
先に結論:神経皮膚黒色症は「大きな(または多数の)生まれつきのほくろ」に、脳や髄膜のメラニン細胞の増殖を伴う病気。MRIのT1強調像で高信号に見える
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 先天性色素性母斑(生まれつきのほくろ)と、脳実質・軟膜(髄膜)のメラニン細胞の増殖が合併するまれな先天性の病気 |
| 誰に多いか | 大きな先天性色素性母斑、とくに背中の正中付近にある場合や、衛星母斑(周りの小さなほくろ)が多い場合 |
| MRIの特徴 | 扁桃体(側頭葉の前方)・小脳・脳幹・視床などにT1強調像で高信号の病変。乳児期のほうが見つけやすい |
| 心配な場合 | けいれん、水頭症、頭蓋内圧が上がる症状が出たとき |
| 次にすること | 皮膚科・小児科(小児神経)で相談。MRIの時期や必要性は主治医と決める |
神経皮膚黒色症とは
神経皮膚黒色症(neurocutaneous melanosis:NCM)は、大きな、または多数の先天性色素性母斑と、軟膜(髄膜)の良性または悪性のメラニン細胞の増殖を合併するまれな先天性の症候群です(Kadonaga 1991)。現在は、より正確な呼び名として神経皮膚メラノサイトーシス(neurocutaneous melanocytosis)とも呼ばれ、軟膜だけでなく脳実質へのメラニン細胞の浸潤も含めて定義されています(Ruggieri 2020)。
胎児期に神経堤から皮膚や中枢神経へ移動するメラニン細胞の前駆細胞の、産生や移動の異常が原因と考えられています(Islam 2015)。
どんな人に起こる?
- 大きな先天性色素性母斑のある人がリスクをもち、とくに母斑が体の後ろ側・正中にある場合や、衛星母斑を伴う場合にリスクが高いとされます(Islam 2015)。
- 大きな先天性色素性母斑のある人のおよそ12%が神経皮膚黒色症を発症すると報告されています(Ruggieri 2020)。
- 一方で、ひとつの大きな母斑がなくても、小さめの母斑が多数あることで発症する例も少なくありません(Makkar 2004)。
症状と経過
神経の症状は生後2年以内に出ることが多く、頭蓋内圧の上昇、腫瘤による症状、脊髄の圧迫などで見つかります(Kadonaga 1991)。けいれんと水頭症が代表的な神経症状です(Islam 2015)。一方で、もっと遅く小児期や成人になってから、脳神経麻痺や運動・感覚の障害、認知・行動の問題などで発症することもあります(Ruggieri 2020)。水頭症のしくみは 脳室と髄液の流れ・水頭症の記事 で解説しています。
症状が出た場合の経過は厳しく、報告39例の検討では62%に軟膜の悪性黒色腫がみられ、黒色腫がなくても症状のある神経皮膚黒色症の予後は不良でした(Kadonaga 1991)。約半数が中枢神経の悪性黒色腫を発症するとの報告もあります(Makkar 2004)。
一方、母斑のある人全体でみると、神経症状がある割合は約7%(メタ解析で7.04%)でした(Fledderus 2022)。MRIで所見があっても、症状のない子どもでの長期的な意味ははっきりしていない点も大切です(Makkar 2004)。
MRI所見:T1強調像で高信号
先天性色素性母斑のある80人の脳・脊髄MRIを見直した研究では、次のような結果でした(Jakchairoongruang 2018)。
| 所見 | 結果(80人中) |
|---|---|
| 脳の異常あり | 33人 |
| 扁桃体のメラノーシス(T1高信号) | 31人(うち14人は扁桃体だけ) |
| 脳幹・小脳・大脳皮質・視床のメラノーシス | 19人 |
| 脳・脊髄の軟膜の造影増強 | 5人(少ない) |
- 中枢神経のメラノーシスは、脳実質のT1強調像で高信号を示す病変として診断されました(Jakchairoongruang 2018)。好発部位は側頭葉前部(扁桃体)・脳幹・小脳・大脳皮質です。
- T1高信号は髄鞘化(ミエリン化)が進む前の乳児期に最も見やすく、脳が成熟するにつれて見えにくくなります(Jakchairoongruang 2018、Islam 2015)。成長してからのMRIで見えにくいのはこのためです。
- 後頭蓋窩(小脳・橋)のメラノーシスは、小脳・橋の低形成と関連していました(Jakchairoongruang 2018)。Dandy-Walker奇形などの構造異常の合併も報告されています(Makkar 2004)。
- 症状のある例では、造影MRIと髄液の細胞診が診断に役立ちます(Kadonaga 1991)。軟膜に沿った造影増強は、軟膜へのメラニン細胞の浸潤や黒色腫を考える所見です。
T1強調像で高信号になる病変はほかにもあります。鑑別は 頭部MRIでT1高信号・T2低信号を示すものの記事 や 基底核のT1高信号の鑑別の記事 を参考にしてください。
症例 生後2日男児 神経皮膚黒色症

引用:Radiopaedia(Neurocutaneous melanosis)
脳幹の背側に、周りの脳より明るい境界のはっきりした高信号域があります。症例ページでは右の内側側頭葉、橋、左小脳にもT1高信号の病変があり、FLAIRでも高信号、拡散制限やSWIでの信号低下はなく、大きな先天性色素性母斑を伴う神経皮膚黒色症の頭蓋内メラニン沈着と考えられています。
スクリーニングMRIは受けるべき?
