
先に結論:石灰化は「形」と「分布」の組み合わせで見る。石灰化があるだけで乳がんとは限らない
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 石灰化とは | 乳房の中にカルシウムがたまったもの。ほとんどは良性の変化 |
| 形(形態) | 典型的な良性・微小円形・淡く不明瞭・多形性・線状。後ろの形ほど悪性の可能性が高まる |
| 分布 | びまん性・領域性・集簇(しゅうぞく)・線状・区域性。乳管に沿う分布は注意 |
| 判定 | BI-RADSのカテゴリーで、経過観察か精密検査(生検)かが決まる |
| 次の検査 | 拡大撮影、超音波、MRI、ステレオガイド下(マンモ画像ガイド下)の生検 |
乳房の石灰化とは
マンモグラフィでは、乳房の石灰化は白い点や線として写ります。石灰化は、乳腺の中や血管の壁、皮膚、脂肪の変化(脂肪壊死など)、嚢胞の中、乳管の分泌物などにできます。健診で指摘される石灰化の多くは良性の変化ですが、乳管の中にできた早期の乳がん(非浸潤性乳管がん)が、石灰化だけで見つかることがあります。そのため、読影では石灰化の「形」と「分布」を丁寧に見ます。
乳管拡張症などの良性疾患でも石灰化は出ます。具体的な見え方は乳管拡張症とマンモグラフィの石灰化で説明しています。
石灰化の形(形態)
マンモグラフィの報告基準であるBI-RADS(第5版)では、石灰化を「典型的な良性」と「疑わしい形態」に分けます。大きな分け方は次のとおりです。
| 分類 | 形の特徴 | おおまかな意味 |
|---|---|---|
| 典型的な良性 | 皮膚、血管、粗大(ポップコーン様)、棒状、円形、輪状(卵殻状)、ミルク状(沈殿)、縫合糸、栄養障害性など | 多くは良性と判断できる |
| 微小円形(点状) | 小さな丸い点 | 多くは良性だが、分布を併せて判断する |
| 淡く不明瞭(amorphous) | 小さく、形がはっきりしない淡い石灰化 | 中間の懸念。分布が重要 |
| 多形性(fine pleomorphic) | 大きさや形がばらばらな細かい石灰化 | 悪性の可能性が高まる形 |
| 線状・分枝状(fine linear) | 細い線状、枝分かれする形 | 悪性の可能性が最も高い形 |
実際の悪性の割合を、生検を受けた人で調べた研究があります。115人の微小石灰化の検討では、全体の悪性の割合は21.7%で、形ごとの悪性の割合は粗大不均一7%(14例中1例)、淡く不明瞭13%(30例中4例)、多形性29%(34例中10例)、線状53%(19例中10例)と、段階的に高くなりました(Burnside 2007)。
日本のマンモグラフィガイドラインの判定表を使い、ステレオガイド下の吸引式生検を受けた101病変を調べた研究では、微小円形の32病変はすべて良性で、悪性の割合は淡く不明瞭25%(36例中9例)、多形性67%(21例中14例)、線状92%(12例中11例)でした(Uematsu 2008)。どちらも生検を受けた人が対象のため、健診で石灰化を指摘された全員の数字ではありません。
良性に多い石灰化のタイプ
「典型的な良性」とされる石灰化には、次のようなものがあります(BI-RADS 第5版の用語)。見慣れた形であれば、精密検査をせずに「カテゴリー2(良性)」として定期検診に戻ることが多いタイプです。
| タイプ | 特徴 | 由来の例 |
|---|---|---|
| 皮膚の石灰化 | 辺縁が明瞭で、中心が抜ける小さな円形 | 皮膚の変化 |
| 血管の石灰化 | 平行に走る線状、管状の石灰化 | 血管壁の石灰化 |
| 粗大(ポップコーン様) | 大きく粗い | 線維腺腫の変性など |
| 棒状 | 太い棒状で、乳頭に向かって走る | 乳管の分泌物 |
| 輪状(卵殻状) | 丸い輪の形 | 脂肪壊死・油性嚢胞、嚢胞の壁 |
| ミルク状(milk of calcium) | 真上からの撮影では淡い円形、真横の撮影では三日月状 | 嚢胞内に沈殿したカルシウム |
ミルク状の石灰化は、真上からの撮影(CC)と、真横からの撮影(ML)で見え方が変わります。この「撮影方向で形が変わる」ことが、良性と判断する手がかりです。
石灰化の分布
形と並んで大切なのが分布です。BI-RADSでは次の5つに分けます。
| 分布 | 見え方 | 目安 |
|---|---|---|
| びまん性(散在性) | 乳房全体にばらばらに散らばる | 両側にあることが多く、良性が多い |
| 領域性 | 大きな範囲(乳管1本より広い)にまとまる | 形と合わせて判断 |
