
先に結論:鼻中隔穿孔の多くはけが・手術など「外からの原因」。ただし原因がはっきりしないときは全身の病気を調べる
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 左右の鼻の穴を分ける壁(鼻中隔)に穴があいた状態 |
| 主な原因 | 鼻の手術・焼灼(しょうしゃく)などの治療、鼻をいじる癖などのけが、点鼻ステロイド、ピアス、職場の化学物質、コカインなどの薬物、血管炎などの全身の病気 |
| 症状 | かさぶた、鼻血、鼻づまり、呼吸のときのピューという音。症状がないことも多い |
| 画像の役割 | CT・MRIで穴の位置と大きさ、周り(鼻の底・上あご・副鼻腔の壁)まで壊れていないかを見る |
| 何科 | 耳鼻咽喉科。血管炎などが疑われれば膠原病・リウマチ内科と連携 |
鼻中隔穿孔とは
鼻中隔(びちゅうかく)は、鼻の中を左右に分ける仕切りの壁で、前の方は軟骨、奥の方は骨でできています。この壁に穴があいた状態が鼻中隔穿孔(nasal septal perforation)です。
どのくらいの人にあるのかは、はっきりした数字が報告されていません(Lanier 2007)。症状がなく、別の理由で鼻の中を見たときに偶然見つかることもよくあります(Vignes 2002)。
鼻の壁がゆがんでいる「鼻中隔彎曲」とは別のものです。彎曲については鼻中隔彎曲(弯曲)・骨棘形成のCT画像所見で解説しています。
鼻中隔穿孔の原因
文献レビューでは、原因として次のものが挙げられ、全体としては医療行為に伴うもの(医原性)が圧倒的に多いとされています(Lanier 2007)。けがが主な原因で、全身の病気によるものもある、という整理もされています(Vignes 2002)。
| 分類 | 具体例 | 根拠 |
|---|---|---|
| 手術・治療 | 鼻中隔の手術、両側からの焼灼(鼻血を止める処置など) | Lanier 2007 |
| けが・癖 | 鼻をいじる・ほじる行為、鼻ピアス | Lanier 2007、Chang 2017 |
| 薬 | 点鼻ステロイドなどの鼻スプレー | Lanier 2007 |
| 職業 | 工業用の化学物質(六価クロムなど) | Lanier 2007、Lee 2002 |
| 違法薬物 | コカインの鼻からの吸引 | Trimarchi 2014 |
| 全身の病気 | 多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、サルコイドーシス、クリオグロブリン血症 | Vignes 2002 |
| 腫瘍 | 鼻の腫瘍(小児例の報告) | Chang 2017 |
鼻をいじる癖(鼻ほじり)
子ども27人の鼻中隔穿孔をまとめた報告では、原因はけが33%、医原性19%、腫瘍11%で、もっとも多かったのは指で鼻をいじることによるけがでした。穴の81%は鼻中隔の前の方にあり、大きさは平均約0.9cm、症状はかさぶた(73%)と鼻血(58%)が多くみられました(Chang 2017)。
大人でも、やめられない強迫的な鼻ほじり(rhinotillexomania)による穿孔があります。手術を受けた37人の報告では、86.5%で穴が前の方(切歯管より前)にあり、行動療法と穴をふさぐ手術を組み合わせる治療が勧められています(Alobid 2025)。
職場の化学物質(六価クロム)
韓国の溶接作業者2,869人の健康診断では11人に鼻中隔穿孔がみられ、手術歴・けが・点鼻ステロイドなどの原因がないことから、低濃度の六価クロムに長くさらされたことが原因と考えられました(Lee 2002)。溶接など化学物質を扱う仕事をしている人は、そのことを医師に伝えると原因探しの助けになります。
コカインによる鼻の破壊(CIMDL)
コカインを鼻から吸う人では、鼻の中の正中部が壊れていくコカイン誘発性正中破壊性病変(CIMDL)が使用者の約4.8%に起こるとされます。鼻中隔穿孔のほか、上あご(口蓋)の穿孔、副鼻腔の壁や眼窩、頭蓋底の破壊まで進むことがあり、ANCA陽性の血管炎とよく似ます(Trimarchi 2014)。
血管炎(GPA)との区別には、ヒト好中球エラスターゼ(HNE)に対するANCAが役立つとされ、免疫を抑える治療は効かず、使用をやめることだけが進行を止めるとされています(Trimarchi 2014)。また口蓋(上あご)の穿孔は、GPAよりCIMDLを強く疑う手がかりとされます(文献ではCIMDL 73例に対しGPA 5例)(Trimarchi 2017)。
血管炎などの全身の病気
多発血管炎性肉芽腫症(GPA、旧名Wegener肉芽腫症)などでは鼻中隔穿孔が起こることがありますが、各病気でどのくらいの頻度かのデータは多くありません。原因がはっきりしない穿孔では全身の病気を疑うこと、反対に全身の病気がある人では症状がなくても鼻の中を診ることが勧められています(Vignes 2002)。鼻の組織の生検は、肉芽腫や血管炎が見つかったとき以外は診断に役立ちにくいとされます(Vignes 2002)。
GPAの鼻・副鼻腔の画像は多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の鼻・副鼻腔病変のCT画像診断と鞍鼻、全身の症状はWegener肉芽腫症(多発血管炎性肉芽腫症)の症状と画像所見で解説しています。
症状
症状は、鼻づまり、鼻血、のどに落ちる鼻水、呼吸のときのピューという音(笛音)、かさぶたなどで、どれもこの病気に特有ではありません。症状のない人も多いとされています(Vignes 2002)。
検査でどう見えるか(CT・MRI)
穿孔そのものは鼻の内視鏡で直接見て診断します。CTやMRIは次のような目的で使われます。
- 穴の位置と大きさ:鼻中隔の壁が途切れて見えます。前の方か奥の方か、どのくらいの大きさかを確認します。
- 周りへの広がり:コカインによる破壊(CIMDL)や血管炎では、口蓋(上あご)や副鼻腔の壁、眼窩、頭蓋底まで壊れていないかを確認します(Trimarchi 2014、Trimarchi 2017)。
- 副鼻腔炎や合併症:CIMDLの診断ではMRIも用いられます(Trimarchi 2014)。