大きな、あるいは多数の先天性色素性母斑のある乳児で、神経のメラノーシスを調べるMRIを勧める根拠は増えつつありますが、さらに研究が必要とされています(Jahnke 2021)。系統的レビューでは、現時点の文献からはルーチンのMRIスクリーニングを強く推奨することはできず、各施設が利点と欠点を考えて方針を決めるべきとされています(Fledderus 2022)。
MRIを撮る場合は、上に書いたとおり髄鞘化が進む前の乳児期のほうが病変を見つけやすいことが知られています(Islam 2015、Jakchairoongruang 2018)。
次にすること
- 生まれつき大きなほくろや多数のほくろがある場合は、皮膚科と小児科で経過を相談してください。
- けいれん、頭が急に大きくなる、嘔吐をくり返す、ぐったりするなどの症状があれば早めに医療機関を受診してください。
- MRIを撮るか、いつ撮るかは主治医と相談して決めます。
よくある疑問(Q&A)
Q. MRIで扁桃体にT1高信号があると言われました。すぐに悪いもの?
A. 扁桃体だけのT1高信号は母斑のある子どもで最も多い所見で(Jakchairoongruang 2018)、症状のない例での長期的な意味ははっきりしていません(Makkar 2004)。症状の有無を含めて主治医と経過を相談してください。
Q. 大人になってから発症することはある?
A. 多くは乳幼児期ですが、小児期後半や成人になってから神経症状で見つかる例もあります(Ruggieri 2020)。
Q. 成長してからMRIを撮っても意味はない?
A. 髄鞘化が進むとT1高信号は見えにくくなりますが(Jakchairoongruang 2018)、水頭症や造影される病変の評価などMRIの役割は残ります。
参考文献
- Kadonaga JN, Frieden IJ. Neurocutaneous melanosis: definition and review of the literature. J Am Acad Dermatol. 1991;24(5 Pt 1):747-55. PubMed
- Makkar HS, Frieden IJ. Neurocutaneous melanosis. Semin Cutan Med Surg. 2004;23(2):138-44. PubMed
- Islam MP. Neurocutaneous melanosis. Handb Clin Neurol. 2015;132:111-7. PubMed
- Ruggieri M, Polizzi A, Catanzaro S, et al. Neurocutaneous melanocytosis (melanosis). Childs Nerv Syst. 2020;36(10):2571-2596. PubMed
- Jakchairoongruang K, Khakoo Y, Beckwith M, et al. New insights into neurocutaneous melanosis. Pediatr Radiol. 2018;48(12):1786-1796. PubMed
- Fledderus AC, Widdershoven AL, Lapid O, et al. Neurological signs, symptoms and MRI abnormalities in patients with congenital melanocytic naevi and evaluation of routine MRI-screening: systematic review and meta-analysis. Orphanet J Rare Dis. 2022;17(1):95. PubMed
- Jahnke MN, O’Haver J, Gupta D, et al. Care of Congenital Melanocytic Nevi in Newborns and Infants: Review and Management Recommendations. Pediatrics. 2021;148(6):e2021051536. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