| 集簇(グループ状) | 狭い範囲に数個以上が集まる | 形と合わせて判断 |
| 線状 | 線上に並ぶ | 乳管に沿う分布で注意 |
| 区域性 | 1本の乳管とその枝の広がりに沿って三角形に分布 | 乳管内に広がる病変を疑う |
前述の101病変では、悪性の割合は集簇28%(55例中15例)、区域性40%(43例中17例)、線状67%(3例中2例)でした(Uematsu 2008)。形と分布を組み合わせると差がさらに明確になり、区域性または線状に分布する線状の石灰化は悪性が各100%、区域性の多形性も100%でした(症例数が少ない点に注意)。一方、集簇する微小円形は悪性0%、集簇する淡く不明瞭な石灰化は21%でした(Uematsu 2008)。針生検が必要になった308例を調べた別の研究でも、典型的な良性の形や散在性の分布では悪性は見られませんでした(Shin 2010)。
症例 40歳代女性 区域性の石灰化(非浸潤性乳管がん)

引用:Radiopaedia(Breast calcifications (BI-RADS 4))
初めてのスクリーニングマンモグラフィで、右乳房の中央外側に、淡く不明瞭な石灰化と細かい多形性の石灰化が区域性に分布しており、BI-RADSカテゴリー4とされました。マンモグラフィガイド下のステレオガイド下生検で、コメド型の非浸潤性乳管がんと診断された症例です。
カテゴリーの考え方
BI-RADSでは、石灰化の評価をカテゴリー1〜5(4はA・B・Cに細分)で表します。カテゴリー2は良性、3は「おそらく良性」で短い間隔での経過観察、4は生検を考慮、5は悪性の可能性が極めて高い、という段階です。日本のマンモグラフィガイドラインも、BI-RADSを参考に、形と分布を組み合わせた判定表で石灰化のカテゴリーを決める仕組みです(Uematsu 2008)。
カテゴリー別の悪性の割合を調べた研究があります。BI-RADS第5版の用語で石灰化を点数化した検討(切除された194病変、36%が悪性)では、カテゴリー3で0%、4Aで6.8%、4Bで19.0%、4Cで68.2%、5で100%でした(Youk 2019)。カテゴリーが上がるほど悪性の割合が高く、カテゴリー4の中に幅があることが分かります。
要するに、石灰化の評価は「どんな形の石灰化が、どこに、どのように並んでいるか」を見る作業です。形が悪性寄りで、さらに区域性や線状の分布を示すほど、生検を勧める判断になります。反対に、形が典型的な良性であれば、数が多くても心配は少なくなります。
次に行う検査
| 検査 | 目的 |
|---|---|
| 拡大撮影 | 石灰化の形や分布をより細かく見る。まず行われる追加の撮影 |
| 超音波 | 石灰化に対応する病変(低エコー域、乳管の拡張)があるか。超音波で見える石灰化は、超音波ガイド下の生検も可能 |
| MRI | 造影される病変があるか、範囲の広がりを調べる |
| ステレオガイド下生検 | マンモグラフィでのみ見える石灰化を、画像を見ながら組織を採取する |
MRIの役割
BI-RADSカテゴリー4Bの石灰化108例の検討では、MRIで造影効果がある場合を陽性とすると、悪性の割合が38%から82%に上がり、良性の生検を88%減らせました。ただし、非浸潤性乳管がん4例を見逃しました(Eun 2018)。別の前向き研究(81人)では、MRIで造影されないカテゴリー4Aと4Bの石灰化の悪性の割合は3.8%と8.7%で、浸潤がんや高異型度の非浸潤がんはありませんでした(Park 2026)。MRIで造影されない場合は経過観察を考える根拠になりますが、見逃しがゼロではないため、実際の判断は画像と症状を総合して決めます。乳房MRIの使いどころは乳房MRI(乳腺MRI)の適応、読み方はBI-RADS MRIに基づく乳腺MRI読影法で整理しています。
生検の方法
8人の専門家による国際コンセンサスでは、マンモグラフィまたはトモシンセシスでしか見えない病変にはVAB(吸引式生検)が勧められ、超音波で見える石灰化にもVABが好まれるとされています。また、生検で非浸潤性乳管がんと診断された場合は手術が勧められます(Sanderink 2025)。生検の針の種類や範囲は施設ごとの判断になるため、主治医と相談してください。
乳房全体の画像診断の流れは乳癌治療の変遷と乳房画像診断総論にまとめています。
健診で石灰化と言われたら
- 慌てずに、結果票の「要精検」「カテゴリー」の記載を確認する。精密検査の指示があれば、予定を決めて受診する
- 精密検査では、拡大撮影・超音波・MRIなどで形と分布を詳しく見る
- 「カテゴリー2・3」とされた場合は、経過観察の時期を確認する
