頭部外傷により頭蓋内に出血が起こると、脳ヘルニアが起こり、最悪死に至ることがあります。その原因の一つに、急性硬膜外血腫(AEDH:acute epidural hematoma)という病態があります。

今回はこの急性硬膜外血腫について

  • 症状
  • CT画像診断

についてイラストや実際の症例を交えながらわかりやすく解説したいと思います。

急性硬膜外血腫とは?

まず、頭部打撲などにより多くは頭蓋骨に骨折をきたし中硬膜動脈の破綻により頭蓋骨と硬膜の間に出血が起こるのが、急性硬膜外血腫です。

この硬膜は頭蓋骨と比較的密にくっついており、本来硬膜外腔は生理的には存在しません。

ピンセットで硬膜を無理やり剥がすとでてくるのが硬膜外腔です。

ですので、血腫は広がりにくい・縫合線を超えないのが特徴です。

破綻する血管は中硬膜動脈が最多ですが、他には、板間静脈、上矢状静脈洞、横静脈洞などが破綻することもあります。

急性硬膜外血腫の症状は?

一時的な意識回復(意識清明期)が見られることがある症状経過が特徴的です。

  • ①意識混濁→②一旦意識回復(数分〜数時間)→③再度意識混濁

という経過をとることがあるのがこの病態の特徴です。

①意識混濁

外傷を受けた直後は、意識混濁となります。

②一旦意識回復(数分〜数時間)

その後、数分から数時間の間、一旦意識は回復する(これを意識清明期(lucid interval)という。)ことがあります。

この意識清明期(lucid interval)が見られるのは全体の急性硬膜外血腫のうち15-60%程度と言われています。

「ところで、なぜ意識清明期が存在するのでしょうか?」

それは、先ほど申し上げたように硬膜は頭蓋骨にぴったりくっついており、ピンセットなどで無理やり剥がさないとでてこないのが硬膜外腔です。

頭蓋骨を裏打ちする動脈が骨折により損傷を受けて、この硬い硬膜をペリペリと剥がして血腫を作るのに時間がかかるためと言われています。

③再度意識混濁

そしてその後、再度意識混濁に陥ります。その際血腫が大きくなったり、広がれば脳ヘルニアが起こり、

  • 瞳孔不同
  • 除脳硬直
  • 呼吸抑制

などの脳ヘルニア症状が現れます。(脳ヘルニアについて詳しくはこちら→【保存版】脳ヘルニアの分類、症状、画像診断、治療法の徹底まとめ)

更に頭蓋内圧亢進症状として

  • 頭痛
  • 嘔吐

症状が現れることもあります。その他、血腫の対側に片麻痺を生じ、最終的には心肺停止となり死に至ることも多くあります。

急性硬膜外血腫のCT画像診断は?

急性硬膜外血腫の診断には頭部CT検査が第一選択となります。

その際、急性硬膜外血腫の特徴としては外傷を受けた部位に一致した凸レンズ型の高吸収域を認めることが多いと言われます。

ただし、硬膜下血腫においても凸レンズ型を示すことがありますので、形ばかりで診断してはいけません。

また骨の条件にして骨折の有無を確認します。

それでは実際の症例のCT画像を見ていきましょう。

症例 50歳代男性 外傷 CT検査
横断像

左側に凸レンズ型の高吸収(白い)を示す血腫があるのがわかります。また、脳溝に沿った高吸収域も認められ外傷性くも膜下出血も合併していることがわかります。さらには脳内に点々のSalt and pepper状の高吸収域も認められ脳挫傷(脳内出血)の合併もあります。

冠状断像

この症例を冠状断像で見てみると、凸レンズの形態がわかりやすくなります。また骨条件にすると骨折線を伴っていることがよくわかります。

つまりこの症例では、急性硬膜外血腫(+頭蓋骨骨折)+脳挫傷+外傷性くも膜下出血があると診断することができます。脳ヘルニア所見は認めません。

骨折を探すときは骨条件にしないと全然わからないですね。

症例 40歳代男性 外傷 CT検査

右の前頭部にこちらも凸レンズ型の形状を示す高吸収域を認めています。さらに辺縁には空気を示す低吸収域を認めており、骨折をして空気が入ったことが示唆されます。またこの症例では、正中構造の偏位を認めています。

骨条件で見てみると、

やはり骨折を伴っていることがわかります。

最後に

  • 頭部外傷が原因で、頭蓋骨と硬膜に間に出血が起こる
  • 意識混濁→意識回復→意識混濁と陥る
  • 頭痛や嘔吐、脳ヘルニア症状、頭蓋内圧亢進症状、対側に片麻痺、最終的には呼吸停止となる
  • 診断にはCT検査が必須
  • 通常凸レンズ型の高吸収域を認める

 

参考になれば幸いです。

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