人が大半でした(Kanpittaya 2012)。原因不明の脳内出血や脊髄炎で、流行地での生食歴がある場合に思い出したい病気です。

スパルガヌム症(脳スパルガヌム症)

スパルガヌム症は、裂頭条虫類の幼虫(スパルガヌム)が脳に入る病気です。MRIの特徴はtunnel sign(トンネル状の線状の造影)と多房性の縁取り造影、そして病変が移動することです。14人を12〜38か月追跡した検討では、最初の病変も移動した病変もtunnel signと多房性の縁の造影を示し、移動は初回MRIの4〜18か月後に14病変すべてで見られました。うち3病変は22〜38か月後にもう一度移動し、ほとんどは同じ半球内の近い場所への移動でした(Li 2013)。

脳スパルガヌム症12人(うち4人は生きた虫体を確認)の検討では、worm-body sign(虫体の形)、tunnel sign、migration sign(移動)がいずれも約4割〜6割で見られ、脳実質の浮腫は83.3%、白質の変性は91.7%でした。生きた虫体のいた4人では、worm-body signとtunnel signが75%に見られました(Liao 2016)。

症例 33歳女性 脳スパルガヌム症

脳スパルガヌム症 造影MRI tunnel sign と治療後の縮小
引用:Zhu Y, et al. BMC Infect Dis 2019(Figure 2)、CC BY 4.0(PMC6712767)

頭痛の発症時の造影MRI(a、b)で、右前頭葉に不整な造影病変と周囲の浮腫(a)、両側の大脳に及ぶtunnel sign(b)が見られます。治療後の造影MRI(c、d)では、不整な造影病変は明らかに縮小し、tunnel signはほとんど見えなくなっています。

広東住血線虫症(好酸球性髄膜炎)

広東住血線虫(Angiostrongylus cantonensis)は、東南アジアや太平洋地域にいる寄生虫です。中間宿主を生で食べたり、幼虫の付いた野菜を食べたりして感染します。26人を調べた台湾の検討では、脳MRIの所見は正常1人、軟膜の造影21人、T2強調像の高信号11人、結節状の造影1人と非特異的でした。T2高信号は、末梢血の好酸球増多、脳脊髄液の好酸球10%以上、脳脊髄液の抗体の存在と関連し、MRIが臨床評価に追加の情報を与えないとも結論されています(Tsai 2012)。

つまり、MRIで軟膜の造影があっても決め手にならず、髄液の好酸球や抗体の検査と、生の貝・カタツムリ・野菜などの摂取歴が診断の中心になります。軟膜の造影の読み方は髄膜播種(癌性髄膜炎)と共通する部分があります。造影が必要な場面は頭部CT・MRIで造影が必要なときも参考にしてください。

脳肺吸虫症

肺吸虫症は、淡水のカニなどの生食で感染する寄生虫病で、肺の病変が有名です。肺の画像は肺吸虫症のCT画像診断で解説しています。脳に入る脳肺吸虫症では、慢性期に石灰化や嚢胞性病変が見られます。韓国の80歳男性の報告では、60年前に肺吸虫症にかかり、45歳からてんかんがあり、MRIで右側頭後頭部の石灰化、嚢胞性病変、脳軟化の変化を認めました。抗肺吸虫IgG抗体が強い陽性で、慢性の脳肺吸虫症による認知機能の低下が考えられました(Moon 2022)。肺の病歴が、脳病変を読む手がかりになります。

画像の見分け方:整理表

見えた所見 考える寄生虫 聞きたい病歴
嚢胞に頭節、石灰化、造影される小病変が多発 嚢虫症 流行地域の滞在歴、家族に条虫保有者がいないか(Del Brutto 2017)
脳内出血や脊髄炎 顎口虫症 流行地での滞在歴・食事歴(報告はタイが多い)
tunnel sign、移動する造影病変 スパルガヌム症 流行地での滞在歴・食事歴
軟膜の造影、髄液の好酸球 広東住血線虫症 生の貝・カタツムリ・野菜の摂取
石灰化と嚢胞、肺の既往 肺吸虫症 淡水のカニの生食、肺吸虫症の既往

嚢虫症と顎口虫症、広東住血線虫症、スパルガヌム症で見られる画像の傾向は上のとおりですが、画像はあくまで病歴・血清検査と組み合わせる補助的な材料です。画像の所見だけで寄生虫と決めず、腫瘍・膿瘍・結核などの感染症との鑑別も続けます(Robertson 2025)。

