
先に結論:関節内の構造を造影剤で浮かせる検査。通常のMRIで足りないときに選ぶ
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何をする検査か | 関節の中に造影剤を入れて、軟骨・関節唇・靱帯・遊離体などの関節内の構造を見やすくする |
| 種類 | X線の関節造影、CT関節造影、MR関節造影。MR関節造影には直接法(関節に注射)と間接法(静脈注射)がある |
| MR関節造影が役立つ場面 | 肩の関節唇損傷(Bankart損傷、SLAP損傷)、腱板の部分断裂、股関節唇損傷など |
| 精度の目安 | 肩の関節唇損傷の感度は、MR関節造影88%、MRI 76%(Smith 2012) |
| 安全性 | 重い合併症はまれ。検査後数時間は関節の痛みが一時的に強くなることがある(Saupe 2009) |
関節造影とは
関節造影(arthrography)は、関節の中に造影剤を入れて、関節内の構造を写し出す検査です。X線で撮るものだけでなく、CTで撮るCT関節造影、MRIで撮るMR関節造影があります。関節の軟骨、関節円板や関節唇、関節内や関節周囲の靱帯の異常、関節内の遊離体(関節ねずみ)など、関節の中の病変が対象になります。
以前は、関節の評価のスクリーニングとして広く行われていた時期がありました。いまはMRIが使える施設では、関節造影を選ぶ場面は限られています。通常のMRIで評価できない関節内の細かい構造を見たいとき、MRIが使えないとき、関節の容積を評価したいとき(癒着など)が主な場面です。
なぜ造影剤を入れると見やすくなるのか
ふだんの関節は、関節液が少しあるだけで、関節唇や軟骨が骨に接しています。そこへ造影剤を注入して関節をふくらませると、関節鏡の検査のときのように関節腔が広がり、関節唇の下に造影剤がしみ込んで、傷や剥がれた部分を満たして見せてくれます(Boutin 2018)。
| 方法 | 造影剤 | 特徴 |
|---|---|---|
| X線の関節造影(単純造影) | ヨード造影剤 | 関節内の交通や遊離体、関節腔の形を見る |
| X線の二重造影 | ヨード造影剤+空気 | 軟骨や半月板の表面を見る。気泡が診断の妨げになることがある |
| CT関節造影 | 薄めたヨード造影剤(二重造影が向く) | 多方向の再構成が容易になり、MR関節造影に近い情報が得られると期待されている。MRIが使えない人に |
| MR関節造影(直接法) | 薄めたガドリニウム造影剤を関節内へ | 肩の関節唇、腱板、股関節唇の評価 |
| MR関節造影(間接法) | 静脈から注射した造影剤が関節に移行 | 関節穿刺をしない簡便な方法 |
X線の関節造影では、ヨード造影剤だけの単純造影と、空気を併用する二重造影を、部位と目的で使い分けます。単純造影は造影剤が濃いと軟骨や骨の病変が見えにくくなり、二重造影は気泡が邪魔になることがあります。
通常のMRIとの違い:数字でみる
MR関節造影と通常のMRIの精度の差は、部位ごとに数字が出ています。
| 部位 | 報告された数字 | 読み方 |
|---|---|---|
| 肩・関節唇損傷 | MR関節造影は感度88%・特異度93%、MRIは感度76%・特異度87%(60研究・4,667肩のメタ解析、Smith 2012) | MR関節造影が「やや優れる」にとどまる |
| 肩・腱板断裂 | 全層断裂、部分断裂ともにMR関節造影が最も感度・特異度が高い。ROC曲線下面積はMR関節造影0.935、超音波0.889、MRI 0.878(65研究、de Jesus 2009) | MRIと超音波の差は有意ではない |
| 股関節・関節唇損傷 | MR関節造影は感度0.89・特異度0.69、MRIは感度0.80・特異度0.77。3.0 T MRIだけで見ると感度0.87・特異度0.77(22研究、Zhang 2022) | 3.0 T MRIがあれば、MR関節造影との差は小さい |
肩ではMR関節造影の優位がはっきり出ていますが、股関節では、3.0 TのMRIがMR関節造影に近い感度を示し、特異度はむしろ高いと報告されています(Zhang 2022)。装置の進歩で、MR関節造影を選ぶ場面は変わってきています。また、研究ごとに診断基準や撮像条件、手術所見の確認方法が異なる点にも注意します(Smith 2012)。
肩のMR関節造影:何を見るか
肩では、関節唇、上腕二頭筋腱の付着部、腱板の関節面の3つを順に見ます。
| 見る所 | 異常のサイン |
|---|---|
| 前下方の関節唇 | 関節唇が関節窩から剥がれ、造影剤が間に入り込む(Bankart損傷)。腕を外転・外旋した姿勢(ABER位)で撮ると、剥がれた関節唇が見えやすい |
| 上方の関節唇 | SLAP損傷。冠状断で外側に曲がった線状の高信号、枝分かれした線状の高信号、関節窩から離れる全層の剥離、傍関節唇嚢胞(Boutin 2018) |
| 腱板 | 関節腔の造影剤が肩峰下滑液包へ流れ込めば、腱板の全層断裂のサイン(棘上筋腱断裂による交通) |
