抗MOG抗体関連疾患(MOG-antibody-associated disease:MOGAD、MOG-IgG-associated disease,MOG encephalomyelitis:MOG-EM)

  • 抗MOG抗体は髄鞘を構成するMOG(myelin oligodendrocyte glycoprotein:ミエリン表面に存在する糖タンパク質で中枢神経系のみに存在)への自己抗体。
  • 抗MOG抗体関連疾患(MOGAD)は視神経脊髄炎スペクトラム疾患(NMOSD)のうち抗AQP4抗体陰性、抗MOG抗体陽性の群として見出され、その後、視神経脊髄炎スペクトラム疾患(NMOSD)とは異なる、独立した疾患として捉えられるようになった。
  • 視神経脊髄炎スペクトラム疾患(NMOSD)よりも神経学的な経過がよいとされる。ただし難治例もあり。
  • 視神経脊髄炎スペクトラム疾患(NMOSD)よりも、痙攣発作で発症することが有意に多く、MRIで皮質を侵す病変を認めることが多い。
  • 小児例が多く、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の患者に抗MOG抗体陽性例が経験される。
  • 抗MOG抗体関連疾患は多彩な表現型があり、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)様白質病変(18%)の他、視神経炎(41-63%)、脊髄炎(29-31%)、大脳皮質炎(6%)などを生じる。
  • 典型的なMSでは抗MOG抗体は陰性となることが知られている。
  • 臨床的に脱髄性疾患が疑われる際に、多発性硬化症(MS)以外の鑑別に覚えておくべき疾患概念として視神経脊髄炎スペクトラム疾患(NMOSD)、抗MOG抗体関連疾患(MOGAD)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)がある。

抗MOG抗体関連疾患の画像所見

  • 脊髄炎の場合、NMOSDと同様に3椎体以上のlong cord lesionを形成しうるがshort cordの場合もある。T2WIで髄液よりも高信号を示す髄内病変であるbright spotty lesionやNMOSDを示唆する画像所見として知られているT1 dark lesionは認めないことが多い。
  • 視神経炎の場合、両側性で眼窩内などの前方優位に炎症を認めT2WIで高信号を示し、急性期には視神経のみでなく、視神経鞘や眼窩内脂肪組織にも増強効果を認めうる点が特徴となる。(MSやNMOSDでは非典型的な所見)
  • 脳所見は、脳幹やテント下のT2WI高信号病変を認める。テント上に認めることもある。MSで見られるような側脳室周囲には認めないことが多い。造影効果は半数程度に認め、ときに軟髄膜に増強効果を認めることがある。大脳皮質炎のパターンを示すこともある。
  • 小児では成人よりも深部灰白質や脳幹に広範な病変を認めることが多い。

症例 5歳 急性右半身麻痺および失語症。 意識レベルの低下。 最近の尿路感染症の病歴。

引用:radiopedia

FLAIRで、広範なテント上の大脳半球の皮質下に多発性、両側性高信号域を認めています。

信号が強いところはT1WIで低信号となり、 これらの病変が不規則に強く造影されています。

ADEM様所見ですが、抗AQP4抗体陰性、抗MOG抗体陽性であり、抗MOG抗体関連疾患(MOGAD)と診断されました。

関連記事:脳造影MRIにおいて点状、線状に血管周囲腔に沿った造影効果を認めた際の鑑別疾患(BBB破綻の有無)

参考文献:

  • 臨床放射線 Vol.66 No.5 2021 P431-2
  • 画像診断 Vol.42 No.8 2022 P725
  • 臨床画像 Vol.34 No.4 2018 P511
  • 臨床画像 Vol.38 No.7 2022 P808-811

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