
先に結論:大動脈の石灰化
- 何か:体でいちばん太い血管(大動脈)の壁にたまったカルシウム。動脈硬化の目印です。年齢とともに増えます
- 心配か:石灰化そのものを治療することはふつうありません。ただし、心筋梗塞や脳梗塞のリスクがやや高い目印になります
- 大動脈瘤とは別:瘤は血管が「太くふくらむ」病気。石灰化だけなら瘤ではありません
- 次にすること:血圧・コレステロール・血糖・喫煙をかかりつけ医と見直す。「拡張」「瘤」と書かれていたら、その経過観察を優先

大動脈の石灰化とは
大動脈は、心臓から出て胸の中で弓のようにカーブ(大動脈弓)し、背骨の前を通っておなかへ下りていく、体でいちばん太い血管です。動脈硬化が進むと、血管の壁にカルシウムが沈着し、レントゲンやCTで白い線や点として写ります。これが大動脈の石灰化です。
大動脈の通り道は「大動脈の蛇行とは?」で画像つきで説明しています。
検査でどう見えるか
| 検査 | 見え方 | 意味 | 次にすること |
|---|---|---|---|
| 胸部レントゲン | 大動脈弓(左上のふくらみ)のふちに白い弧 | 大動脈弓の動脈硬化 | 危険因子の見直し |
| 胸部CT | 胸の大動脈の壁に白い点・線 | 胸部大動脈の動脈硬化 | 危険因子の見直し。太さ(拡張)の記載も確認 |
| 腹部CT・腰のレントゲン | おなかの大動脈の壁に白い線 | 腹部大動脈の動脈硬化 | 危険因子の見直し。瘤の記載があれば経過観察 |
| 「大動脈瘤」「拡張」の記載 | 血管の太さが大きい | 石灰化とは別の所見 | 指示された時期にCT・エコーで大きさを確認 |
CTは血管の壁の小さな石灰化まで写せるため、健診CTではよく書かれる所見です。米国のMESA研究では、心臓病のない45〜84歳の約6,800人のうち、約28%に胸部大動脈の石灰化がありました(Budoff 2011)。
症例 30歳代男性 高血圧

引用:Radiopaedia(Thoracic aortic atherosclerosis)
体を正面から縦に切った向きの単純CTです。気管の左わきにある大動脈弓(大動脈がアーチ状に曲がる所)の壁に、骨と同じように白く光る石灰化が見えます。下のほう、横隔膜の近くを通る大動脈の壁にも白い石灰化があり、年齢のわりに進んだ動脈硬化と報告されています。
心臓や脳の病気との関係
大動脈の石灰化と、将来の心筋梗塞・脳卒中との関係は、いくつもの研究で調べられています。
- 胸部レントゲンの大動脈弓の石灰化:米国の健診受診者約11万6千人を長く追った研究で、石灰化は年齢・喫煙・高血圧と関係し、ほかの危険因子をそろえても冠動脈の病気のリスクが約1.2〜1.3倍、女性では脳梗塞のリスクが約1.5倍でした(Iribarren 2000)
- 腹部大動脈の石灰化(腰の横向きレントゲン):フラミンガム研究では、石灰化が多いグループほど心血管の病気が多く、最も多いグループでは約1.7〜1.8倍でした(Wilson 2001)
- 腹部大動脈の石灰化を調べた10研究のまとめでは、冠動脈の病気が約1.8倍、脳血管の病気が約1.4倍で、石灰化が強いほどリスクが段階的に上がっていました(Bastos Gonçalves 2012)
- CTの胸部大動脈の石灰化:MESA研究では、女性で冠動脈の病気との関係がみられましたが、男性でははっきりしませんでした(Budoff 2011)
まとめると、大動脈の石灰化は「全身の動脈硬化がある」目印で、リスクの上がり方は「何倍にもなる」というよりほどほどです。心臓の血管そのものの石灰化(冠動脈石灰化)のほうが、心臓病のリスクとより直接に結びつきます。
大動脈瘤との違い
- 石灰化:血管の壁にカルシウムがたまること。太さは変わらない
- 大動脈瘤:血管がこぶのように太くふくらむ病気。大きくなると破裂のおそれがあり、大きさで経過観察や治療を決めます
瘤の壁に石灰化がみられることはありますが、「石灰化がある=瘤がある」ではありません。瘤があるかどうかは、CTやエコーで血管の太さを測ってわかります。結果に「瘤」「拡張」「〇cm」などの記載がなければ、ふつうは石灰化だけを指しています。大動脈瘤の定義や大きさの目安は「大動脈瘤とは?」、日本の診療指針は日本循環器学会などの合同ガイドライン(Ogino 2023)にまとめられています。
また、心臓の出口にある大動脈弁の石灰化は別の所見です。「胸部CTで偶然見つかった大動脈弁の石灰化の対処法」をご覧ください。
次にすること
- 危険因子のチェック:血圧、LDLコレステロール、血糖(糖尿病)、喫煙を、かかりつけ医であらためて確認します
- 生活習慣の見直し:禁煙、減塩、適度な運動、体重管理
- 結果の記載を確認:「瘤」「拡張」「冠動脈石灰化」などほかの記載があれば、そちらの指示(再検査の時期など)を優先します
- 症状があれば受診:胸の痛み、息切れ、手足のしびれ・まひなどがあれば、すぐに医療機関へ
よくある疑問(Q&A)
Q. 若いのに言われました。
A. 大動脈弓の石灰化は、年齢のほか喫煙や高血圧と関係していました(Iribarren 2000)。若い年代で言われた場合は、こうした危険因子がないかを含めて、一度かかりつけ医に相談してください。
まとめ
- 大動脈の石灰化は動脈硬化の目印。年齢とともに増え、珍しくない
- 心臓・脳の血管の病気のリスクがほどほどに上がる目印(研究で約1.2〜1.8倍)
- こぶ(大動脈瘤)とは別。瘤かどうかは血管の太さでわかる
- 血圧・コレステロール・血糖・禁煙をかかりつけ医と見直す
▶ ほかの所見も調べる:健診・人間ドックの画像検査で言われやすい所見一覧
参考文献
- Iribarren C, Sidney S, Sternfeld B, et al. Calcification of the aortic arch: risk factors and association with coronary heart disease, stroke, and peripheral vascular disease. JAMA. 2000;283(21):2810-2815. PubMed
- Wilson PW, Kauppila LI, O’Donnell CJ, et al. Abdominal aortic calcific deposits are an important predictor of vascular morbidity and mortality. Circulation. 2001;103(11):1529-1534. PubMed
- Bastos Gonçalves F, Voûte MT, Hoeks SE, et al. Calcification of the abdominal aorta as an independent predictor of cardiovascular events: a meta-analysis. Heart. 2012;98(13):988-994. PubMed
- Budoff MJ, Nasir K, Katz R, et al. Thoracic aortic calcification and coronary heart disease events: the multi-ethnic study of atherosclerosis (MESA). Atherosclerosis. 2011;215(1):196-202. PubMed
- Ogino H, Iida O, Akutsu K, et al. JCS/JSCVS/JATS/JSVS 2020 Guideline on Diagnosis and Treatment of Aortic Aneurysm and Aortic Dissection. Circ J. 2023;87(10):1410-1621. PubMed
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