鼻をぶつけたあとの注意点(鼻中隔血腫など)は鼻骨骨折の見分け方|鼻中隔血腫・整復のタイミングをご覧ください。
症例 40歳代男性 鼻中隔軟骨部の穿孔(点鼻薬の長期使用)

引用:Radiopaedia(Cartilaginous nasal septum perforation)
矢印の部分で、鼻中隔の前方の軟骨部に小さな穴(欠損)があいています。症例ページでは骨の部分の鼻中隔は保たれており、血管収縮作用のある点鼻薬を長く使ったことによる軟骨の虚血が原因と考えられています。

引用:Radiopaedia(Cartilaginous nasal septum perforation)
同じ症例の冠状断像です。矢印の部分で鼻中隔が途切れ、左右の鼻腔がつながって見えます。
心配な場合とそうでない場合
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 鼻の手術歴や鼻をいじる癖があり、穴が前の方で小さく、ほかの異常がない | 原因がはっきりしていることが多い。症状に合わせて耳鼻咽喉科で相談 |
| 原因に心当たりがない | 血管炎などの全身の病気を調べる対象(Vignes 2002) |
| 穴が広がっていく、口蓋や副鼻腔の壁、眼窩まで壊れている | CIMDLやGPA、腫瘍などを区別する検査が必要 |
| 発熱・咳・血痰・血尿・関節痛などの全身症状がある | GPAなどの全身の病気を早めに調べる |
気になる症状があれば医療機関を受診してください。
次にすること(受診先・検査)
- 受診先:まず耳鼻咽喉科。全身の病気が疑われたら膠原病・リウマチ内科などと連携します。
- 伝えること:鼻の手術や処置の歴、点鼻薬の使用、鼻をいじる癖、仕事(溶接など化学物質を扱うか)、薬物の使用歴。CIMDLとGPAの区別は、本人が薬物の使用を言い出しにくいと難しくなるとされます(Trimarchi 2017)。
- 検査:鼻の内視鏡、副鼻腔のCTやMRI、ANCAなどの血液検査、必要に応じて生検(Trimarchi 2017)。
- 治療:原因への対応が基本です。症状が強い場合は、穴をふさぐ手術やシリコンの板・ボタンで穴を閉じる方法などがあり、子どもの報告では手術で閉じられたのは6人中4人(66.7%)でした(Chang 2017)。どの方法が合うかは主治医に相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 穴は自然にふさがりますか?
鼻中隔の穴が自然に閉じることを示すデータは見当たりません。症状がなければ様子を見ることもあり、症状が強ければ手術などを検討します。方針は主治医に相談してください。
Q2. 鼻ほじりだけで本当に穴があくのですか?
はい。子どもの鼻中隔穿孔では指で鼻をいじることによるけががもっとも多い原因でした(Chang 2017)。大人でも、やめられない強迫的な鼻ほじりによる穿孔が報告されています(Alobid 2025)。
Q3. 血液検査でANCAが陽性なら血管炎ですか?
そうとは限りません。コカインによる鼻の破壊(CIMDL)でもANCAが陽性になることがあり、GPAとよく似ます(Trimarchi 2014、Trimarchi 2017)。使用歴や口蓋の穿孔の有無、ほかの臓器の症状を合わせて判断します。
ごろ〜より:鼻中隔穿孔は「穴があいた」という結果なので、画像では穴の位置・大きさ・周りへの広がりを見て、原因の手がかりを主治医に返すことが大切です。
参考文献
- Lanier B, Kai G, Marple B, et al. Pathophysiology and progression of nasal septal perforation. Ann Allergy Asthma Immunol. 2007;99(6):473-9. PubMed
- Vignes S, Chaillet M, Cabane J, et al. [Nasal septal perforation and systemic disease]. Rev Med Interne. 2002;23(11):919-26. PubMed
- Chang DT, Irace AL, Kawai K, et al. Nasal septal perforation in children: Presentation, etiology, and management. Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2017;92:176-180. PubMed
- Alobid I, Arango Cabezas N, Yuen-Ato KC, et al. Self-Induced Nasal Septal Perforation: Rhinotillexomania-A Different Entity From Nose Picking. Laryngoscope. 2025;135(5):1590-1597. PubMed
- Lee CR, Yoo CI, Lee Jh, et al. Nasal septum perforation of welders. Ind Health. 2002;40(3):286-9. PubMed
- Trimarchi M, Bertazzoni G, Bussi M. Cocaine induced midline destructive lesions. Rhinology. 2014;52(2):104-111. PubMed
- Trimarchi M, Bondi S, Della Torre E, et al. Palate perforation differentiates cocaine-induced midline destructive lesions from granulomatosis with polyangiitis. Acta Otorhinolaryngol Ital. 2017;37(4):281-285. PubMed
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