高濃度乳房とは 4分類・見落とし・追加検査

乳がん検診のマンモグラフィで「高濃度乳房です」と言われました。病気なのでしょうか? がんを見落とされる心配はありませんか?
高濃度乳房は病気ではなく、乳房の「構成」(乳腺と脂肪の割合)を表す言葉です。ただ、乳腺が多いとマンモグラフィでは病変が見えにくくなることがあり、それが気にされる理由です。分類の意味、見落としが起こる理由、追加の検査の考え方を整理します。

先に結論:高濃度乳房は異常ではない。ただしマンモグラフィでは見えにくいことがあり、追加検査は個人の状況で考える

項目 ポイント
何か 乳腺(と線維)が多く、脂肪が少ない乳房の構成。病気の名前ではない
分類 BI-RADS第5版では4区分(a〜d)。日本の「脂肪性・乳腺散在・不均一高濃度・高濃度」と順に対応する
困る点 白く写る乳腺が病変を隠し(マスキング)、マンモグラフィの感度が下がる
追加検査 エコー、MRIなどが研究されている。メリットと不利益があり、全員に必要とは限らない
受診の目安 しこり・乳頭からの分泌物・皮膚の変化など、気になる変化があれば検診を待たず医療機関へ

高濃度乳房とは

乳房は、母乳を作る乳腺、それを支える線維組織、そして脂肪でできています。マンモグラフィ(乳房専用のX線検査)では、乳腺や線維は白く、脂肪は黒く写ります。白い部分(乳腺・線維)が多い乳房を「高濃度乳房」(デンスブレスト)と呼びます。

これは体質や年齢による「構成の違い」で、それ自体は病気ではありません。乳腺は思春期から発達し、授乳期にもっとも多くなり、閉経後は縮んで脂肪に置き換わっていくのが一般的な経過です。そのため、若い人ほど白く(高濃度に)写る傾向があります。乳房の大きさや触った感じから、構成を自分で知ることはできません。マンモグラフィの画像を見て判定します。

乳房の構成4分類

マンモグラフィでは、乳房の構成を4つの区分で表します。米国放射線学会のBI-RADS第5版では、脂肪が多い順に「a・b・c・d」の記号を使います。日本の検診では、これを次のような名称で表すことが一般的です。

BI-RADS第5版 英語の区分名 日本での区分名 イメージ
a almost entirely fatty 脂肪性 ほぼ脂肪。白い乳腺がごく少ない
b scattered areas of fibroglandular density 乳腺散在 乳腺が点々と散らばっている
c heterogeneously dense 不均一高濃度 乳腺が多く、濃淡にむらがある。小さな病変が隠れうる
d extremely dense 高濃度 乳腺がほぼ全体を占める

英語の区分名と順序は、日本の健康な女性を対象にした研究でもこの4区分(almost entirely fatty、scattered fibroglandular、heterogeneously dense、extremely dense)として使われています。その研究では、heterogeneously dense(c)とextremely dense(d)を合わせて「dense breast」としていました(Ochi 2022)。つまり「高濃度乳房」という言葉は、cとdをまとめて指す場合と、dだけを指す場合があるため、結果票にどの区分と書かれているかを確認することが大切です。

なお、区分は撮影した画像を見た評価で決まるため、cとbの境目などは読む人や撮影条件で変わることがあります。日本の乳房の構成の区分ごとの線引きの数値などは、ここでは書きません。

症例 70歳代女性 高濃度乳房の例

高濃度乳房 マンモグラフィ 両側MLO像
引用:Radiopaedia(Homogeneously dense breast tissue)

左右のマンモグラフィ(MLO像)をつなげた画像で、両側の乳房のほぼ全体が白く写っています。症例ページでは、高濃度の乳房(dense breasts)の例として紹介されています。

なぜ見落としが起こるのか:マスキング

がんや腫瘤もマンモグラフィでは白く写るため、白い乳腺の中に白い病変が紛れて見えなくなることがあります。これを「マスキング(隠れ効果)」と呼びます。極めて高濃度(d)の女性は検診を受ける女性のおよそ10%とされ、乳がんになる生涯リスクが高い一方で、第一選択のマンモグラフィの感度はマスキングのため大きく下がります(Nissan 2025)。

