先に結論:X線で異常のない股関節痛

  • X線で異常がない股関節痛では、MRIで不顕性骨折(特に高齢者の大腿骨頸部・恥骨・仙骨)・大腿骨頭壊死・一過性骨髄浮腫・化膿性関節炎を探します
  • 関節の外では関節唇損傷・滑液包炎・ガングリオン・腱の付着部の障害、さらに骨盤内病変(子宮内膜症など)や腰椎からの関連痛も考えます
  • 関節唇損傷はMRIで関節唇に入り込む高信号として見え、3T MRIはMR関節造影に近い感度です
  • 左右を比べて関節液や骨髄浮腫を見ること、脂肪抑制T2強調像・STIRで見ることが見落としを減らすコツです

単純X線写真で異常のない股関節痛で考えるべき鑑別診断

・多くはMRIに頼ることになる。高齢者で臨床的に股関節部の骨折が疑われるがX線で明らかな骨折がない場合、約4割にMRIで手術を要する不顕性骨折が見つかったとするメタ解析がある。

●骨病変
・骨挫傷
・不顕性骨折
・大腿骨頭壊死症
・骨髄浮腫症候群。(一過性大腿骨頭萎縮症〔transient osteoporosis of the hip〕・移動性局所骨萎縮症などと呼び名が乱立しているが、2025年のスコーピングレビューでは患者背景・臨床像が共通しており同一の病態と考えられ、「骨髄浮腫症候群」の呼称が最も適切と提案されている。)

●関節病変
・関節水腫→左右を比較せよ。
・化膿性関節炎
・関節唇損傷→変形性股関節症に伴う事が多い。MR関節造影や3T MRIが診断に有用である。

股関節の関節唇損傷のMRI画像所見

・正常の関節唇は寛骨臼のふちの三角形の低信号です。損傷では脂肪抑制プロトン密度強調像・T2強調像で関節唇の中や付け根に入り込む高信号や形の崩れが見え、MR関節造影では造影剤が入り込みます。
・損傷は前上方に多く、そばの傍関節唇嚢胞は損傷の手がかりです。原因として大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)や寛骨臼形成不全が重要です。
・22研究のメタ解析では感度・特異度はMRIで80%・77%、MR関節造影で89%・69%、3T MRIに限ると87%・77%でした(Zhang 2022)。

●関節周囲軟部組織の病変
・ガングリオン→T2WIで非常に高信号。
・滑液包炎→T2WIで非常に高信号。
※これらは脂肪織と隣接している場合は診断が難しいことも稀ではなく、脂肪抑制像でないと診断できないこともある。

●骨盤内病変
・子宮内膜症

※痛みが強い、歩けない、熱があるときは早めに医療機関を受診してください。

症例 60歳代女性(股関節の関節唇損傷と傍関節唇嚢胞)

股関節 関節唇損傷 傍関節唇嚢胞 MRI 脂肪抑制プロトン密度強調像
引用:Radiopaedia(Acetabular labral tear and paralabral cysts)

長く続く左股関節痛の症例の脂肪抑制プロトン密度強調像(横断)です。左の寛骨臼の前縁に接して、強い高信号の傍関節唇嚢胞があります。前方の関節唇損傷に伴うもので、右側にも小さな嚢胞を伴う関節唇損傷がありました。大腿骨頭の被覆がやや浅く、背景に寛骨臼形成不全が疑われています。

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参考文献

  1. Haj-Mirzaian A, Eng J, Khorasani R, et al. Use of Advanced Imaging for Radiographically Occult Hip Fracture in Elderly Patients: A Systematic Review and Meta-Analysis. Radiology. 2020;296(3):521-531. PubMed
  2. Zhang P, Li C, Wang W, et al. 3.0 T MRI is more recommended to detect acetabular labral tears than MR Arthrography: an updated meta-analysis of diagnostic accuracy. J Orthop Surg Res. 2022;17(1):126. PubMed
  3. Hasvik E, Haugen AJ, Grøvle L. Clinical characteristics of patients with bone marrow edema syndrome, transient osteoporosis or migratory osteoporosis: a scoping review. Bone. 2025;198:117535. PubMed
  4. Griffin DR, Dickenson EJ, O’Donnell J, et al. The Warwick Agreement on femoroacetabular impingement syndrome (FAI syndrome): an international consensus statement. Br J Sports Med. 2016;50(19):1169-76. PubMed

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