
先に結論:冠動脈石灰化(冠動脈石灰化スコア)
- 何か:心臓をとりまく血管(冠動脈)の壁にたまったカルシウム。動脈硬化の目印です
- 心配か:スコアが0なら当面のリスクは低め。100以上では心筋梗塞・脳卒中などのリスクがはっきり高くなります
- 次にすること:血圧・コレステロール・血糖・喫煙を見直し、かかりつけ医か循環器内科に結果を見せて相談。胸の痛みや息切れがあれば早めに受診

冠動脈石灰化とは
冠動脈は、心臓の筋肉に酸素と栄養を届ける血管です。動脈硬化が進むと、血管の壁にプラーク(コレステロールなどのかたまり)ができ、その一部にカルシウムが沈着します。これがCTで白く写るのが冠動脈石灰化です。
石灰化の量を数字にしたものが冠動脈石灰化スコア(CACスコア、Agatston(アガツトン)スコア)です。石灰化の面積と白さ(CT値)をもとに計算する方法で、1990年に報告されました(Agatston 1990)。もともとは心電図に合わせて撮る専用のCT(心電図同期CT)で測ります。
冠動脈の名前や番号は「冠動脈の番号一覧(AHA分類)」で図にしています。
スコアの区分と、将来のリスク
| 石灰化スコア | 意味 | リスクの目安 | 次にすること |
|---|---|---|---|
| 0 | 石灰化なし | 当面のリスクは低め(10年の発症率はおおむね5%未満) | 健診と生活習慣の管理を続ける |
| 1〜99 | 軽度の石灰化 | 動脈硬化が始まっている | 危険因子を見直し、医師とコレステロール治療を相談 |
| 100〜399 | 中等度の石灰化 | 10年の発症率が7.5%を超える群 | かかりつけ医・循環器内科で治療方針を相談 |
| 400以上 | 高度の石灰化 | さらにリスクが高い群 | 循環器内科へ。症状があれば早めに受診 |
※発症率は米国MESA研究(Budoff 2018)の数値。区分の切れ目(100・300・400など)は施設や報告様式で少し異なります。
この区分の根拠になっているのが、米国で約6,800人を追いかけたMESA研究(多民族動脈硬化研究)です。
- スコア0の人と比べ、101〜300の人は冠動脈の病気(心筋梗塞など)のリスクが約7.7倍、300を超える人は約9.7倍でした。スコアが2倍になるごとに、重い心臓発作のリスクが15〜35%ずつ上がりました(Detrano 2008)
- 約11年の追跡では、スコア0の人の10年間の発症率(心筋梗塞・脳卒中など)は1.3〜5.6%、300を超える人では13.1〜25.6%で、スコア100以上はどの年齢・性別でも7.5%超でした(Budoff 2018)
- 逆にスコア0は、調べたさまざまな検査の中で「リスクが低い」ことを示す最も強い目印でした(Blaha 2016)
症例 60歳代男性 脂質異常症があり家族に冠動脈疾患。心臓病のリスク評価のため石灰化スコアCTを受けた

引用:Radiopaedia(Coronary calcium score)
心臓の付け根の高さの単純CTです。大動脈の根元のすぐ横(患者さんの左側)に、白く光る点が集まって見えます。これが左冠動脈の本幹が前下行枝と回旋枝に分かれる所の石灰化で、この方の石灰化スコアは合計235でした。
ふつうの胸部CTで見つかった場合
最近は、肺の検査や健診で撮ったふつうの胸部CT(心電図に合わせない、造影剤なしのCT)で「冠動脈石灰化あり」と書かれることが増えています。
- 米国の心臓CT学会と胸部放射線学会は、心電図同期なしの胸部CTでも冠動脈石灰化を評価して報告するためのガイドラインを出しています(Hecht 2017)
- 肺がん検診の低線量CTでは、「なし・軽度・中等度・高度」という見た目の評価でも、Agatstonスコアと同じように心臓病による死亡と強く関係していました(高度で約7倍。Chiles 2015)
つまり、胸部CTで偶然見つかった石灰化も「動脈硬化がある」という大事な情報です。数字のスコアがなくても「軽度」「高度」などの言葉で書かれていれば、それを主治医に見せて相談しましょう。なお、心臓の弁(大動脈弁)の石灰化は別の所見で、「胸部CTで偶然見つかった大動脈弁の石灰化の対処法」で説明しています。
次にすること
- 結果を持ってかかりつけ医か循環器内科へ:スコアや「軽度・高度」などの記載をそのまま見せます
- 危険因子の確認:血圧、LDLコレステロール、血糖(糖尿病)、喫煙、家族歴をあらためて調べます
- コレステロールの薬の相談:米国のコレステロール診療ガイドラインでは、リスクが中くらいで治療に迷う40〜75歳の人に石灰化スコアを使うことを勧めています。スコア0なら(喫煙者・糖尿病・若くして心臓病になった家族がいる人を除き)薬を待つ選択もあり、1〜99では特に55歳以上で治療寄り、100以上(または同年代の上位25%)では治療が勧められるとしています(Grundy 2019)。日本での治療方針は主治医と相談してください
- 症状があればすぐ受診:歩くと胸が締めつけられる、息切れが増えたなどがあれば、スコアにかかわらず早めに循環器内科へ
心臓の血管の狭さまで調べる冠動脈CTの見方は「冠動脈CT(心臓CT)の見方」で解説しています。
よくある疑問(Q&A)
