
先に結論:ICUの胸部X線は「チューブ・ラインの先端」から確認する
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 気管チューブ | 先端は気管分岐部(カリーナ)の3〜5cm上が目安。深すぎると片肺挿管で反対側の肺が虚脱する |
| 胃管・経鼻チューブ | 側孔が食道胃接合部より下にあるか。横隔膜より上で止まっていれば迷入・とぐろを疑う |
| 中心静脈カテーテル | 先端は上大静脈と右心房の境目(cavoatrial junction)。正中を越える、左へ垂直に下りるときは動脈・奇形血管を疑う |
| 肺動脈カテーテル | 先端は左右の主肺動脈の中枢側。肺門を越えて末梢に入っていないか |
| 挿入直後 | 気胸が出ていないか確認する。胸部X線は挿入や位置変更のあとに撮るのが適切とされる |
ICUのポータブル胸部X線の特徴
ICUではベッドサイドで撮るポータブルX線(多くは仰向けでの前後方向撮影)が基本になります。立位の外来X線と違い、体位・吸気の深さ・回旋が毎回少しずつ違うため、チューブの距離は「ずれて見える」ことがあります。撮影条件の確認は胸部レントゲンの撮影条件の確認にまとめています。
ここで大事なのは、読む順番を固定することです。チューブ・ラインの正常位置と異常位置の図解は、Godoy 2012(Part 1の気道・消化管・胸腔のチューブ、Part 2の心血管系のライン)にまとまっています。毎回同じ順番で見ると、忙しいときの見落としが減ります。
| 順番 | 見るもの | 確認すること |
|---|---|---|
| 1 | 撮影条件 | 回旋・吸気・体位・撮影範囲に先端が入っているか |
| 2 | 気道のチューブ | 気管チューブ・気管切開チューブが気管の空気柱の中にあるか |
| 3 | 胃管・食道温プローブ | 先端と側孔の高さ、とぐろ、気管・気管支への迷入 |
| 4 | 血管のカテーテル | 中心静脈・肺動脈カテーテル・大動脈バルーンパンピングなどの先端と走行 |
| 5 | 胸腔ドレーン・ペースメーカー | ドレーンの位置、リードの断裂・異常走行 |
| 6 | 肺・胸膜・縦隔 | 無気肺・気胸・胸水・肺水腫・肺炎。チューブ位置の異常が原因の変化がないか |
| 7 | 前回との比較 | チューブ位置や陰影の変化。比較読影の基本は前回画像と並べること |
気管チューブ
まず気管チューブが気管の空気柱の中にあることを確かめます。位置の基準は、先端から気管分岐部(カリーナ)までの距離です。カリーナはT4〜T5の高さにあり、チューブは気管の中ほどでカリーナの3〜5cm上に先端があるのが望ましいとされています(Sakthivel 2020)。
首の向きでも位置は動きます。首を曲げるとチューブは奥(カリーナ側)に進み、首を反らすと浅くなるため、通常は2cmほど上下に動くことは起こり得ます(Sakthivel 2020)。患者さんの頭の位置を見てから距離を判断してください。
| 異常 | 画像の見え方 | 起こること |
|---|---|---|
| 深すぎる(右主気管支へ) | チューブ先端が右主気管支や中間幹まで入る | 右上葉が虚脱することがある。左肺が全体に虚脱することもある |
| 深すぎる(左主気管支へ) | 先端が左主気管支にある | 左肺が過膨張し、右肺が虚脱する |
| 食道挿管 | チューブが気管の左外側、拡張した食道の中を走る | 正面像だけでは分かりにくく、側面像や斜位像が役立つ |
| 浅すぎる | 先端が声門に近い・気管の上のほう | 抜けやすい |
片肺に深く入ったチューブは、肺が白くなったように見えます。片側の肺が白いときの見分け方でも、挿管の位置は最初に確認する項目です。反対に片側の透過性が上がって見える場面は片側の肺が黒いときを参照してください。
症例 55歳男性 右主気管支への気管挿管

引用:Sakthivel MK, et al. J Clin Imaging Sci. 2020;10:66(Figure 1)、CC BY-NC-SA 4.0(図は加工していません)
左の画像は、ネフローゼ症候群で呼吸困難を起こした55歳男性のポータブルX線です。気管チューブが右主気管支に入っており、左肺全体が虚脱しています。右の画像はチューブを引き戻したあとで、先端はカリーナの3cm上にあり、左肺が再び膨らんでいます。
胃管と食道温プローブ
