肝門部胆管癌 Bismuth-Corlette分類とCT・MRI

肝門部に胆管狭窄があって「Klatskin腫瘍疑い」と書きました。レポートには何を書けば外科の役に立ちますか?
大事なのは「胆管がどこまで広がっているか(Bismuth-Corlette分類)」「門脈・肝動脈に浸潤があるか」「肝葉の萎縮があるか」の3つです。IgG4関連硬化性胆管炎やPSCとの鑑別も一緒に考えましょう。

先に結論:肝門部胆管癌(Klatskin腫瘍)の画像診断

ポイント 内容
何か 左右肝管合流部付近(肝門部)に発生する胆管癌。胆管に沿って長軸方向に進展しやすい
レポートの3本柱 ①胆管進展範囲(Bismuth-Corlette分類)②門脈・肝動脈浸潤(特に残す側)③肝葉萎縮の有無
使う検査 多時相の造影CT(血管と進展)+胆管像(MRCPなど)
鑑別 IgG4関連硬化性胆管炎、原発性硬化性胆管炎(PSC)など。急峻な途絶は癌を示唆


肝門部胆管癌のBismuth-Corlette分類の表

肝門部胆管癌(Klatskin腫瘍)とは

肝門部胆管癌(perihilar cholangiocarcinoma)は、左右肝管の合流部付近に生じる胆管癌で、Klatskin腫瘍とも呼ばれます。胆管癌は解剖学的に肝内・肝門部・遠位に分けられ、肝門部と遠位をあわせて肝外胆管癌と呼びます。腫瘤を作る肝内胆管癌とは画像の見え方も治療方針も異なるため、まず「どこの胆管癌か」を意識して読むことが大切です。肝内胆管癌については胆管細胞癌(肝内胆管癌)の記事をご覧ください。

肝門部胆管癌は胆管に沿って長軸方向に進展し、周囲の血管・神経へ浸潤しやすい腫瘍です。根治が期待できるのは組織学的断端陰性(R0)の切除であり、そのため術前画像には「どこまで切ればよいか」「切れるか」を判断する情報が求められます(Jarnagin 2001)。

Bismuth-Corlette分類

胆管内の進展範囲を示す分類で、術式選択の目安として現在も広く使われています。Bismuthらは各型に対して次の術式を推奨しました(Bismuth 1992)。

型 腫瘍の範囲 Bismuthらが推奨した術式(1992)
Ⅰ型 総肝管にとどまり、左右肝管合流部に達しない 局所切除(胆管切除)
Ⅱ型 左右肝管合流部に及ぶが、左右肝管には及ばない 局所切除+尾状葉(S1)切除
Ⅲa型 合流部から右肝管(右の二次分枝)へ進展 局所切除+S1切除+右肝切除
Ⅲb型 合流部から左肝管(左の二次分枝)へ進展 局所切除+S1切除+左肝切除
Ⅳ型 左右両側の二次分枝へ進展(または多中心性) 肝切除+肝移植(当時の推奨)

※Ⅳ型の扱いは施設や時代で異なります。現在の切除可否は、胆管進展だけでなく血管浸潤・萎縮・残肝機能を合わせて判断します。

ただしBismuth-Corlette分類は胆管内の広がりだけを表す分類で、血管浸潤や萎縮は含みません。そのためMemorial Sloan Kettering(Blumgart)の術前ステージングでは、胆管進展範囲・門脈浸潤・肝葉萎縮の3つを組み合わせて評価し、切除可能性・R0切除の可能性・生存と相関することが225例で示されました(Jarnagin 2001)。術前評価では、このBlumgart分類が切除可能性と予後の情報を併せ持つ点で有用とされています(Ellis 2022)。

切除可能性評価で見るポイント

1. 胆管進展(左右の二次分枝まで)

  • 右側は右前区域枝・右後区域枝の分岐、左側は門脈臍部(U point)付近まで腫瘍が及んでいるかを確認します。
  • 残す側の胆管に「切離できる余地」があるかが、肝切除の左右を決める根拠になります。
  • 胆管・肝動脈の走行変異(北回り・南回り)も切離線に関わります。→胆管・肝動脈の北回り・南回りの記事

