乳腺超音波による組織特性
- 乳腺超音波では、病変の形態および内部の組織構築を見ることができる。
- 組織によって異なるのは腫瘤の内部エコー、後方エコーである。
後方エコー
- 後方エコーは、腫瘤より深い(腫瘤の向こう側)部位のエコーの性状のこと。腫瘤内部でどれだけ超音波が減衰するかによって見え方は異なる。
- 減衰が少ないのは、水や粘液。細胞も水が多いので細胞密度が高い腫瘤の後方エコーは増強する。
- 一方、減衰が多い=吸収が強いのは線維成分や硝子化したもので、この場合後方エコーは減弱する。
- ちなみに減衰は、吸収、反射、散乱などで起こる。反射により減衰するのは石灰化によるもの。
内部エコー
- 内部エコーは腫瘤内部での超音波の散乱の強さを示すことが多い。
- 散乱が強いものは、小さく、不均一な構造。
- それを低エコーである脂肪組織と比較して、無・(極低)・低・等・高で評価する。
- 乳頭状構造や粘液癌のようなスポンジ様構造は散乱が強い。=高エコーとなる。
こちらにもまとめました。→乳腺エコーとは?わかることは?
腫瘤の後方エコーと内部エコーから見た主な疾患の鑑別診断
後方エコー | ||||
増強 |
不変 |
減弱 | ||
内 部 エ コ ー |
無 | 嚢胞 | ||
極低 | 濃縮嚢胞 | 濃縮嚢胞 | 濃縮嚢胞 硬癌 |
|
低 | 線維腺腫 乳管内乳頭腫 葉状腫瘍 充実腺管癌 非浸潤性乳管癌 |
線維腺腫 乳管内乳頭腫 乳頭腺管癌 非浸潤性乳管癌 |
陳旧性線維腺腫 硬化性腺症 硬癌 浸潤性小葉癌 |
|
等 | 乳管内乳頭腫 粘液癌 |
脂肪腫 過誤腫 |
||
高 | 粘液癌 | シリコン肉芽腫 硬癌 浸潤性小葉癌 |
画像診断vol.33.No9,2013 乳房超音波画像の見方 東野英利子先生を一部改変
症例 70 歳代の女性。偶然右乳房腫瘤を指摘された。
(2008年放射線科診断専門医試験問題38番より引用。)
右D領域に不整形腫瘤を認める。内部は低エコーで、後方エコーは減弱。辺縁はスピキュラ状で、境界部高エコー(halo)像あり。硬癌を疑う所見。
症例 20 歳代の女性。左乳房腫瘤。
2013年放射線科診断専門医試験問題39より引用。
内部低エコー、後方エコーの増強あり。嚢胞や細胞成分多いもの。線維腺腫や葉状腫瘍などを疑う所見。
症例 70歳代女性
(放射線科診断専門医試験問題2010年37より引用)
超音波写真は境界明瞭な充実性腫瘤で、内部エコーレベルは高く、後方エコーが増強している。粘液癌として特徴的な所見である。
症例 60 歳代の女性。左乳房に硬い腫瘤を触知したため来院。
乳腺深部に腫瘤像非形成性病変あり。斑状低エコー所見の内部に点状の高信号が散見されている。乳腺内の斑状、まだら状、または地図状エコーはカテゴリー3に分類され、鑑別に乳腺症、非浸潤性乳管癌などがふくまれる。