経鼻胃管などの側孔は食道胃接合部より下にあるのが理想です。位置が浅いと、栄養や薬の逆流・誤嚥の危険があります。重りのついたチューブは先端が高吸収に見えるので見つけやすくなります(Sakthivel 2020)。
横隔膜より上でチューブが止まっているときは、次の3つを考えます(Sakthivel 2020)。
- 気管・気管支に入っている(胃管がカリーナの下で左右の主気管支へ進む)
- 食道の中でとぐろを巻いている
- 挿入が浅く、先端が食道の上のほうにある
判断に迷うときは先端が見えているか、側孔が見えているかを分けて考え、上級医や放射線科医に相談してください。
食道温プローブは、先端がT8〜T9の高さにあるのが適切とされ、頸部や胸部上部の食道で止まっている例がよくあります(Sakthivel 2020)。
中心静脈カテーテル
中心静脈カテーテルの先端は、上大静脈と右心房の境目(cavoatrial junction)が目標です。X線では、気管の右側の分岐(右気管気管支角)とカリーナを基準に、その3〜4cmほど下に当たりますが、吸気の深さ・体位・撮影方向で見かけ上の位置は大きく変わります(Sakthivel 2020)。
先端が高すぎると流量が落ちる・詰まる・血栓ができる、左側からの挿入では上大静脈の壁を傷つけるリスクがあります。低すぎると不整脈のリスクが上がります(Sakthivel 2020)。先端だけでなく、カテーテルの走行もたどります。
| 見え方 | 考えること |
|---|---|
| 正中を越えて反対側へ進む | 動脈への留置を疑う。造影CTで確認した例がある(Sakthivel 2020) |
| 縦に下りて脊椎の左側で終わる | 左上大静脈・重複上大静脈・内胸静脈への迷入・動脈・血管外のいずれか |
| とぐろ・折れ曲がり | 鎖骨下静脈や腕頭静脈の中で巻いていることがある |
| 右心室・肺動脈まで入る | 深すぎる。不整脈のリスクが上がる |
| 途中で途切れる・細くなる | 断片化やピンチオフの有無を確認する(Sakthivel 2020) |
ポート型のカテーテルの見方はCVポートのCT所見でも解説しています。
肺動脈カテーテル・大動脈バルーンパンピング・ペースメーカー
肺動脈カテーテル(スワンガンツカテーテル)は、先端が左右の主肺動脈の中枢側、葉間動脈より手前にあるのが望ましいとされます。先端が末梢に入りすぎると、肺梗塞や肺出血の原因になり、先端より末梢に楔状の浸潤影が出ることがあります。右心系の中でループを作ると、弁の損傷や不整脈の原因になります(Sakthivel 2020)。
大動脈内バルーンパンピング(IABP)は、先端のマーカーが左鎖骨下動脈の起始部より約2cm下(下行大動脈の最上部)にあるのが目安です。高すぎると脳血流を妨げて脳卒中の原因に、低すぎると心筋への効果が下がり、腎虚血の原因になります(Sakthivel 2020)。
ペースメーカー・植込み型除細動器は、リードの断裂・折れ曲がり・異常な走行を確認します。左上大静脈があると、リードが異常な経路を通ることがあります(Sakthivel 2020)。
挿入直後に確認する合併症:気胸
中心静脈カテーテルなどの挿入直後は、気胸がないかを確認します(Sakthivel 2020)。仰向けのX線は気胸を見逃しやすく、外傷や重症患者の仰臥位X線で見えない気胸(occult pneumothorax)の頻度は最大50%に達しうると報告されています(Rierson 2016)。
| 仰向けのX線で気胸を疑う所見 | 内容 |
|---|---|
| deep sulcus sign | 肋骨横隔膜角が深く黒く見える |
| 肺底部の透過性亢進 | 横隔膜の輪郭が普段よりくっきり見える |
| 心縁・縦隔縁のくっきり感 | 心臓の縁に沿って黒い帯が見える |
仰向けでは胸腔内の空気が肺尖ではなく前方や下方に溜まりやすく、立位とは見え方が違います。緊張性気胸は急いで対応が必要なため緊張性気胸の画像所見も確認してください。
毎日撮るべきか:ルーチンのX線の考え方
ICUでは以前から毎日の胸部X線が慣習でした。ACR Appropriateness Criteria(2013年)では、状態が安定している患者や人工呼吸中の患者のポータブルX線は、臨床的な理由があるときだけが適切とされています。一方、気管チューブ・中心静脈ライン・スワンガンツカテーテル・胃管・栄養チューブ・胸腔ドレーンを入れたあとは撮影が適切とされています(Amorosa 2013)。