さらに、乳腺の割合が高いこと自体が乳がんのリスク因子です。3つの症例対照研究(1112組)では、乳房の中で乳腺が占める割合が10%未満の人に比べ、75%以上の人は乳がんになる危険が4.7倍(オッズ比。95%信頼区間3.0〜7.4)でした。検診で見つかった乳がんでも3.5倍、検診で異常なしとされてから12か月以内に見つかった乳がん(中間期がん)では17.8倍(95%信頼区間4.8〜65.9)でした(Boyd 2007)。つまり、高濃度乳房は「リスクが少し高い」ことと「検診で見つけにくい」ことが重なっています。

日本については、日本の女性は高濃度乳房の人が多く、そのためマンモグラフィの感度が下がるという指摘があります(Uematsu 2024)。

マンモグラフィの基本的な見方はマンモグラフィの石灰化とは、乳管内の早期のがんに見られる所見は非浸潤性乳管癌(DCIS)で解説しています。

追加検査の考え方

マンモグラフィで見えにくい部分を補うために、エコー(超音波)、MRI、造影マンモグラフィなどが研究されています。ただし、どの検査を誰に勧めるかは、乳房の濃度だけでなく、家族歴などのリスクの高さによっても変わります。

追加検査 研究でわかっていること 注意点
MRI オランダの試験(DENSE):50〜75歳、極めて高濃度で、マンモグラフィが正常だった40,373人。MRIに誘った群の中間期がんは1000人あたり2.5、マンモグラフィのみの群は5.0(Bakker 2019) MRIを受けた人でのがん発見率は1000人あたり16.5。一方で偽陽性は1000人あたり79.8、追加精査の的中率は17.4%。招待を受けた人のうち実際に受けたのは59%(Bakker 2019)
エコー(超音波) 日本の試験(J-START):40〜49歳の72,661人。エコーを加えた群では、見つかった乳がんのうち進行がん(病期2以上)が26%、マンモグラフィのみの群は33%(ハザード比0.83)(Harada-Shoji 2026) この試験は乳房の濃度で対象を選んだものではない。エコーは検査する人の技術に影響され、偽陽性による追加検査もありうる
造影マンモグラフィ・短縮MRI・自動乳房エコー 英国の試験(BRAID)の初回の結果:50〜70歳の高濃度でマンモグラフィ陰性の人で、がん発見率は短縮MRI 1000あたり17.4、造影マンモグラフィ19.2、自動乳房エコー4.2(Gilbert 2025) 途中経過の報告で、過剰診断の程度は評価されていない。造影剤の副作用や漏れも報告されている(Gilbert 2025)

いずれの検査にも、がんを早く見つける可能性と、不要な追加検査や心配が増える可能性の両面があります。米国の学会の指針(ACR Appropriateness Criteria、2024年改訂)では、追加検査はその人のリスクの高さと乳房の濃度に応じて考えるとされ、すべての女性でトモシンセシスが検診の感度を高めること、高リスクの女性では濃度にかかわらず乳房MRIが通常適切であることなどが示されています(Paulis 2025)。国や地域で医療制度が違うため、そのまま日本の方針に当てはまるわけではありません。

追加検査として使われるMRIの適応は乳房MRI(乳腺MRI)の適応、乳腺エコーの見え方は乳腺エコーの解剖と内部エコー・後方エコーからの鑑別診断で説明しています。

結果の通知を受けたら

検診の結果に乳房の構成が書かれて届くかどうか、その文面や案内は、自治体や検診施設によって異なります。ここでは具体的な制度や数値には触れません。通知に「高濃度乳房」とあったときに確認したいことは次の点です。

  • 結果票の区分は何か(cとdのどちらか、または日本の区分名のどれか)
  • 「異常なし」と「高濃度」は別の情報で、両方が書かれている場合があること
  • 追加検査を受けられるか、費用や予約はどうなるか(検診施設・自治体で異なる)
  • 家族に乳がんの人がいるなど、リスクが高いと思う事情があるか(主治医や検診施設に伝える)