SLAP損傷の診断基準では、関節唇と関節窩の間のすき間の幅が、通常のMRIでは2 mmを超えるとき、MR関節造影では3 mmを超えるときに全層の剥離とする基準が引用されています(Boutin 2018)。通常のMRIとMR関節造影では、同じ「全層の剥離」でも判断に使うすき間の幅が違う点を、読影の前に確認しておきます。
正常変異との区別が大切
MR関節造影では、正常でも関節唇のまわりに造影剤が入り込む場所があります。関節唇が前上方の部分だけ、なめらかな辺縁で関節窩から離れて見えるsublabral foramen、中関節上腕靱帯が太く、前上方の関節唇が欠けて見えるBuford complexなどです。これらは関節唇損傷と取り違えやすい所見です。見分け方は肩の関節唇・関節上腕靱帯の正常変異にまとめています。
症例 14歳男性 正常な関節唇(MR関節造影)

引用:Boutin RD, Marder RA. MR Imaging of SLAP Lesions. Open Orthop J. 2018;12:314-323 (Fig. 2)。PMC CC BY 4.0(図は加工していません)
引用元の説明では、14歳の男性アスリートで、明らかに正常な関節唇の例です。Aの冠状断とBの横断の脂肪抑制T1強調MR関節造影像で、関節唇は低信号の線維軟骨で、造影剤は関節唇の中にも、関節唇と関節窩の境目にも入り込んでいないと記載されています。まず「正常」の見え方を頭に入れる例です。
症例 SLAP損傷(MR関節造影)

引用:Boutin RD, Marder RA. MR Imaging of SLAP Lesions. Open Orthop J. 2018;12:314-323 (Fig. 7)。PMC CC BY 4.0(図は加工していません)
引用元の説明では、上方の関節唇が関節窩の縁から線状の信号で分けられている「全層の剥離」の例です。AとBは脂肪抑制T1強調のMR関節造影の冠状断で、Cは関節造影をしていない脂肪抑制T2強調像です。関節造影ありとなしの見え方の差を見比べられる図です。反復性の肩関節脱臼の画像は肩関節脱臼の画像診断にあります。
股関節のMR関節造影
股関節では、関節唇(大腿骨頭を取り巻く軟骨のふち)の損傷、関節軟骨の損傷が対象です。上の表のとおり、MR関節造影の感度は高めですが、特異度は通常のMRIより低めでした(Zhang 2022)。関節の中の細かな信号の変化を、すべて断裂と読まないことが大切です。股関節痛の鑑別全体は単純X線で異常のない股関節痛の鑑別診断にまとめています。
CT関節造影:MRIが使えないとき
脳動脈瘤のクリップなどでMRIが使えない場合に、CT関節造影が選ばれます。造影剤が濃いとアーチファクトが出るため、薄めて、少量の造影剤と空気の二重造影にするのが適しています。
肩の関節唇損傷47人でMR関節造影とdual-energy CT関節造影を比べた研究では、関節唇損傷を手術所見で確認した38人のうち、感度と特異度は、MR関節造影で84.2%と77.8%、通常設定のCT関節造影で84.2%と77.8%(読影者1)または84.2%と88.9%(読影者2)、dual-energy CT関節造影で89.5%と88.9%、92.1%と88.9%でした。MR関節造影に対する有意な差はありませんでした(Foti 2020)。47人という小規模な研究のため、結果は確定ではなく、MRIが使えない人に代わりの選択肢があることを示す数字として読みます。
検査の流れ・合併症・注意点
関節造影は、消毒、局所麻酔のあと、X線透視、CT、超音波などで針先を確認しながら関節内へ造影剤を入れ、撮影します。針の周囲に造影剤がたまらず、関節の中へ広がることが、関節内に入った証拠です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 禁忌 | 穿刺する部位や針の通り道に感染がある場合。造影剤の重い過敏反応の既往がある人は、MRIで済む場面が多い |
| 合併症の頻度 | 経験豊富な放射線科医134人の調査(約262,000件の関節造影)で、感染45例、アナフィラキシー8例、血管の合併症5例、死亡例なし。関節内ガドリニウムを使った約13,300件のMR関節造影では、反応は6例で、すべて軽症(Hugo 1998) |
| 検査後の痛み | 1,085人の前向き調査で、痛みは注入の4時間後に最も強く、1週間後には元に戻った。30歳未満で痛みが強かった。感染や重い副作用はなかった(Saupe 2009) |
| ガドリニウムの関節内投与 | 論文では適応外使用(off-label)と記されている(Kralik 2018、米国の研究)。関節内に使った31人のMR関節造影後の脳MRIで、ガドリニウム沈着を示す信号の差はなかった(同研究) |
| 検査後の過ごし方 | 造影剤による一時的な関節の炎症症状があることを説明し、翌朝までは激しい運動を避ける |
ガドリニウム造影剤の関節内投与の扱いや実施の有無は、国や施設によって異なります。検査の説明は、検査施設の案内と担当医の説明に従ってください。検査後に、関節の強い痛みや腫れ、熱が続くときは、医療機関に連絡してください。
読影のチェックリスト(研修医向け)
| 順番 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 造影剤が関節内に入っているか(針先の周囲に漏れていないか) |