2. 門脈・肝動脈浸潤

  • 門脈本幹・左右枝、固有肝動脈・左右肝動脈と腫瘍との接触範囲を、動脈相・門脈相の薄層像とMPRで評価します。
  • 特に温存する側の血管に浸潤があるかが重要です。右肝切除なら左肝動脈・門脈左枝、左肝切除なら右肝動脈・門脈右枝を見ます。
  • CTの診断能はメタアナリシスで、胆管進展の正診率86%、門脈浸潤の感度89%・特異度92%、肝動脈浸潤の感度83%・特異度93%と報告されています。一方、リンパ節転移の感度は61%と低めです(Ruys 2012)。

3. 肝葉萎縮

  • 胆管閉塞と門脈浸潤が同じ側に重なると、その肝葉は萎縮し、反対側は代償性に肥大します(atrophy-hypertrophy complex)。
  • 萎縮はBlumgart分類の構成要素です(Jarnagin 2001)。萎縮側は機能が落ちているため、どちらを切除側にするかを考える手がかりになります。
  • 残肝予定量(FLR)はCT volumetryで評価し、FLRが40%を超え胆管炎がなければ、術前ドレナージや門脈塞栓をせず切除を考慮しうるとされます(Ellis 2022)。

4. その他

リンパ節転移・腹膜播種・肝転移の有無も確認します。遠隔転移の頻度は肝胆道系腫瘍の遠隔転移の記事にまとめています。

MRCPの役割

  • 術前評価には多時相造影CTに加えて、何らかの胆管像による評価が鍵とされています(Ellis 2022)。MRCPは非侵襲的に胆管全体を描出でき、閉塞の上流で互いに交通しなくなった胆管枝も描出できるのが利点です。
  • 一方で、MRCP単独でのBismuth-Corlette分類の判定は、ERCPを基準とした検討で完全一致52%にとどまり(Martin 2026)、造影CT・MRIの胆管壁肥厚や造影効果と合わせて判断する必要があります。
  • MRCPの撮像法・前処置はMRCP検査の記事を参照してください。

症例 60歳代男性 黄疸(潰瘍性大腸炎で大腸全摘後)

肝門部胆管癌(Klatskin腫瘍) MRCP 冠状断MIP
引用:Radiopaedia(Klatskin tumor – hilar cholangiocarcinoma)

MRCPで、左肝管が著明に拡張し、左右肝管の合流部から総肝管にかけて狭窄しています。総胆管は拡張しておらず、肝門部で胆管がせき止められていることがわかります。閉塞は左肝管側で最も強い所見です。

IgG4関連硬化性胆管炎・PSCとの鑑別

肝門部の胆管狭窄は癌だけではありません。とくにIgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)はステロイドで改善する疾患で、肝門部胆管癌と誤認されて切除される例がいまも報告されています。

肝門部胆管癌 IgG4関連硬化性胆管炎 PSC
狭窄の形 急峻な途絶(abrupt narrowing)が多い 比較的なだらかな狭窄 多発性の短い狭窄と拡張(数珠状)
壁肥厚 狭窄部に限局 狭窄のない部分まで連続した壁肥厚、胆嚢壁にも及ぶことがある skip lesion(飛び飛び)
その他の手がかり 腫瘤・血管浸潤・リンパ節腫大 自己免疫性膵炎、腎病変など他臓器病変、血清IgG4高値 肝実質の変化を伴いやすい
  • IgG4-SCと胆管癌(腫瘤のない例)の比較では、総胆管の急峻な狭窄は胆管癌で有意に多く(読影者1:68.4% vs 6.7%)、壁肥厚・壁の造影効果・膵管拡張では差がありませんでした(Swensson 2019)。急峻な途絶がなければIgG4-SCも鑑別に入れる、というのが実践的な結論です。
  • IgG4-SCとPSCのMRI比較では、IgG4-SCで連続性の胆管壁肥厚、胆嚢病変、総胆管の片側壁厚2.5mm超が多く、狭窄の部位や長さでは区別できませんでした(Tokala 2014)。
  • 日本のIgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準2020では、MRCP所見が診断項目に加わり、多施設検証で感度99.0%、胆管癌に対する特異度100%、PSCに対する特異度97.5%と報告されています(Naitoh 2026)。