日常では、乳房の見た目や感触に普段と違う変化がないかを知っておく「ブレスト・アウェアネス」が大切とされています(Uematsu 2024)。しこり、乳頭からの分泌物、皮膚のくぼみや赤みなど気になる変化があれば、次の検診を待たずに医療機関を受診してください。

この記事のまとめ

  • 高濃度乳房は、乳腺が多い乳房の構成を表す言葉で、病気ではない
  • 白い乳腺が白い病変を隠す「マスキング」が起こるため、マンモグラフィでは見えにくいことがある
  • 乳腺の割合が高いこと自体が、乳がんのリスク因子の一つである
  • 追加検査(エコー・MRIなど)には、がんを見つけやすくなる面と、偽陽性や追加の精査が増える面がある
  • 検診の結果票の区分を確認し、追加検査は検診施設や主治医と相談する
  • 気になる変化があれば、検診を待たずに医療機関へ

よくある疑問(Q&A)

Q1. 高濃度乳房だと乳がんになりやすいのですか?

乳腺の割合が高いことは乳がんのリスク因子の一つです。乳腺が占める割合が75%以上の人は、10%未満の人に比べて4.7倍(オッズ比)でした(Boyd 2007)。ただし、これは集団での比較で、高濃度乳房の人のすべてが乳がんになるわけではありません。

Q2. 乳房の濃度は変わりますか?

乳腺は年齢とともに変化し、閉経後は脂肪に置き換わっていくのが一般的です。同じ人でも検診ごとに区分が変わることがありますが、読む人や撮影条件で変わることもあります。

Q3. 高濃度乳房と言われたら、追加の検査は全員が受けるべきですか?

全員に必要とは限りません。MRIでは中間期がんが減ったものの、偽陽性も増えました(Bakker 2019)。リスクの高さ、乳房の濃度、受けられる検査の体制によって変わるため、検診施設や主治医に相談してください。

Q4. 高濃度乳房だと、マンモグラフィの検診は意味がないのですか?

意味がないわけではありません。マンモグラフィは乳がん検診の中心の検査です。高濃度では感度が下がるため、必要に応じて他の検査を組み合わせることが検討されます(Nissan 2025)。気になる症状があれば、検診を待たずに医療機関へ相談してください。

あわせて読みたい:超音波(エコー)のアーチファクト

あわせて読みたい:マンモグラフィの読み方の基本

参考文献

  1. Boyd NF, Guo H, Martin LJ, et al. Mammographic density and the risk and detection of breast cancer. N Engl J Med. 2007;356(3):227-36. PubMed
  2. Bakker MF, de Lange SV, Pijnappel RM, et al. Supplemental MRI Screening for Women with Extremely Dense Breast Tissue. N Engl J Med. 2019;381(22):2091-2102. PubMed
  3. Gilbert FJ, Payne NR, Allajbeu I, et al. Comparison of supplemental breast cancer imaging techniques-interim results from the BRAID randomised controlled trial. Lancet. 2025;405(10493):1935-1944. PubMed
  4. Harada-Shoji N, Suzuki A, Ishida T, et al. Cumulative incidence of advanced breast cancer in women aged 40-49 years in the Japan Strategic Anti-cancer Randomised Trial (J-START) of adjunctive ultrasonography: a prespecified secondary analysis. Lancet. 2026;407(10530):784-793. PubMed
  5. Nissan N, Ochoa Albiztegui RE, Fruchtman-Brot H, et al. Extremely dense breasts: A comprehensive review of increased cancer risk and supplementary screening methods. Eur J Radiol. 2025;182:111837. PubMed
  6. Expert Panel on Breast Imaging, Paulis LV, Lewin AA, et al. ACR Appropriateness Criteria® Supplemental Breast Cancer Screening Based on Breast Density: 2024 Update. J Am Coll Radiol. 2025;22(5S):S405-S423. PubMed
  7. Ochi T, Tsunoda H, Yamauchi H, et al. Impact of childbirth history on dense breast in mammographic screening: a cross-sectional study. BMC Womens Health. 2022;22(1):194. PubMed
  8. Uematsu T. Rethinking screening mammography in Japan: next-generation breast cancer screening through breast awareness and supplemental ultrasonography. Breast Cancer. 2024;31(1):24-30. PubMed

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