Q. 石灰化は薬や運動で消えますか?
A. この記事で確認した研究は、石灰化を「消す」ことを調べたものではありません。大切なのは石灰化を減らすことより、心筋梗塞や脳卒中を起こさないことです。血圧・コレステロール・禁煙などの管理を主治医と進めましょう。
Q. スコアが0なら、もう心配いりませんか?
A. スコア0は「当面のリスクが低い」強い目印です(Blaha 2016)。ただしリスクがゼロという意味ではなく、喫煙者や糖尿病の人では0でも治療を考えることがあります(Grundy 2019)。健診は続けましょう。
Q. 症状はないのに、心臓カテーテル検査が必要ですか?
A. 石灰化があるだけで、すぐにカテーテル検査をするとは限りません。症状や他の検査結果をふまえて主治医が判断します。
まとめ
- 冠動脈石灰化は、心臓の血管の動脈硬化の目印。「詰まっている」という意味ではない
- スコア0は低リスク、100以上でリスクがはっきり高くなる(MESA研究)
- ふつうの胸部CTで見つかった石灰化も大事な情報
- 結果を持って主治医・循環器内科へ。症状があれば早めに受診
▶ ほかの所見も調べる:健診・人間ドックの画像検査で言われやすい所見一覧
参考文献
- Agatston AS, Janowitz WR, Hildner FJ, et al. Quantification of coronary artery calcium using ultrafast computed tomography. J Am Coll Cardiol. 1990;15(4):827-832. PubMed
- Detrano R, Guerci AD, Carr JJ, et al. Coronary calcium as a predictor of coronary events in four racial or ethnic groups. N Engl J Med. 2008;358(13):1336-1345. PubMed
- Budoff MJ, Young R, Burke G, et al. Ten-year association of coronary artery calcium with atherosclerotic cardiovascular disease (ASCVD) events: the multi-ethnic study of atherosclerosis (MESA). Eur Heart J. 2018;39(25):2401-2408. PubMed
- Blaha MJ, Cainzos-Achirica M, Greenland P, et al. Role of Coronary Artery Calcium Score of Zero and Other Negative Risk Markers for Cardiovascular Disease: The Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis (MESA). Circulation. 2016;133(9):849-858. PubMed
- Hecht HS, Cronin P, Blaha MJ, et al. 2016 SCCT/STR guidelines for coronary artery calcium scoring of noncontrast noncardiac chest CT scans: A report of the Society of Cardiovascular Computed Tomography and Society of Thoracic Radiology. J Cardiovasc Comput Tomogr. 2017;11(1):74-84. PubMed
- Chiles C, Duan F, Gladish GW, et al. Association of Coronary Artery Calcification and Mortality in the National Lung Screening Trial: A Comparison of Three Scoring Methods. Radiology. 2015;276(1):82-90. PubMed
- Grundy SM, Stone NJ, Bailey AL, et al. 2018 AHA/ACC/AACVPR/AAPA/ABC/ACPM/ADA/AGS/APhA/ASPC/NLA/PCNA Guideline on the Management of Blood Cholesterol. Circulation. 2019;139(25):e1082-e1143. PubMed
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