関節唇および肩甲上腕靱帯の正常変異

  • 関節唇および肩甲上腕靱帯には正常変異が多い。
  • あたかも関節唇損傷に見えてしまうので注意を要する。
  • 正常変異はいずれも関節唇の上部〜前上部に見られ、関節唇下間隙(sublabral recess)、関節唇下孔/遊離(sublabral foramen/hole)、Buford complex(関節唇欠損+太い中関節上腕靱帯)が知られている。

関節唇下間隙(sublabral recess)

  • 上腕二頭筋腱付着部と複合する関節唇上部は関節窩との付着部位に変異がある。
  • これは肩甲関節窩と関節唇の間に隙間があるもの。
  • 関節唇上部損傷(SLAP lesion)との鑑別が問題となる。線状で平滑なら正常

症例

引用:10.5334/jbr-btr.1467

上腕関節唇の内側に関節軟骨の輪郭をたどる滑らかな高信号があり、上腕二頭筋腱の付着部の後方に延長は認めません(A)。

この溝は、横断像でも確認できます(B)。

関節唇下間隙(sublabral recess)を疑う所見です。

関節唇下孔/遊離(sublabral foramen/hole)

  • 完全に関節唇が関節窩から離断しているもの。(肩甲関節窩と関節唇の間に孔があるもの。)
  • 11〜17%で見られる。
  • 関節唇の前上部(関節唇下間隙よりも前方)で認める。

症例 40歳代男性

 

引用:radiopedia

関節唇前上部と関節窩の間に高信号を認め遊離しているように見えます。

関節唇下孔/遊離(sublabral foramen/hole)を疑う所見。

Buford complex(関節唇欠損+太い中関節上腕靱帯)

  • 関節唇前上部が本来見える1-3時方向で欠損(小さく残っていることもある)と索状の肥厚した中肩甲上腕靭帯(MGHL)が併存しているもの。
  • 1.5%の頻度で見られる。

症例 40歳代男性

引用:radiopedia

上関節唇を 1 ~ 3 時の位置に認めず、肥厚した索状の中関節上腕靭帯 (MGHL) で覆われています。

Buford complexを疑う所見。

症例 18歳男性

引用:radiopedia

上関節唇を認めず、肥厚した索状の中関節上腕靭帯 (MGHL) で覆われています。

Buford complexを疑う所見。

 

関連記事:SLAP lesionの分類とMRI画像診断のポイント

参考文献:

  • 骨軟部疾患の画像診断第2版 P161
  • 新 骨軟部画像診断の勘ドコロ P203
  • 画像診断 Vol.35 No.11 臨時増刊号2015 P28
  • 画像診断 Vol.33 No.2 2013 P176

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