疑ったあとの流れ:画像と検査をどうつなぐか

寄生虫症が鑑別に挙がったときは、画像の所見を病歴と検査につなげる文章をレポートに残すことが役に立ちます。診断基準は疾患ごとに、病歴(流行地・食事)、臨床症状、神経画像、検査の組み合わせで作られています。たとえば神経顎口虫症では、疫学・臨床・神経画像・検査所見に基づく診断基準が提案され(Katchanov 2011)、神経嚢虫症では抗体または抗原の検査が曝露の指標として位置づけられています(Del Brutto 2017)。広東住血線虫症では髄液の好酸球や抗体の有無が画像の所見と関連していました(Tsai 2012)。

レポートの例としては、『多発する嚢胞と石灰化があり、嚢虫症を含む感染性病変を鑑別に挙げる。流行地の滞在歴と血清検査の確認が望ましい』のように、画像の所見、鑑別、次に必要な情報の3点を分けて書くと、依頼医が次の検査を選びやすくなります。

研修医向け:読影チェックリスト

  • 依頼票で流行地域の滞在歴・生食歴・免疫抑制の有無を確認する
  • 嚢胞の内部に頭節(点状の構造)がないか、石灰化の有無と分布を見る
  • 脳内出血や脊髄炎では、原因不明のときに顎口虫症を思い出す
  • 造影MRIのtunnel signや移動する病変は、スパルガヌム症のヒント。前回画像と比べる
  • 軟膜の造影だけでは決め手にならないことを知る(広東住血線虫症)
  • 腫瘍・膿瘍・結核・他の感染症と、造影パターンを分けて書く

よくある疑問(Q&A)

Q. 寄生虫の病気は、日本でも起こりますか?
A. 肺吸虫症のように、国内でもカニなどの生食で感染する寄生虫病があります。海外で感染して帰国後に発症する例もあります。生の食材の摂取や流行地への渡航のあとに、頭痛・けいれん・麻痺などが出たら、受診時に忘れずに伝えてください。

Q. MRIで寄生虫の種類までわかりますか?
A. 嚢虫症のように嚢胞内の頭節が見える場合などを除き、画像だけで種類を決めるのは難しいです。広東住血線虫症のMRIは非特異的で、臨床評価に追加の情報を与えないという報告もあります(Tsai 2012)。

Q. 病変が移動することはありますか?
A. スパルガヌム症では、MRIで病変が数か月〜1年以上のあいだに移動することが報告されています(Li 2013)。前回の画像と並べて比べることが診断の手がかりになります。

Q. 昔の感染が、何十年もあとの症状の原因になることはありますか?
A. 韓国の報告では、60年前に肺吸虫症にかかった80歳男性で、脳の石灰化と嚢胞性病変、脳軟化があり、長く続くてんかんと認知機能の低下との関連が考えられました(Moon 2022)。過去の寄生虫症の病歴も、画像を読むときの手がかりになります。

あわせて読みたい:脊柱管内の髄外造血とは、減圧症(潜水病)の画像診断、高所脳浮腫(HACE)のMRI所見

参考文献

  1. Robertson Q, Ferraro M, Chen X, et al. Neuroparasitic infections: imaging features and diagnostic algorithms. Br J Radiol. 2025;98(1172):1197-1208. PubMed
  2. Del Brutto OH, Nash TE, White AC Jr, et al. Revised diagnostic criteria for neurocysticercosis. J Neurol Sci. 2017;372:202-210. PubMed
  3. Katchanov J, Sawanyawisuth K, Chotmongkoi V, et al. Neurognathostomiasis, a neglected parasitosis of the central nervous system. Emerg Infect Dis. 2011;17(7):1174-80. PubMed
  4. Kanpittaya J, Sawanyawisuth K, Intapan PM, et al. A comparative study of neuroimaging features between human neuro-gnathostomiasis and angiostrongyliasis. Neurol Sci. 2012;33(4):893-8. PubMed
  5. Li YX, Ramsahye H, Yin B, et al. Migration: a notable feature of cerebral sparganosis on follow-up MR imaging. AJNR Am J Neuroradiol. 2013;34(2):327-33. PubMed
  6. Liao H, Li D, Zhou B, et al. Imaging characteristics of cerebral sparganosis with live worms. J Neuroradiol. 2016;43(6):378-383. PubMed
  7. Tsai HC, Tseng YT, Yen CM, et al. Brain magnetic resonance imaging abnormalities in eosinophilic meningitis caused by Angiostrongylus cantonensis infection. Vector Borne Zoonotic Dis. 2012;12(2):161-6. PubMed
  8. Moon SW, Kim T. Cerebral Paragonimiasis Presenting with Dementia. Korean J Parasitol. 2022;60(5):353-355. PubMed

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