冠状断・矢状断の解剖

頭部MRIの冠状断や矢状断になると、横断像で覚えた場所とつながらなくて混乱します…。
矢状断は「正中の1枚」、冠状断は「海馬と下垂体の2枚」をまず覚えて、横断像のどの高さに当たるかを対応させるとつながりますよ。

先に結論:冠状断・矢状断は、横断像では見えにくい「上下に長い構造」「正中の構造」を見るための断面です。

構造 見やすい断面 横断像ではどの高さ?
脳梁 正中矢状断 側脳室前角(膝部)〜体部の天井〜三角部(膨大部)
脳幹(中脳・橋・延髄)・第4脳室 正中矢状断 中脳・鞍上槽〜橋〜延髄の高さ
小脳(虫部) 正中矢状断 後頭蓋窩の高さ
下垂体・視交叉 正中矢状断・冠状断 鞍上槽のすぐ下(トルコ鞍)
松果体 正中矢状断 第3脳室の後ろ(視床の後端の高さ)
海馬・扁桃体 冠状断 中脳・鞍上槽の高さの側頭葉内側

実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの頭部MRIの正常解剖ツール(横断像)で、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。この記事の冠状断・矢状断で覚えた構造を、横断像で同じ構造を確かめる練習に使えます。

画像診断cafe「頭部MRIの正常解剖」(横断像)の画面

画像診断cafe「頭部MRIの正常解剖」(横断像)の画面。冠状断・矢状断で見た構造が横断像のどこにあるかを、タップしながら確かめられます

3つの断面の向きをおさらい

断面 英語 切り方
横断像 axial 体を水平に輪切り(下から見上げる向きが一般的)
冠状断 coronal 顔と平行に前後で切る(正面から見る)
矢状断 sagittal 体を左右に分ける向きで切る(横から見る)

矢状断は真ん中の1枚(正中矢状断 midsagittal)がいちばん情報が多く、冠状断は前後の位置によって見える構造が大きく変わります。

正中矢状断で見える構造

脳梁(corpus callosum)

左右の大脳半球をつなぐ最大の白質の束で、矢状断では側脳室の上に弓なりの帯として見えます。前から吻部(rostrum)・膝部(genu)・体部(body)・膨大部(splenium)に分けます。脳梁にできる病変の画像は Kazi らの画像集にまとまっています(Kazi 2013)。

  • 横断像との対応:膝部は側脳室前角の前、膨大部は側脳室三角部の高さで左右をつなぐ白質として見えます。体部は側脳室体部の天井です。
  • 詳しくは脳梁の場所とMRI画像へ。

脳幹(brainstem)と第4脳室

矢状断では、上から中脳(midbrain)・橋(pons)・延髄(medulla oblongata)が縦に並びます。橋は前にふくらんだ形で見分けやすく、その後ろに三角形(テントのような形)の第4脳室、さらに後ろに小脳があります。中脳の後ろには上丘・下丘(四丘体)、中脳の中を中脳水道が第3脳室から第4脳室へつないでいます。

  • 横断像との対応:中脳は鞍上槽のすぐ後ろ、橋と第4脳室は後頭蓋窩の高さ、延髄は大後頭孔のすぐ上の高さです。
  • 中脳被蓋・橋被蓋・橋底部の区分は脳幹のMRI解剖で解説しています。脳幹の構造の多くが通常のMRIで見分けられることは Shepherd らがまとめています(Shepherd 2022)。

小脳(cerebellum)

正中矢状断では第4脳室の後ろに小脳虫部(vermis)が、木の枝のような脳溝(小脳葉)とともに見えます。小脳扁桃の下端と大後頭孔の位置関係も矢状断で確認します。

下垂体(pituitary gland)・視交叉

トルコ鞍の中にあり、前が前葉(anterior lobe)、後ろが後葉(posterior lobe)です。T1強調像で後葉が白く見えることが多く(posterior bright spot)、前葉と後葉を見分ける目印になります(Elster 1993)。上には下垂体柄(pituitary stalk)が伸び、その前上方に視交叉があります。

  • 矢状断で測った下垂体の高さは、1,020人の検討で女性平均5.35mm、男性平均4.93mmで、20歳代でもっとも高く、その後は年齢とともに低くなる傾向がありました(Tsunoda 1997)。
  • 横断像との対応:鞍上槽(星形の髄液腔)のすぐ下の高さで、左右を海綿静脈洞にはさまれています。
  • 詳しくは下垂体MRIの正常画像と場所・大きさへ。

松果体(pineal gland)

