先に結論:乳房MRIが役立つ場面

  • 乳房MRIは乳がんを見つける感度が最も高い検査ですが、良性も染まりやすく偽陽性が多いため、目的をしぼって使います
  • 良性か悪性かは、造影後の時間信号曲線(洗い出しは悪性寄り)と形(スピキュラ・辺縁の造影・区域性の造影は悪性寄り)を組み合わせて判断します
  • 主な適応は、手術前の広がり診断(乳管内進展・多発・反対側)、BRCA遺伝子変異などハイリスク女性の検診、術前化学療法の効果判定、原発不明のリンパ節転移の原発巣さがし、マンモグラフィ・超音波で判断が難しい場合などです

乳房MRの適応とは

・乳腺MRIは感度に比べて特異度が低いことが知られており(偽陽性が多い)。

・乳房MRIの適応は以下。

存在診断

・ハイリスク女性のスクリーニング。

※遺伝性乳癌・卵巣癌症候群(HBOC):BRCA1/2の遺伝子変異陽性者への予防的治療、MRIによるサーベイランス。

BRCA1あるいはBRCA2遺伝子変異を持つ女性に対する乳房MRIスクリーニング:米国放射線専門医会(ACR)の2023年の勧告(Monticciolo 2023)では、遺伝子変異をもつ女性、生涯リスク20%以上の女性、若いころに胸部へ放射線照射を受けた女性には、25〜30歳から毎年のMRI検診が推奨されています。また、高濃度乳房で追加の検診を希望する女性にもMRIが推奨されています。

・occult primary(原発巣不明癌)の精査。

・術後乳房:
a. 乳房温存術後の残存病変の検出
b. 乳房再建術後の再発評価
c. インプラント乳房内の乳癌検出。

質的診断

・従来の画像で所見が不確定な場合。MRIは癌を検出する感度はもっとも高い。ただし、特異度の幅は広い。

・術後乳房:乳房温存術後の瘢痕と再発の鑑別

術前診断

・乳管内癌の有無とその広がり診断。

・周囲(大胸筋および皮膚)への浸潤の評価。

・同側および対側の多発癌の検出。

→温存療法の範囲決定、乳房切除術への変更に用いられる。

(戸崎光宏ほか、乳癌画像のすべて 臨床画像vol.24.No.4:p453,2008)

化学療法(術前化学療法:NAC)の効果判定

ガイドライン

Magnetic resonance imaging of the breast: recommendations from the EUSOMA working group (2010)
1.治療計画前の病期診断(staging)
2.ハイリスク女性の検診
3.術前化学療法の効果判定
4.豊胸術後・乳房再建後
5.原発不明癌(occult primary)
6.乳癌の再発
7.乳頭分泌
8.従来の画像で所見が不確定な場合
9.炎症性乳癌
10.男性乳房
Breast MRI: guidelines from the European Society of Breast Imaging (2008)
1.従来の画像で所見が不確定な場合 
2.術前staging 
3.原発不明癌患者での乳房の精査 
4.術前化学療法の効果判定 
5.乳房温存手術後の局所再発の除外
6.MRIスクリーニング 
7.人工物の画像 
8.MRIガイド下生検と病変の局在

その後、オランダのDENSE試験で、マンモグラフィ正常の極めて高濃度乳房の女性に追加MRIを行うと中間期癌が半減(1000検診あたり5.0→2.5)することが示され(Bakker 2019)、EUSOBIは2022年、50〜70歳の極めて高濃度乳房の女性に2〜4年ごとのMRI検診を推奨しました(Mann 2022)。

乳房MRIの悪性所見と造影パターン

時間信号曲線(造影パターン)

造影後の信号が上がり続けるⅠ型、横ばいになるⅡ型、ピークの後に下がるⅢ型(washout)に分けると、266病変では次の分布でした(Kuhl 1999)。

曲線 乳癌(101病変) 良性(165病変)
Ⅰ型(漸増型) 8.9% 83.0%
Ⅱ型(プラトー型) 33.6% 11.5%
Ⅲ型(洗い出し型) 57.4% 5.5%

Ⅲ型は悪性を強く示しますが、Ⅰ型の乳癌もあるため、曲線だけでは決めません。

形の所見(悪性の割合)