- 気になる症状(しこり、乳頭からの分泌など)があれば、検診の結果にかかわらず医療機関を受診する
よくある疑問(Q&A)
Q1. 石灰化があると乳がんですか?
いいえ。多くは良性の変化です。典型的な良性の形や、乳房全体に散らばる分布では悪性は見られませんでした(Shin 2010)。形と分布を組み合わせて評価します。
Q2. 微小円形の石灰化は心配ですか?
形が微小円形だけなら、悪性の割合は低いとされます。ステレオガイド下生検を受けた32病変は全て良性でした(Uematsu 2008)。ただし集簇している場合などは分布も含めて判断するため、医師の指示に従ってください。
Q3. 精密検査では、全員が生検になりますか?
いいえ。拡大撮影や超音波、MRIで良性と判断できれば、経過観察になることがあります。カテゴリー3は短い間隔の経過観察が基本です。
Q4. 石灰化は超音波でも見えますか?
見える石灰化もあります。超音波で見える石灰化は、超音波ガイド下の生検の対象にもなります(Sanderink 2025)。一方、マンモグラフィでしか見えない石灰化には、ステレオガイド下の生検が使われます。
※この記事は一般的な情報です。診断や治療は、担当の医師と相談してください。
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参考文献
- Burnside ES, Ochsner JE, Fowler KJ, et al. Use of microcalcification descriptors in BI-RADS 4th edition to stratify risk of malignancy. Radiology. 2007;242(2):388-95. PubMed
- Uematsu T, Kasami M, Yuen S. Usefulness and limitations of the Japan Mammography Guidelines for the categorization of microcalcifications. Breast Cancer. 2008;15(4):291-7. PubMed
- Shin HJ, Kim HH, Ko MS, et al. BI-RADS descriptors for mammographically detected microcalcifications verified by histopathology after needle-localized open breast biopsy. AJR Am J Roentgenol. 2010;195(6):1466-71. PubMed
- Youk JH, Gweon HM, Son EJ, et al. Scoring System to Stratify Malignancy Risks for Mammographic Microcalcifications Based on Breast Imaging Reporting and Data System 5th Edition Descriptors. Korean J Radiol. 2019;20(12):1646-1652. PubMed
- Eun NL, Son EJ, Gweon HM, et al. The value of breast MRI for BI-RADS category 4B mammographic microcalcification: based on the 5th edition of BI-RADS. Clin Radiol. 2018;73(8):750-755. PubMed
- Park VY, Hippe DS, Kazerouni AS, et al. Multiparametric breast MRI to problem-solve mammographically detected suspicious calcifications. Eur J Radiol. 2026;194:112467. PubMed
- Sanderink WBG, Camps-Herrero J, Athanasiou A, et al. Image-guided biopsy of breast lesions-when to use what biopsy technique. Insights Imaging. 2025;16(1):208. PubMed
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