第3脳室の後ろ、脳梁膨大部の下、中脳の四丘体の上にある小さな構造です。周囲の松果体部には脳槽や静脈が集まっています(Smith 2010)。

  • 横断像との対応:第3脳室の後ろ、視床の後端の高さで、正中にある小さな構造として見えます。CTでは石灰化して白い点に見えることが多い構造です。
  • 場所と役割は松果体とは?でも解説しています。

冠状断で見える構造

海馬(hippocampus)と扁桃体(amygdala)

海馬は側頭葉の内側で、側脳室下角(temporal horn)の床と内側に沿って前後に長く伸びる灰白質です。横断像では斜めに切れてしまうため、海馬の長軸に直交する冠状断で、左右の大きさや内部の構造を比べます(Dekeyzer 2017, Hayman 1998)。

  • 扁桃体:海馬の前上方、側脳室下角の先端のすぐ前にあるかたまり。冠状断では海馬より前のスライスに現れます。
  • 横断像との対応:中脳・鞍上槽の高さで、側頭葉内側に前後に伸びる構造として見えます。前寄りの鉤(uncus)の高さに扁桃体、その後ろに海馬が続きます。
  • 正常な海馬の冠状断は海馬硬化症のMRI画像診断で画像とともに解説しています。

下垂体を通る冠状断

下垂体は冠状断でも見やすく、中央にトルコ鞍の下垂体、上に下垂体柄と視交叉、左右に海綿静脈洞と内頸動脈が並びます。下垂体柄が正中にあるかどうかもこの断面で確かめます。

基底核・視床を通る冠状断

側脳室の外側に尾状核、その下外側に内包をはさんで被殻・淡蒼球、さらに外側に島とシルビウス裂が見えます。横断像の「く」の字の内包が、冠状断では上下に走る白質の帯として見え、放線冠・半卵円中心へつながる様子がわかります。

よくある疑問(Q&A)

Q1. 認知症の検査で冠状断を撮るのはなぜですか?

海馬は前後に長く、横断像では斜めに切れて大きさを比べにくいためです。海馬の長軸に直交する冠状断なら、左右の海馬を同じ条件で比べられます。

Q2. 矢状断で下垂体が「大きい」と言われました。

下垂体の大きさは年齢や性別で変わり、若い人や女性では大きめに見えることがあります(Tsunoda 1997)。意味は検査を受けた医療機関で確認してください。

Q3. 横断像だけで脳梁は評価できますか?

膝部・膨大部は横断像でも見えますが、薄い体部や全体の形は正中矢状断のほうが見やすいため、あわせて見るのがおすすめです。

まとめ

  • 正中矢状断では脳梁・脳幹・第4脳室・小脳虫部・下垂体・松果体が1枚に並ぶ。
  • 冠状断は海馬・扁桃体、下垂体と海綿静脈洞、基底核と内包の上下のつながりを見るのに向く。
  • 横断像では、海馬は中脳・鞍上槽の高さ、下垂体は鞍上槽の下、松果体は第3脳室の後ろに見える。

画像診断cafeの頭部MRIの正常解剖ツール(横断像)では、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。冠状断・矢状断で覚えた構造が横断像のどこに当たるか、同じ構造を確かめてみてください。iPhoneでは無料アプリ画像診断cafe(頭部MRIの解剖・横断像)でも頭部MRIを見られます。

参考文献

  1. Dekeyzer S, De Kock I, Nikoubashman O, et al. “Unforgettable” – a pictorial essay on anatomy and pathology of the hippocampus. Insights Imaging. 2017;8(2):199-212. PubMed
  2. Hayman LA, Fuller GN, Cavazos JE, et al. The hippocampus: normal anatomy and pathology. AJR Am J Roentgenol. 1998;171(4):1139-46. PubMed
  3. Kazi AZ, Joshi PC, Kelkar AB, et al. MRI evaluation of pathologies affecting the corpus callosum: A pictorial essay. Indian J Radiol Imaging. 2013;23(4):321-32. PubMed
  4. Elster AD. Modern imaging of the pituitary. Radiology. 1993;187(1):1-14. PubMed
  5. Tsunoda A, Okuda O, Sato K. MR height of the pituitary gland as a function of age and sex: especially physiological hypertrophy in adolescence and in climacterium. AJNR Am J Neuroradiol. 1997;18(3):551-4. PubMed
  6. Smith AB, Rushing EJ, Smirniotopoulos JG. From the archives of the AFIP: lesions of the pineal region: radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 2010;30(7):2001-20. PubMed
  7. Shepherd TM, Hoch MJ. MRI-Visible Anatomy of the Brainstem. Neuroimaging Clin N Am. 2022;32(3):553-564. PubMed

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