
先に結論:LETMは「病名」ではなく「所見」。原因ごとに治療と再発の危険が違うので、MRIの形と抗体検査で絞る
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| LETMとは | 脊髄のT2強調像の高信号が、3椎体以上にわたって連続するもの |
| 主な原因 | NMOSD、MOGAD、そのほかの炎症性疾患(SLEなど)、感染、腫瘍、血管病変(脊髄梗塞・硬膜動静脈瘻)、特発性 |
| MSとの違い | MSの病変は通常は短い。LETMはMSの典型像ではない |
| 見分けの鍵 | 病変の位置(中心灰白質・円錐)、造影の有無、発症の速さ、AQP4抗体・MOG抗体、髄液 |
| 受診の目安 | 急な脱力、感覚障害、排尿・排便の障害は、早めに医療機関(救急)へ |
急性横断性脊髄炎とは
急性横断性脊髄炎(acute transverse myelitis:ATM)は、脊髄に起こる局所の炎症性の病気で、運動・感覚・自律神経(排尿など)の障害を起こします。診断基準と分類は、2002年にTransverse Myelitis Consortium Working Groupが提案しました。同じ基準で分類することで診断の混乱を避けること、そして、脊髄を圧迫する病変を見逃さないこと、原因がはっきりしない特発性のものと、ほかの病気にともなうものを区別することが目的とされています(Transverse Myelitis Consortium 2002)。
横断性という名前は、脊髄の断面(横断面)の広い範囲が障害されることに由来します。MRIは、圧迫病変(椎間板ヘルニア、腫瘍、血腫など)の除外と、炎症の範囲・位置の評価に使います。
長大脊髄病変(LETM)とは
LETM(longitudinally extensive transverse myelitis)は、脊髄MRIのT2強調像で高信号が3椎体以上にわたって連続する病変のことです(Kitley 2012)。数は多くありませんが、重い後遺症を残すことがあり、再発しやすい群もあるため、原因を早く特定することが大切です。もともとNMOとの関連で有名ですが、NMOSD以外にも多くの原因があります。ほかの炎症性疾患、感染、腫瘍、代謝の異常などで、治療できるものも含まれます(Kitley 2012)。
アルゼンチンの2つの病院で3椎体以上の病変を調べた27人の検討では、原因の内訳はNMOSDが37%、特発性が22.2%、SLE(全身性エリテマトーデス)が11.1%、腫瘍が11.1%、硬膜の動静脈瘻が7.4%、ADEMが7.4%、MSは1人(3.7%)でした。病変が7椎体以上の例は、3か月後の回復が不良でした(Carnero Contentti 2017)。小さな集団の結果ですが、LETMの原因が幅広いことを示しています。
症例 12歳男児 頸髄の長大脊髄病変(横断性脊髄炎)

引用:Radiopaedia(Cervical transverse myelitis)
頸髄が、C5からTh1の長い範囲で腫大し、両側にわたって対称性の高信号を示しています。症例ページでは、軽度で境界が不明瞭な造影効果があり、硬膜内の液体貯留はなく、臨床経過と合わせて横断性脊髄炎に合う所見とされています。
原因別のMRIの見分け方
| 原因 | MRIと臨床の特徴 |
|---|---|
| NMOSD(AQP4抗体陽性) | 長大な病変(3椎体以上)が多く、中心灰白質を含む。軸位像で病変が大きく、内部が不均一。小さな著明な高信号(bright spotty lesion)を示すことがある |
| MOGAD | 長大な病変の頻度はNMOSDと同程度。灰白質に限る高信号(矢状断で線状、軸位像でH型)、造影されにくい、円錐の病変、先行する症状が特徴 |
| 多発性硬化症(MS) | 病変は短く、複数が散在する。長大な病変はまれ |
| 脊髄梗塞 | 突然の発症(数時間でピーク)、高齢で血管の危険因子のある例が多い。前方の灰白質を主体とする「owl eyes」像、拡散制限 |
| そのほか | SLEなどの膠原病、感染、腫瘍(髄内)、硬膜動静脈瘻、ADEM。造影・髄液・血清検査で区別する |
NMOSD
NMOSDは、アクアポリン4(AQP4)に対する抗体(AQP4-IgG)に関連する炎症性疾患で、2015年の国際診断基準では、視神経・脊髄・最後野・脳幹・間脳・大脳のいずれかの症状やMRI所見が中核の臨床像とされています(Wingerchuk 2015)。脊髄MRIでは、NMOの24人のうち67%に長大な病変があり、中心の灰白質を含み、横方向にも広く、内部が不均一な病変がMS(34人)より多くみられました。軸位のT2強調像で見える、とても高信号の小さな病変(bright spotty lesion)はNMOの54%、MSの3%で、長大な病変がない例でも63%にみられました(Yonezu 2014)。詳しくは視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の記事をご覧ください。
MOGAD
MOGADは、ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG)に対する抗体(MOG-IgG)が診断の中心となる病気で、ADEM・視神経炎・横断性脊髄炎として現れることが典型的です。2023年に国際パネルが提案した診断基準では、細胞を使った測定法(cell-based assay)が診断の精度に大切とされています(Banwell 2023)。
脊髄炎を起こしたMOG-IgG陽性54人を、AQP4-IgG陽性46人とMS 26人と比べた報告では、長大な病変の頻度はMOG-IgGで79%(37/47人)、AQP4-IgGで82%(28/34人)と同程度で、MSにはありませんでした。MOG-IgGに特徴的だったのは、T2の高信号が灰白質に限られること(矢状断で線状、軸位像でH型)と、造影されないことです。多発する病変と円錐の病変はAQP4-IgGより多くみられ、先行する症状や、ADEMの合併も特徴とされました。車椅子が必要になる重い例はMOG-IgGとAQP4-IgGでみられ、回復はMOG-IgGのほうが良好でした(Dubey 2019)。抗MOG抗体関連疾患(MOGAD)の記事も参考にしてください。
多発性硬化症(MS)
MSの脊髄病変は通常は短く、上の報告でも長大な病変はMSではみられませんでした(Dubey 2019)。LETMがあるときは、MS以外の病気を第一に考えます。MSの脳MRIの特徴は多発性硬化症(MS)のMRI画像診断で解説しています。
脊髄梗塞:炎症と間違えやすい