| 2 | 関節がふくらんでいるか(ふくらむと関節唇の下へ造影剤が入り込みやすくなる) |
| 3 | 関節唇や軟骨の中、あるいは下へ造影剤が入り込んでいないか |
| 4 | それが正常変異(sublabral foramen、Buford complexなど)の位置ではないか |
| 5 | 造影剤が関節の外へ漏れていないか(肩では肩峰下滑液包、手関節では腱鞘など) |
| 6 | 二重造影では、気泡と遊離体・石灰化を取り違えていないか |
| 7 | 撮像の姿勢(肩ならABER位)を追加すると、見やすくなる所見はないか |
肩のMRIの撮像と断面の見方は肩のMRIの撮影方法と各断面で見るべきポイントにまとめています。
よくある疑問(Q&A)
Q. 通常のMRIで異常がなければ、MR関節造影は不要ですか?
A. 症状と疑う病気によります。肩の関節唇損傷では、MR関節造影のほうがやや感度が高いと報告されています(Smith 2012)。股関節では3.0 TのMRIで近い感度が得られるとの報告もあります(Zhang 2022)。検査を選ぶのは担当医です。
Q. 検査後、関節が痛くなるのは異常ですか?
A. 検査後数時間で痛みが強くなることはあり、1週間で元に戻るのが一般的と報告されています(Saupe 2009)。痛みが続く、腫れる、熱が出るなどのときは、医療機関に連絡してください。
Q. 造影剤が脳に残らないか心配です。
A. 関節内投与を受けた31人の検討では、脳MRIでガドリニウム沈着を示す信号の差は見つかりませんでした(Kralik 2018)。少人数の後ろ向きの研究なので、気になる点は施設の説明を聞いてください。
Q. MRIが使えない場合はどうなりますか?
A. CT関節造影が選択肢になります。肩の関節唇損傷での比較では、MR関節造影との間に有意な差はありませんでした(Foti 2020)。
参考文献
- Smith TO, Drew BT, Toms AP. A meta-analysis of the diagnostic test accuracy of MRA and MRI for the detection of glenoid labral injury. Arch Orthop Trauma Surg. 2012;132(7):905-19. PubMed
- de Jesus JO, Parker L, Frangos AJ, et al. Accuracy of MRI, MR arthrography, and ultrasound in the diagnosis of rotator cuff tears: a meta-analysis. AJR Am J Roentgenol. 2009;192(6):1701-7. PubMed
- Zhang P, Li C, Wang W, et al. 3.0 T MRI is more recommended to detect acetabular labral tears than MR Arthrography: an updated meta-analysis of diagnostic accuracy. J Orthop Surg Res. 2022;17(1):126. PubMed
- Boutin RD, Marder RA. MR Imaging of SLAP Lesions. Open Orthop J. 2018;12:314-323. PubMed
- Foti G, Mantovani W, Catania M, et al. Evaluation of glenoid labral tears: comparison between dual-energy CT arthrography and MR arthrography of the shoulder. Radiol Med. 2020;125(1):39-47. PubMed
- Hugo PC 3rd, Newberg AH, Newman JS, et al. Complications of Arthrography. Semin Musculoskelet Radiol. 1998;2(4):345-348. PubMed
- Saupe N, Zanetti M, Pfirrmann CW, et al. Pain and other side effects after MR arthrography: prospective evaluation in 1085 patients. Radiology. 2009;250(3):830-8. PubMed
- Kralik SF, Singhal KK, Frank MS, et al. Evaluation of Gadolinium Deposition in the Brain After MR Arthrography. AJR Am J Roentgenol. 2018;211(5):1063-1067. PubMed
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