
先に結論:マンモグラフィは「左右を並べ、2方向で確かめ、所見を決まった言葉で拾う」。構築の乱れは最も迷いやすい所見
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 2方向 | MLO(内外斜位方向)とCC(頭尾方向)。病変は2方向で位置と形を対応づける |
| 読む順番 | 撮影の質→乳房の構成→左右比較→腫瘤・石灰化・構築の乱れ・非対称→過去画像との比較 |
| 左右比較 | 左右を鏡のように並べる。非対称は4種類(非対称、全体的非対称、局所的非対称、新規または増大する非対称) |
| 構築の乱れ | 腫瘤がないのに乳腺の構造がゆがむ所見。悪性の割合は高いが、放射状瘢痕など良性もある(Bahl 2015) |
| 用語 | 米国放射線学会のBI-RADS第5版の用語に沿って、所見を言葉にする |
マンモグラフィの基本:2方向と乳房の構成
マンモグラフィは、乳房を圧迫板ではさんで撮るX線検査です。標準は、片側の乳房につきMLO(mediolateral oblique、内外斜位方向)とCC(craniocaudal、頭尾方向)の2方向です。左右で合計4枚になります。
| 項目 | MLO(内外斜位方向) | CC(頭尾方向) |
|---|---|---|
| 撮る方向 | 斜め上から下へ | 上から下へ |
| 写る範囲 | 乳房の上部と外側、大胸筋、腋窩まで広く写る | 乳房の内側から外側までが写る。大胸筋は写らないこともある |
| わかる位置 | 上下(おおまかな高さ) | 内外(内側か外側か) |
| 見落としやすい所 | 乳房の下部、腋窩の近く | 乳房の最も内側と奥の部分 |
病変の位置は、CCで内側か外側か、MLOで上か下かを確認し、乳頭からの距離が2方向でほぼ同じかを見て対応づけます。片方の方向にしか見えない影は、乳腺の重なりによる見かけの影のこともあります。
マンモグラフィは、乳房の構成(乳腺と脂肪の比率)によって、病変の見つけやすさが変わります。構成は脂肪性・乳腺散在・不均一高濃度・高濃度の4つに分けます。構成の考え方と追加検査は高濃度乳房(デンスブレスト)とはで解説しています。
読む順番のチェックリスト
見落としを減らすには、毎回同じ順番で見ることが大切です。次の順番をおすすめします。
| 順番 | 確認すること | 理由・コツ |
|---|---|---|
| 1. 撮影の質 | 乳頭が横を向いているか、乳腺が十分に写っているか、MLOで大胸筋が写っているか | 撮影が悪いと、構築の乱れや非対称に見える影が出る |
| 2. 乳房の構成 | 脂肪性〜高濃度のどれか | 高濃度乳房では、乳腺に隠れた病変がある可能性を頭に置く |
| 3. 左右比較 | 左右を鏡のように並べ、乳頭の高さをそろえる | 左右差は病変の最大の手がかり。撮影条件の左右差も頭の中で補正する |
| 4. 所見の拾い上げ | 腫瘤、石灰化、構築の乱れ、非対称、随伴所見 | 1つ見つけても、そこで探すのをやめない |
| 5. 2方向で確認 | MLOとCCで再現するか、位置は合うか | 1方向だけの影は、乳腺の重なりのことがある |
| 6. 過去画像と比較 | 増えた、大きくなった、新しく出た所見はないか | 変化は、1枚だけでは見えない重要な手がかり |
読影を始める前に、読影する環境も整えます。モニターの設定や部屋の明るさ、画面への映り込みは、淡い影の見え方に影響します。
左右比較と「非対称」
左右の乳房を並べて見ると、片側にだけある濃度の差が見つかります。これが非対称です。非対称は乳がんの唯一の所見であることがあるため、軽く見てはいけません(Sickles 2007)。BI-RADSでは、非対称を次の4種類に分けます(Sickles 2007)。
| 種類 | 内容 | 見方 |
|---|---|---|
| 非対称(asymmetry) | 1方向にしか見えない、乳腺様の濃度 | もう一方の方向で再現しなければ、乳腺の重なりを考える |
| 全体的非対称(global asymmetry) | 乳房の1区域以上にわたる、片側だけの広い乳腺濃度の増加 | 腫瘤や構築の乱れを伴わなければ、正常変異のことが多い |
| 局所的非対称(focal asymmetry) | 2方向で見える、限られた範囲の濃度上昇 | 形や辺縁のはっきりした腫瘤ではない。追加の撮影や超音波で確認する |
| 新規または増大する非対称(developing asymmetry) | 以前の画像より、新しく出た、大きくなった、目立つようになった局所的非対称 | 経時的な変化が重要で、BI-RADS第5版で図とともに解説されている(Rao 2016) |
局所的非対称と構築の乱れの違いは、放射状の線(スピキュラ)や乳腺の縁の引き込みがあるかです。迷ったら、拡大撮影や圧迫撮影、超音波などの追加検査で確認します。
腫瘤の見方:形・辺縁・濃度
腫瘤は、2方向で見える、広がりのある占拠性病変です。BI-RADS第5版では、次の3つで表します。
| 項目 | 用語 | ポイント |
|---|---|---|
| 形 | 楕円形、円形、不整形 | 不整形は悪性を疑う方向 |