脊髄梗塞は、原因のはっきりしない例では横断性脊髄炎と誤診されることがあります。自然に起こった脊髄梗塞133人のMayo Clinicの検討では、発症時の年齢の中央値は60歳で、76%に血管の危険因子がありました。77%が12時間以内に症状のピークに達し、感覚障害は95%にありました。MRIの特徴的な所見は、T2強調像でのowl eyes(65%)、鉛筆状の高信号(40%)で、拡散制限が29人中19人(67%)にありました。ただし、最初のMRIが正常だった例も24%にありました(Zalewski 2019)。詳しくは脊髄梗塞のMRI画像診断をご覧ください。
そのほかの原因
SLEなどの膠原病、感染、腫瘍(髄内腫瘍)、代謝の異常でもLETMは起こります(Kitley 2012、Carnero Contentti 2017)。硬膜動静脈瘻は、静脈のうっ血で脊髄に長い高信号を作るため、炎症と間違えやすい病気で、脊髄硬膜動静脈瘻(SDAVF)のMRI画像診断で解説しています。
症例 18歳男性 NMOSDの長大脊髄病変

引用:Radiopaedia(Neuromyelitis optica spectrum disorder)
C7からTh12までの広い範囲で、脊髄のT2強調像の高信号と腫大があります。症例ページでは、高信号は中心の灰白質と後索に及び、造影後には後方に矢状方向の線状の造影があるとされています。髄液ではリンパ球が増え、NMO抗体が陽性で、NMOSDと診断されました。
検査の流れと治療の考え方
- MRI(造影を含む):脊髄の全体と、脳も調べます。圧迫病変の除外が最優先です(Transverse Myelitis Consortium 2002)。脳や視神経の病変は原因の手がかりになります。
- 血液検査:AQP4-IgG、MOG-IgGなどの抗体。MOG-IgGは細胞を使った測定法が精度の点で大切とされています(Banwell 2023)。
- 髄液検査:細胞数や蛋白、オリゴクローナルバンドなど。
- 経過:再発するかどうかで原因が絞られます。
治療は、炎症性の原因か非炎症性の原因か、そして再発の危険が高い群かどうかの見極めにかかっています(Kitley 2012)。治療の内容や量は、原因・重症度によって異なるため、主治医・専門施設の説明に従ってください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 長大脊髄病変があれば、NMOSDと診断されますか?
A. いいえ。LETMは、NMOだけの特徴ではありません。MOGAD、膠原病、感染、腫瘍、血管病変などでも起こります(Kitley 2012)。AQP4-IgGなどの抗体検査で判断します。
Q. 病変の長さで予後がわかりますか?
A. 27人の検討では、7椎体以上の病変の例は3か月後の回復が不良でした(Carnero Contentti 2017)。ただし、原因によって経過は異なり、MOGADでは回復が良好な傾向がありました(Dubey 2019)。
Q. 脊髄梗塞とはどう見分けますか?
A. 発症が数時間と急で、高齢・血管の危険因子がある場合に疑います。MRIではowl eyesや鉛筆状の高信号、拡散制限が手がかりです(Zalewski 2019)。ただし、発症早期のMRIは正常のこともあります。
Q. 気になる症状があるときはどうすればよいですか?
A. 足や手に力が入らない、感覚が鈍い、尿や便が出にくいといった症状が急に出たときは、できるだけ早く医療機関(脳神経内科・救急)を受診してください。
参考文献
- Transverse Myelitis Consortium Working Group. Proposed diagnostic criteria and nosology of acute transverse myelitis. Neurology. 2002;59(4):499-505. PubMed
- Kitley JL, Leite MI, George JS, et al. The differential diagnosis of longitudinally extensive transverse myelitis. Mult Scler. 2012;18(3):271-85. PubMed
- Carnero Contentti E, Hryb JP, Leguizamón F, et al. Differential diagnosis and prognosis for longitudinally extensive myelitis in Buenos Aires, Argentina. Neurologia. 2017;32(2):99-105. PubMed
- Wingerchuk DM, Banwell B, Bennett JL, et al. International consensus diagnostic criteria for neuromyelitis optica spectrum disorders. Neurology. 2015;85(2):177-89. PubMed
- Banwell B, Bennett JL, Marignier R, et al. Diagnosis of myelin oligodendrocyte glycoprotein antibody-associated disease: International MOGAD Panel proposed criteria. Lancet Neurol. 2023;22(3):268-282. PubMed
- Dubey D, Pittock SJ, Krecke KN, et al. Clinical, Radiologic, and Prognostic Features of Myelitis Associated With Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein Autoantibody. JAMA Neurol. 2019;76(3):301-309. PubMed
- Zalewski NL, Rabinstein AA, Krecke KN, et al. Characteristics of Spontaneous Spinal Cord Infarction and Proposed Diagnostic Criteria. JAMA Neurol. 2019;76(1):56-63. PubMed
- Yonezu T, Ito S, Mori M, et al. “Bright spotty lesions” on spinal magnetic resonance imaging differentiate neuromyelitis optica from multiple sclerosis. Mult Scler. 2014;20(3):331-7. PubMed
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