詳しくはIgG4関連胆管炎の記事、PSCの記事をご覧ください。

次にすること

  • 肝門部胆管狭窄をみたら、胆管ドレナージやステント留置の前に、多時相造影CTと胆管像の評価がそろっているかを確認します(Ellis 2022)。
  • レポートには「Bismuth-Corlette型」「左右の二次分枝への進展」「門脈・肝動脈(左右別)の浸潤」「萎縮の側」「リンパ節・遠隔転移」を項目立てで記載すると、外科との議論がスムーズです。
  • 膵病変や他臓器病変があるとき、狭窄がなだらかなときは、IgG4-SCを鑑別に挙げ、血清IgG4や生検を含めて主治医チームで検討します。

よくある疑問(Q&A)

Q1. Bismuth-Corlette分類だけで切除できるかどうか決まりますか?

決まりません。Bismuth-Corlette分類は胆管内の広がりを示すもので、門脈・肝動脈浸潤や萎縮は含みません。これらを組み合わせたBlumgart分類のほうが切除可能性をよく予測します(Jarnagin 2001)。

Q2. CTでリンパ節転移は分かりますか?

CTのリンパ節転移の感度は61%と高くありません(Ruys 2012)。CTで腫大がなくても転移を否定できない点に注意が必要です。

Q3. 血清IgG4が正常ならIgG4関連硬化性胆管炎は否定できますか?

否定できません。血清IgG4が正常のIgG4-SC症例も報告されており、画像所見・他臓器病変・組織所見を合わせて判断します(Swensson 2019では測定した6例中、陽性は2例でした)。最終的な判断は主治医にご相談ください。

参考文献

  1. Bismuth H, Nakache R, Diamond T. Management strategies in resection for hilar cholangiocarcinoma. Ann Surg. 1992;215(1):31-8. PubMed
  2. Jarnagin WR, Fong Y, DeMatteo RP, et al. Staging, resectability, and outcome in 225 patients with hilar cholangiocarcinoma. Ann Surg. 2001;234(4):507-17. PubMed
  3. Ruys AT, van Beem BE, Engelbrecht MR, et al. Radiological staging in patients with hilar cholangiocarcinoma: a systematic review and meta-analysis. Br J Radiol. 2012;85(1017):1255-62. PubMed
  4. Ellis RJ, Soares KC, Jarnagin WR. Preoperative Management of Perihilar Cholangiocarcinoma. Cancers (Basel). 2022;14(9):2119. PubMed
  5. Martin A, Bekdache O, Meyer A, et al. Accuracy of automated 3D biliary tract reconstruction compared to ERCP to assess Bismuth-Corlette classification in patients with perihilar cholangiocarcinoma. Dig Liver Dis. 2026;58(5):685-692. PubMed
  6. Swensson J, Tirkes T, Tann M, et al. Differentiating IgG4-related sclerosing cholangiopathy from cholangiocarcinoma using CT and MRI: experience from a tertiary referring center. Abdom Radiol (NY). 2019;44(6):2111-2115. PubMed
  7. Tokala A, Khalili K, Menezes R, et al. Comparative MRI analysis of morphologic patterns of bile duct disease in IgG4-related systemic disease versus primary sclerosing cholangitis. AJR Am J Roentgenol. 2014;202(3):536-43. PubMed
  8. Naitoh I, Nakazawa T, Kubota K, et al. Multicenter Validation Study of the Clinical Diagnostic Criteria for IgG4-Related Sclerosing Cholangitis 2020 in Japan. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2026;33(4):294-303. PubMed

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