| 辺縁 | 境界明瞭、一部不明瞭(obscured)、微細分葉状、境界不明瞭、スピキュラを伴う | 3つのうち最も重要。重なる乳腺で辺縁が隠れているときは、評価できる範囲で判断する |
| 濃度 | 高濃度、等濃度、低濃度、脂肪を含む | 周囲の乳腺と比べる。脂肪を含む腫瘤は良性が多い |
形と辺縁、濃度を言葉にして、境界明瞭で平滑な腫瘤か、辺縁がぼやけたりスピキュラを伴ったりする腫瘤かを区別します。境界明瞭な腫瘤でも、すべてが良性とは限りません。超音波と合わせて判断します。
石灰化の見方:形と分布
石灰化は、形と分布の2つで評価します。BI-RADS第5版では、石灰化の形の分類が整理され、「良性」と「悪性を疑う」の大きな2グループになりました。以前の「中間的な懸念」という分類はなくなりました(Rao 2016)。
| 項目 | 用語の例 |
|---|---|
| 典型的に良性の石灰化 | 皮膚、血管、粗大(ポップコーン状)、棒状、円形、リング状、石灰乳、縫合糸 |
| 悪性を疑う形 | 無定形、粗大不均一、微細多形性、微細線状・微細分枝状 |
| 分布 | びまん性、領域性、集簇性、線状、区域性 |
形の細かな見分け方や、健診で指摘されたときの流れはマンモグラフィの石灰化とはに、石灰化が主な所見になる乳がんは非浸潤性乳管癌(DCIS)とはにまとめています。
構築の乱れ(architectural distortion)の見方
ここが初心者のつまずきやすい所です。構築の乱れを丁寧に見ていきます。
定義:腫瘤がないのに乳腺がゆがむ
構築の乱れとは、明らかな腫瘤は見えないのに、正常な乳腺の構造がゆがんでいる所見です。具体的には、1点から放射状に広がる細い線(スピキュラ)や、乳腺の縁が局所的に引き込まれる、ゆがむといった見え方をします。腫瘤にスピキュラや構築の乱れが伴う場合は、その腫瘤が主な所見として扱われます。
構築の乱れは、乳がんの見え方としては3番目に多く、わずかな所見であることが多いため、見落としやすい所見です(Shaheen 2011)。
原因は悪性だけではない
| 分類 | 原因 |
|---|---|
| 主な原因 | 乳がん(浸潤癌)、DCIS、放射状瘢痕(radial scar)、複合硬化性病変、脂肪壊死(Shaheen 2011) |
| 続発する原因 | 乳房の手術の既往、外傷、感染(Shaheen 2011) |
| 見かけの原因 | 圧迫のかけ方やポジショニングの左右差、乳腺の重なり |
放射状瘢痕と複合硬化性病変は、あわせて放射状硬化性病変と呼ばれます。画像で乳がんと区別しにくく、生検の対象になることが多い病変です(Manzar 2023)。手術の既往があれば、その瘢痕による変化を疑います。まず病歴を確認しましょう。
見分ける手順
- 2方向で再現するか:MLOとCCの両方で見えれば、本物の所見の可能性が高まります
- 中心の点があるか:1点から線が放射状に広がるなら、スピキュラを伴う構築の乱れです
- 腫瘤や濃度上昇を伴うか:濃度上昇がなくても、構築の乱れだけが見えることがあります
- 手術の既往や外傷はないか:瘢痕による変化は、手術の部位と一致します
- 撮影のゆがみでないか:圧迫やポジショニングが左右で違うと、構築の乱れに見えることがあります。再撮影や追加の撮影で確かめます
- 過去画像と比べる:以前からある変化なのか、新しい変化なのかを確認します
- 石灰化や非対称を伴うか:伴っても悪性の割合は大きくは変わりませんでした(Bahl 2015)
どのくらい悪性か
米国の施設の10年間の検討では、悪性を疑う構築の乱れ(腫瘤の随伴所見は除く)のうち、病理結果がわかった369例で乳がん(浸潤癌またはDCIS)が275例、悪性の割合は74.5%でした。良性で最も多かったのは放射状瘢痕または複合硬化性病変で7.3%でした。悪性の割合は、スクリーニングで見つかった場合(67.0%)が、精密検査で見つかった場合(83.1%)より低く、超音波で対応する病変がない場合は27.9%、ある場合は82.9%でした(Bahl 2015)。
ただし、これは米国の検討であり、使う装置や検診の方法によって数字は変わります。自分の施設の数字として覚えるのではなく、「構築の乱れは悪性の割合が高く、超音波での対応の有無で確率が大きく変わる」と覚えておきましょう。
トモシンセシスでの構築の乱れ
デジタルブレスト・トモシンセシス(DBT、乳房を多方向から撮って断層像を作る方法)では、構築の乱れが見つかる頻度が上がります。同じ施設の比較では、生検を勧められた構築の乱れの検査あたりの検出率が2Dマンモグラフィの0.07%から、DBTでは0.14%になりました。一方で、悪性の割合は73.6%から50.7%に下がり、放射状瘢痕の割合は11.6%から33.2%に増えました。DBTで見つかった構築の乱れでも、超音波で対応する病変がない場合の悪性の割合は29.2%あり、研究者は生検が必要だと結論しています(Bahl 2017)。DBTで放射状硬化性病変が多く見つかるようになったため、手術にするか経過観察にするかの方針は、現在も議論が続いています(Manzar 2023)。
症例 50歳代女性 放射状瘢痕
