
先に結論:性分化疾患の画像検査は「子宮・腟・性腺がどこにどんな形であるか」を見る検査。中心は超音波、詳しい位置関係はMRI
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| 何か | 染色体・性腺・内外性器の発達が典型的な経過と異なる状態の総称(disorders of sex development:DSD) |
| 画像の役割 | 子宮・腟・性腺の有無と位置、鼠径部・副腎の評価。染色体検査やホルモン検査と組み合わせて使う |
| 超音波 | 新生児では評価の中心。経腹と経会陰の両方から観察(Avni 2019) |
| MRI | 骨盤〜鼠径部の性腺の位置、子宮の痕跡、腟の長さの評価に有用 |
| 大切なこと | 多職種のチームで診療し、所見はできるだけ中立的な言葉で伝える(Avni 2019) |
性分化疾患(DSD)という名前について
2006年、欧州小児内分泌学会(ESPE)と米国Lawson Wilkins小児内分泌学会(LWPES)が組織した50人の専門家による国際会議がコンセンサス声明を出し、それまで「intersex」と呼ばれていた状態に disorders of sex development(DSD)という新しい呼び方と分類を提案しました(Lee 2006、Pasterski 2010)。日本語では「性分化疾患」と訳されます。
診断名は、体のつくりや発達のしくみを医学的に説明するための名前です。その人の性のあり方やアイデンティティを決めるものではありません。新生児の診療は家族にとって負担の大きい場面であり、多職種のチームで対応すること、画像所見の報告にもできるだけ中立的な言葉を使うことが勧められています(Avni 2019)。
超音波(エコー)で見るところ
欧州小児放射線学会(ESPR)の作業部会は2019年、新生児のDSDの画像診断を標準化する提案を出しました。その中で超音波は生殖器の解剖を評価する中心的な検査とされ、高分解能のプローブを用いた経腹走査と経会陰走査の両方を、系統立てて行うよう示されています(Avni 2019)。
| 観察部位(Avni 2019) | 見るポイント |
|---|---|
| 骨盤腔 | 子宮・腟の有無と形、膀胱の背側の構造 |
| 陰唇陰嚢ひだ(genital folds) | 性腺が下降しているか |
| 鼠径部 | 鼠径管内の性腺 |
| 副腎 | 副腎の大きさ・形 |
| そのほかの腹部 | 合併する腎などの所見 |
同じ提案では報告書のテンプレートも示され、MRIや膀胱・生殖器造影は追加の情報が必要な場合に検討するとされています(Avni 2019)。
MRIで見るところ:アンドロゲン不応症(AIS)
アンドロゲン不応症(androgen insensitivity syndrome:AIS)は、アンドロゲン受容体のはたらきが弱い、またははたらかないことで起こり、DSDの原因として多いものの一つです。表現型は受容体の残っている活性の程度によって幅があります(Mongan 2015)。完全型アンドロゲン不応症(CAIS)では、染色体は46,XYで性腺は精巣、表現型は女性です(Chaudhry 2017)。
AIS 12例(完全型 11例、部分型(PAIS) 1例)の術前MRIを手術・病理と照らし合わせた報告では、次の所見がみられました(Xiang 2026)。
| 項目 | MRI所見 |
|---|---|
| 腟 | 全例で盲端に終わる腟 |
| 性腺の位置 | 全例で骨盤内または鼠径部。手術で確認した性腺21/21の位置をMRIで正しく示せた |
| 性腺の信号 | T1強調像で等信号、T2強調像でやや高信号、DWIで高信号・ADCで低信号、軽度〜中等度の造影 |
| 子宮・卵巣 | CAISでは骨盤内に子宮・卵巣の構造なし。PAISの1例では膀胱の背側に子宮に似た組織 |
| 腫瘍 | 1例で性腺周囲の水腫に圧排された結節があり、セルトリ・ライディッヒ細胞腫と診断 |
著者らは、性腺の位置確認には多くの場合造影なしのシーケンスで足り、造影はミュラー管の遺残や合併病変の評価に補助的に役立つと結論しています(Xiang 2026)。鼠径部の性腺は、停留精巣と同じように鼠径管に沿って探します(停留精巣の原因と画像)。
症例 10歳代 アンドロゲン不応症

引用:Radiopaedia(Androgen insensitivity syndrome)
原発性無月経で検査された方のMRIです。膀胱の後ろに、本来あるはずの子宮と子宮頸部が見えません。この症例では腟はほぼ発達しており、別の断面で腹腔内に両側の精巣(周りに小さなミュラー管由来の嚢胞を伴う)が確認されています。
MRIで見るところ:MRKH症候群(46,XX)との違い
原発性無月経で画像検査を受け、AISと並んで鑑別に挙がるのがMayer-Rokitansky-Küster-Hauser(MRKH)症候群です。MRKH症候群の66例の骨盤MRIを検討した報告では、次のような特徴がありました(Hall-Craggs 2013)。
- 痕跡的な子宮(uterine bud)が92%(61例)にみられ、54例は両側、7例は片側
- 子宮の痕跡はいずれも骨盤の外側にあり、対になる卵巣の尾側に一定の位置関係で存在
- 子宮の体積は平均6.4mL(0.4〜80.2mL)。21%で筋層・接合帯・内膜の層構造が見え、機能する内膜による周期的な痛みの例も
- 卵巣は54例で両側にあり、27例で通常と異なる位置(異所性)
- 腟がほとんど認められない例が22例、腟のある44例の腟長は平均2.0cm