| 報告 | 内容 |
|---|---|
| Oba 2010(成人ICU、8研究・7,078人) | 毎日のルーチン撮影をやめても、院内死亡・ICU死亡・ICU在室日数に差はなかった |
| Ganapathy 2012(9研究・9,611人) | 制限しても有害性は検出されなかったが、信頼区間が広く、やめて安全かどうかは不確実と結論 |
つまり「毎日撮らなくてもよい可能性が高いが、チューブやラインを触ったあとや状態が変わったときは撮る」と整理できます。ただし、実際の運用は施設や診療科の方針に従ってください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 気管チューブはカリーナから何cm上が正解ですか?
A. 3〜5cm上が目安とされます。首の曲げ伸ばしで約2cm動くことがあるので、頭の位置も一緒に確認します(Sakthivel 2020)。
Q. 中心静脈カテーテルが正中を越えていたらどうしますか?
A. 動脈留置の可能性があります。動脈圧波形や採血の性状も合わせて確認し、すぐに上級医に相談します。造影CTで動脈内の留置が確認された例が報告されています(Sakthivel 2020)。
Q. ポータブルX線で位置が合っていても安心ですか?
A. 位置は撮影条件の影響を受けます。体位・吸気・回旋、そして患者さんの首の向きで見かけの距離は変わります。臨床所見とあわせて判断してください(Sakthivel 2020)。
あわせて読みたい:院内肺炎・NHCAPの画像診断、EGFR・ALK肺癌の画像所見
参考文献
- Sakthivel MK, Bosemani T, Bacchus L, et al. Malpositioned Lines and Tubes on Chest Radiograph – A Concise Pictorial Review. J Clin Imaging Sci. 2020;10:66. PubMed
- Godoy MC, Leitman BS, de Groot PM, et al. Chest radiography in the ICU: Part 1, Evaluation of airway, enteric, and pleural tubes. AJR Am J Roentgenol. 2012;198(3):563-71. PubMed
- Godoy MC, Leitman BS, de Groot PM, et al. Chest radiography in the ICU: Part 2, Evaluation of cardiovascular lines and other devices. AJR Am J Roentgenol. 2012;198(3):572-81. PubMed
- Amorosa JK, Bramwit MP, Mohammed TL, et al. ACR appropriateness criteria routine chest radiographs in intensive care unit patients. J Am Coll Radiol. 2013;10(3):170-4. PubMed
- Oba Y, Zaza T. Abandoning daily routine chest radiography in the intensive care unit: meta-analysis. Radiology. 2010;255(2):386-95. PubMed
- Ganapathy A, Adhikari NK, Spiegelman J, et al. Routine chest x-rays in intensive care units: a systematic review and meta-analysis. Crit Care. 2012;16(2):R68. PubMed
- Rierson D, Bueno J. Pneumothorax in the Supine Patient: Subtle Radiographic Signs. J Thorac Imaging. 2016;31(4):W16-22. PubMed
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