スクリーニングのマンモグラフィの、右乳房の2方向です。放射状に集まる線状影があり、症例ページでは右乳房の外側上方に構築の乱れがあると記載されています。精密検査の拡大・圧迫撮影でも構築の乱れが確認され、超音波では10mmの不整形で低エコーの腫瘤が対応していました。針生検では診断に至らず、切除して放射状瘢痕と診断されました。画像だけでは乳がんと区別できず、病理での確認が必要だった症例です。
初心者がつまずきやすい点
- 何でも構築の乱れに見えてしまうのは、自分の中に基準がまだないためです。「2方向で再現する、中心の点がある、病歴で説明できない」の3点を基準にしましょう
- 見つけたら、1人で抱えずに追加検査(拡大撮影、超音波、DBT)につなげます
- 放射状瘢痕のように、画像では乳がんと区別できない良性の病変もあります。「良性かもしれない」と考えて見逃さないようにします
随伴所見と、判定のしかた
腫瘤や石灰化のほかに、随伴所見として、皮膚の引き込み、乳頭の陥凹、皮膚の肥厚、線維柱帯の肥厚、腋窩リンパ節の腫大が記載されます。これらがあると、全体の評価が変わります。
所見をまとめたあとは、判定カテゴリーをつけ、追加の検査や経過観察などの方針を決めます。判定の基準や追加検査の扱いは、国や施設の指針によって異なります。実際の運用は、各施設の指針や専門医の判断に従ってください。
よくある疑問(Q&A)
Q. MLOとCCは、どちらを先に見ればよいですか?
A. 決まりはありません。大切なのは、左右を並べて同じ方向どうしを比べることと、見つけた所見を2方向で確認することです。
Q. 構築の乱れがあれば、乳がんですか?
A. 悪性の割合は高い所見ですが、放射状瘢痕や手術後の瘢痕、脂肪壊死などの良性でも起こります(Shaheen 2011、Bahl 2015)。追加検査や生検で確かめます。
Q. 一般の人が健診で「構築の乱れ」と言われました。心配ですか?
A. 精密検査が必要な所見ですが、すべてが乳がんというわけではありません。スクリーニングで見つかった構築の乱れは、精密検査で見つかった場合より悪性の割合が低いという報告があります(Bahl 2015)。指示された精密検査を受けましょう。気になる症状があれば、医療機関にご相談ください。
Q. トモシンセシスを使えば、見落としは減りますか?
A. DBTでは構築の乱れの検出が増えました(Bahl 2017)。一方で、良性の割合も増えるため、見つけたあとの判断が大切になります。
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参考文献
- Spak DA, Plaxco JS, Santiago L, et al. BI-RADS(®) fifth edition: A summary of changes. Diagn Interv Imaging. 2017;98(3):179-190. PubMed
- Rao AA, Feneis J, Lalonde C, et al. A Pictorial Review of Changes in the BI-RADS Fifth Edition. Radiographics. 2016;36(3):623-39. PubMed
- Bahl M, Baker JA, Kinsey EN, et al. Architectural Distortion on Mammography: Correlation With Pathologic Outcomes and Predictors of Malignancy. AJR Am J Roentgenol. 2015;205(6):1339-45. PubMed
- Bahl M, Lamb LR, Lehman CD. Pathologic Outcomes of Architectural Distortion on Digital 2D Versus Tomosynthesis Mammography. AJR Am J Roentgenol. 2017;209(5):1162-1167. PubMed
- Shaheen R, Schimmelpenninck CA, Stoddart L, et al. Spectrum of diseases presenting as architectural distortion on mammography: multimodality radiologic imaging with pathologic correlation. Semin Ultrasound CT MR. 2011;32(4):351-62. PubMed
- Manzar BZ, Phillips J, Dibble EH, et al. Imaging and Management of Radial Scars and Complex Sclerosing Lesions. Radiographics. 2023;43(10):e230022. PubMed
- Sickles EA. The spectrum of breast asymmetries: imaging features, work-up, management. Radiol Clin North Am. 2007;45(5):765-71, v. PubMed
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