| CAIS | MRKH症候群 | |
|---|---|---|
| 染色体 | 46,XY | 46,XX |
| 性腺 | 精巣。骨盤内か鼠径部(Xiang 2026) | 卵巣。異所性のことが多い(Hall-Craggs 2013) |
| 子宮 | 認めない(Xiang 2026) | 痕跡的な子宮を認めることが多い(Hall-Craggs 2013) |
| 腟 | 盲端に終わる | ないか短い |
正常な子宮と卵巣の見え方は子宮体部の正常解剖とMRI、正常卵巣の大きさとMRI画像を参照してください。腟の出口がふさがる処女膜閉鎖では子宮は正常にあり、腟や子宮に月経血がたまる点が異なります(処女膜閉鎖の画像診断)。
性腺の腫瘍と経過観察
CAISで性腺を残したまま成人した人の性腺腫瘍の発生率は、0.8〜22%と幅をもって報告されてきました。性腺摘出術を受けたCAIS 133例の病理を検討した研究では、悪性と前がん病変を合わせた頻度が6.0%、悪性は1.5%(2例、いずれも思春期後)で、性腺は成人早期まで温存できるとする推奨を支持する結果でした。成人期には摘出の選択肢を話し合い、性腺を残す場合は何らかの定期的な経過観察が勧められていますが、理想的な方法はまだないとされます(Chaudhry 2017)。性腺を残す場合の胚細胞腫瘍のリスクと、摘出後のホルモン補充の必要性も指摘されています(Mongan 2015)。
画像では、性腺の大きさの変化や、新たな結節・腫瘤の出現に注意して読影します。無月経など気になる症状があれば婦人科を受診してください。検査や治療の進め方は、主治医や専門のチームと相談しましょう。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 検査は造影剤を使いますか?
AISの性腺の位置確認については、多くの場合造影なしのMRIで足りたと報告されています(Xiang 2026)。造影の要否は目的によって主治医が判断します。
Q2. エコーとMRIはどちらを受けますか?
新生児では超音波が評価の中心で、MRIは追加の情報が必要なときに検討されます(Avni 2019)。思春期以降の無月経の評価では、骨盤から鼠径部まで一度に見渡せるMRIがよく用いられます。
Q3. 子宮が「ない」と言われましたが、痕跡があることもありますか?
MRKH症候群では92%に痕跡的な子宮がみられ、内膜が機能して痛みの原因となる例もあります(Hall-Craggs 2013)。所見の詳しい意味は主治医に確認してください。
参考文献
- Lee PA, Houk CP, Ahmed SF, et al. Consensus statement on management of intersex disorders. International Consensus Conference on Intersex. Pediatrics. 2006;118(2):e488-500. PubMed
- Pasterski V, Prentice P, Hughes IA. Impact of the consensus statement and the new DSD classification system. Best Pract Res Clin Endocrinol Metab. 2010;24(2):187-95. PubMed
- Avni FE, Lerisson H, Lobo ML, et al. Plea for a standardized imaging approach to disorders of sex development in neonates: consensus proposal from European Society of Paediatric Radiology task force. Pediatr Radiol. 2019;49(9):1240-1247. PubMed
- Xiang Y, Wen P, Hu R, et al. MRI analysis of androgen insensitivity syndrome. BMC Med Imaging. 2026;26(1):498. PubMed
- Hall-Craggs MA, Williams CE, Pattison SH, et al. Mayer-Rokitansky-Kuster-Hauser syndrome: diagnosis with MR imaging. Radiology. 2013;269(3):787-92. PubMed
- Chaudhry S, Tadokoro-Cuccaro R, Hannema SE, et al. Frequency of gonadal tumours in complete androgen insensitivity syndrome (CAIS): A retrospective case-series analysis. J Pediatr Urol. 2017;13(5):498.e1-498.e6. PubMed
- Mongan NP, Tadokoro-Cuccaro R, Bunch T, et al. Androgen insensitivity syndrome. Best Pract Res Clin Endocrinol Metab. 2015;29(4):569-80. PubMed
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