MRIで見つかり生検された100病変で、悪性の割合が高かった所見です(Liberman 2002)。

  • 腫瘤:スピキュラを伴う辺縁(80%)、辺縁の輪状造影(rim enhancement、40%)、不整形(32%)
  • 非腫瘤性病変:区域性の造影(67%)、集簇した線状・乳管状の造影(31%)
症例 30歳代女性

乳癌(浸潤性乳管癌) 乳房MRI 辺縁の輪状造影
引用:Radiopaedia(Invasive ductal carcinoma)

右乳房のしこりで受診し、浸潤性乳管癌(グレード3)と診断された方の乳房MRIです。不整形で辺縁も不整な二房性の腫瘤があり、造影早期に辺縁が輪状に造影され(rim enhancement)、遅い時相では内部へ向かって造影が広がっています。腫瘤の周りには斑状の非腫瘤性造影が乳頭近くまで続いており、手術前の広がり診断に役立つ所見です。

線維腺腫 乳房MRI
引用:Radiopaedia(Invasive ductal carcinoma)

同じ方の12時方向にある腫瘤は生検で線維腺腫でした。円形で境界明瞭、内部が均一に造影され、時間とともに造影が続くパターンで、上の癌とは形も造影のされ方も異なります。

BPE(背景乳腺の造影)とは

BPE(background parenchymal enhancement)は正常な乳腺が造影される程度で、minimal・mild・moderate・markedの4段階で表します。moderate・markedのBPEは乳癌のリスクの高さと関連したと報告されています(King 2011)。

よくある疑問(Q&A)

Q. 乳房MRIで「おそらく良性(BI-RADS 3)」と言われた場合、がんの確率は?
A. ハイリスク検診のMRIでBI-RADS 3とされた202検査のうち、6%が最終的に悪性で、その多くは0期・Ⅰ期の早期癌でした(Edmonds 2020)。短期間の経過観察MRIで変化を確かめます。

あわせて読みたい:乳房MRIの撮像方法とダイナミックMRI、乳癌治療の変遷と乳房画像診断総論、肉芽腫性乳腺炎とは?乳がんと間違えやすい乳房の腫れ

あわせて読みたい:高濃度乳房(デンスブレスト)とは

参考文献

  1. Mann RM, Kuhl CK, Kinkel K, et al. Breast MRI: guidelines from the European Society of Breast Imaging. Eur Radiol. 2008;18(7):1307-1318. PubMed
  2. Mann RM, Athanasiou A, Baltzer PAT, et al. Breast cancer screening in women with extremely dense breasts recommendations of the European Society of Breast Imaging (EUSOBI). Eur Radiol. 2022;32(6):4036-4045. PubMed
  3. Bakker MF, de Lange SV, Pijnappel RM, et al. Supplemental MRI Screening for Women with Extremely Dense Breast Tissue. N Engl J Med. 2019;381(22):2091-2102. PubMed
  4. Monticciolo DL, Newell MS, Moy L, et al. Breast Cancer Screening for Women at Higher-Than-Average Risk: Updated Recommendations From the ACR. J Am Coll Radiol. 2023;20(9):902-914. PubMed
  5. Sardanelli F, Boetes C, Borisch B, et al. Magnetic resonance imaging of the breast: recommendations from the EUSOMA working group. Eur J Cancer. 2010;46(8):1296-1316. PubMed
  6. Kuhl CK, Mielcareck P, Klaschik S, et al. Dynamic breast MR imaging: are signal intensity time course data useful for differential diagnosis of enhancing lesions? Radiology. 1999;211(1):101-10. PubMed
  7. Liberman L, Morris EA, Lee MJ, et al. Breast lesions detected on MR imaging: features and positive predictive value. AJR Am J Roentgenol. 2002;179(1):171-8. PubMed
  8. King V, Brooks JD, Bernstein JL, et al. Background parenchymal enhancement at breast MR imaging and breast cancer risk. Radiology. 2011;260(1):50-60. PubMed
  9. Edmonds CE, Lamb LR, Mercaldo SF, et al. Frequency and Cancer Yield of BI-RADS Category 3 Lesions Detected at High-Risk Screening Breast MRI. AJR Am J Roentgenol. 2020;214(2):240-248. PubMed

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