先に結論:MELAS(ミトコンドリア脳筋症)のMRI
- MELASは、ミトコンドリアDNAの変異(多くは3243A>G)で起こる病気で、子ども〜若い人の脳卒中のような発作(頭痛・嘔吐・けいれん・視野障害)、低身長・難聴・糖尿病、血液・髄液の乳酸の上昇が特徴です(指定難病)
- MRIでは後頭葉・側頭葉・頭頂葉の皮質を中心に、血管の支配領域に一致しない脳梗塞のような病変が出ては消え、場所を変えてくり返すのが特徴です。急性期にADCが下がらないことが多い・血流が増える点が普通の脳梗塞と違います
- 若い人の血管支配に合わない皮質中心の病変では、MELASを考えて乳酸や遺伝子の検査を行います。発作時にはL-アルギニンなどの治療が用いられます
- ミトコンドリア脳筋症はMELAS・MERRF・KSS・Leigh脳症などの総称で、病型によってMRIの出方が違います
MELAS(mitochondrial myopathy encephalopathy lactic acidosis stroke-like episode)症。
- ミトコンドリア異常症に含まれる疾患としては、MELAS、MERRF(myoclonus epilepsy associated with ragged-red fibers)、KSS(Kearns-Sayre syndrome)、Leigh encephalopathyなどがある。
- つまりMELASはミトコンドリア異常症の一つ。
- ミトコンドリア遺伝子変異が原因で、ミトコンドリアの呼吸鎖(酸化的リン酸化)が障害されてATP産生が低下し、血中乳酸値が上昇する。
- 乳酸、ピルビン酸の血中、脳脊髄液の高値を伴う。
- ミトコンドリアDNA異常として点突然変異(3243番のAがGに置換)が知られている。この変異はミトコンドリアtRNA-Leu(UUR)遺伝子(MT-TL1)にあり、最初の報告ではMELAS患者31例中26例に認められた。脳卒中様発作の背景には小血管の血管障害(angiopathy)や一酸化窒素(NO)不足が関与すると考えられ、発作時にはNO前駆体であるL-アルギニンの速やかな投与が推奨されている。
- 臨床的には血管支配領域に一致しない痙攣、意識障害を伴う脳卒中様発作を生じる。後頭頭頂葉に好発する梗塞様病変が特徴。
- 梗塞巣が灰白質のみに存在するときや、血管支配に一致しないときは、MELASを疑う。
- MELASの活動病変は、細胞レベルの虚血状態にもかかわらず、局所の血管が拡張し、血管性の浮腫状態であることが知られている。拡散制限がある場合とない場合がある。
- 20歳以下、特に小児期の発症が多い。
- 発作をくり返すと認知機能低下などの後遺症が蓄積し、予後不良なことが多い。
- 臨床診断の目安として、(1)40歳前の脳卒中様発作、(2)けいれんや認知症などの脳症、(3)乳酸アシドーシスまたは筋生検での赤色ぼろ線維(RRF)の3つがそろうことが提案されている(Hirano 1992)。
MELASの画像診断
- 側頭葉後部、後頭葉、頭頂葉、基底核などに血管支配に一致しない梗塞様病変の多発を認める。急性期病変のADCが低下せず可逆性変化を呈しうる点が梗塞と異なる。
- 皮質病変の検出にはFLAIRが病変の描出に鋭敏である。
- 基底核の石灰化を呈することがある。
- 多発性硬化症との鑑別が問題となるが、深部白質が保たれ、皮質が侵される点が異なる。
- 急性期病変の血流亢進を反映してMRAでは病変側の血管が太く描出されたり、潅流画像での高血流を認める。
- MRSでは病変内だけでなく、正常に見える脳や脳室の髄液にも乳酸のピークがみられることがある(Mascalchi 2018)。病変ではNAAが下がり乳酸が上がる(Finsterer 2023)。ただし乳酸のピークはミトコンドリア病に特異的ではない。
- 脳卒中様病変は皮質から皮質下へ広がり、大きくなったあと縮小する。消えることもあれば、層状の皮質壊死や萎縮を残すこともある(Finsterer 2023)。
ミトコンドリア脳筋症の主な病型とMRI(MELAS・MERRFの違い)
| 病型 | 主な症状 | MRIの特徴 |
|---|---|---|
| MELAS | 脳卒中様発作、頭痛・嘔吐、けいれん | 血管支配に一致しない皮質中心の病変が出没 |
| MERRF | ミオクローヌスてんかん、小脳失調、筋力低下 | 小脳や大脳の萎縮が目立つ |
| KSS | まぶたが下がる(眼瞼下垂)、眼球が動きにくい、網膜色素変性、心伝導障害 | 皮質下白質・脳幹・基底核の左右対称な信号変化 |
| Leigh脳症 | 乳幼児期の発達の退行など | 基底核・脳幹の左右対称な病変 |
- MERRFは主にMT-TK遺伝子の病気(約90%)で、ミオクローヌスてんかんが他の病型と区別する特徴とされる(Finsterer 2018)。
- 「顔」で気づかれるのは、まぶたが下がる・目が動きにくい(外眼筋麻痺)といった症状で、KSSなどでみられる。
※子ども〜若い人のくり返す頭痛・けいれん・見えにくさなどが気になるときは、医療機関(神経内科・小児科)に相談してください。
症例 30歳代男性 4週間続く頭痛、数日前からの行動変化、両方向性眼振
FLAIR像で、右側頭葉後部から後頭葉にかけて皮質と皮質下白質を含む広い高信号域がみられ、右側頭極にも高信号域があります。病変の大きさの割に周囲への圧排は軽度です。血液の遺伝子検査でm.3243A>G変異が確認され、MELASと診断されました。
参考文献)頭部画像診断の勘ドコロ P170
- Goto Y, Nonaka I, Horai S. A mutation in the tRNA(Leu)(UUR) gene associated with the MELAS subgroup of mitochondrial encephalomyopathies. Nature. 1990;348(6302):651-653. PubMed
- El-Hattab AW, Adesina AM, Jones J, et al. MELAS syndrome: Clinical manifestations, pathogenesis, and treatment options. Mol Genet Metab. 2015;116(1-2):4-12. PubMed
- Koenig MK, Emrick L, Karaa A, et al. Recommendations for the Management of Strokelike Episodes in Patients With Mitochondrial Encephalomyopathy, Lactic Acidosis, and Strokelike Episodes. JAMA Neurol. 2016;73(5):591-594. PubMed
- Hirano M, Ricci E, Koenigsberger MR, et al. Melas: an original case and clinical criteria for diagnosis. Neuromuscul Disord. 1992;2(2):125-35. PubMed
- Mascalchi M, Montomoli M, Guerrini R. Neuroimaging in mitochondrial disorders. Essays Biochem. 2018;62(3):409-421. PubMed
- Finsterer J. Characteristics of stroke-like lesions on cerebral imaging. Ideggyogy Sz. 2023;76(1-2):5-10. PubMed
- Finsterer J, Zarrouk-Mahjoub S, Shoffner JM. MERRF Classification: Implications for Diagnosis and Clinical Trials. Pediatr Neurol. 2018;80:8-23. PubMed
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