人間ドックなどで撮影されるMRI検査の一つに、MRCP(読み方はそのまま「エムアールシーピー」)があります。
主に胆管や膵臓の膵管を評価するための検査なのですが、アルファベットが並んでわかりにくいですよね。
そこで今回は、
- そもそもMRCP検査とはどんなものか
- どんな病気がわかるのか
- 造影剤は使うのか
- 前処置
- 撮影方法
について実際のMRCPの画像や図(イラスト)を用いてまとめました。
この記事を読み終わる頃には、MRCPについての疑問は解消されているでしょう!
ではいきます!
MRCP検査とは?
MRCP検査とは、Magnetic Resonance cholangiopancreatography(日本語では磁気共鳴胆管膵管撮影)の頭文字を取ったもので、主に
- 胆嚢(たんのう)
- 胆管(たんかん)
- 膵管(すいかん)
を同時に描出して、評価するMRI検査の1つです。
主に胆嚢の胆汁や膵臓で産生される膵液と言った液体(水)を強調した撮影方法です。
要するに「液体があるところを抽出した画像」ということです。
MRCP検査で観察するお腹の臓器を前から見ると次のようになります。
このうち液体が存在するところは次の場所です。
つまり、
- 胆管の胆汁
- 胆嚢の胆汁
- 膵管の膵液
- 消化管の消化液・腸液
となります。
MRCPとは、この液体があるところだけを切り出して画像化したものです。
ただし十二指腸など消化管の中の液体は本来見たいところではないので後述する経口造影剤でできるだけ見えなくします。
ですので、MRCPのイメージとしては、次のようになります。
実際のMRCPの画像は次のようになるのですが、なぜこのような見え方をするのかがこれでわかりましたね。
それぞれの部位の名称は以下のようになります。
この画像はMIP像と呼ばれるもので、回転させて、位置関係や病変を観察することができます。
回転させた動画がこちら。
では、次にこのMRCPの画像でわかる胆嚢・胆管・膵管(膵臓)の病気にはどのようなものがあるのかをみていきましょう。
胆嚢でわかること
胆嚢では、
- 胆嚢結石(胆石)
- 胆嚢ポリープ
- 胆嚢がん
- 胆嚢腺筋腫症
- 急性胆嚢炎
- 慢性胆嚢炎
などの有無を評価することができます。
症例 胆嚢結石
MRCPのMIP像で胆嚢に欠損像を認めており、胆嚢結石と診断されました。
症例 胆嚢腺筋腫症
MRCPのMIP像で胆嚢底部にspot状の高信号を複数認めています。
Rokitansky-Aschoffsinus(RAS)と呼ばれる粘膜上皮の筋層内への深い陥入を示唆する所見であり、底部型の胆嚢腺筋腫症に特徴的です。
症例 急性胆嚢炎
MRCPのMIP像で胆嚢の腫大及び胆嚢周囲に液貯留を認めています。(ぼんやりした高信号(白い)ものが液体貯留・浮腫性変化を示唆します。)
急性胆嚢炎と診断されました。
胆管でわかること
胆管では
- 胆管の拡張・狭窄
- 総胆管結石
- 胆管腫瘍(胆管がん)
などの有無を評価することができます。
症例 総胆管結石
MRCPのMIP像で総胆管に欠損像を2ヶ所認めており、総胆管結石を疑う所見です。
総胆管結石により胆道が行き止まりとなり、肝内胆管〜総胆管に拡張所見を認めています。
総胆管結石による閉塞性黄疸を疑う所見です。
膵管・膵臓でわかること
- 膵管の拡張・狭窄
- 膵腫瘍(膵がんなど)
- 膵嚢胞
- 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
- 慢性膵炎
- 急性膵炎
などの有無を評価することができます。
症例 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
MRCPのMIP像で膵体部において、主膵管と連続する多房性嚢胞性病変を認めています。
分枝型の膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)を疑う所見です。
症例 慢性膵炎
MRCPのMIP像で膵体尾部において主膵管の拡張所見を認めています。
これを単純CTで見てみると拡張している膵管の下流に膵石を認めています。これが原因で膵管が拡張していることがわかります。
また、膵体尾部にはこれ以外にも石灰化を認めています。
慢性膵炎を疑う所見です。
(ダイナミックCTで膵癌の合併は否定的でした。)
MRCPとMRIは違うの?
MRCPとMRIは別物ではなく、MRI検査の1つにMRCPがあります。
ですので、MRCPを撮影するときは、MRIの装置に入って撮影します。
MRCP検査では造影剤を使うの?
MRCP検査では造影剤(ボースデル®︎という名前です)を使う場合と使わない場合がありますが、造影剤を使った方が画像が綺麗に描出されます。
MRCPで使う造影剤は他のMRI造影剤と異なり、経口摂取します。
通常は静脈から注射をして血管内に入れますが、この造影剤は液体を口から飲むのです。
なぜMRCPでこの造影剤を用いた方が綺麗に見えるのかというと、先ほど説明したように十二指腸などの消化管にも水は存在します。
しかし、消化管の水は見たい胆管や膵管の状態を邪魔することがあります。
この造影剤を使うことで、十二指腸などの消化管の水を消してくれるため、見たい胆管や膵管がより見やすくなります。
この造影剤を使わない場合、次のように見えることがあります。
症例 70歳代男性 膵IPMNのフォロー
膵体部の嚢胞性病変であるIPMNのフォローで撮影されました。
造影剤(ボースデル®︎)を使っていない場合は、上のように消化管内の液体の信号を拾ってしまい、非常に見えにくい画像となることがあります。
MRCPで用いる造影剤(ボースデル®︎)についてはこちらに詳しくまとめました。
→【画像あり】MRCPで用いるMRI用経口消化管造影剤ボースデルとは?副作用は?
MRCPの前処置は?
MRCPの前処置としては、検査4時間前からの絶食、2時間前からの絶飲が必要です。
食事をとると、胆嚢は収縮してしまい、胆嚢の状態が適切に見えません。
またMRI検査ですので、金属類やカード類などは検査室に持って入ることができません。
MRCPの検査方法は?
検査前に検査着に着替えてもらい、造影剤を使う場合は、経口造影剤をコップで飲んでもらいます。
その後MRI装置の中に入って撮影をします。
撮影時間は、20分程度です。
撮影には息どめが必要ですので、検査技師さんのマイクの指示に従って息どめをします。
MRCPの撮影プロトコルは?
施設にもよりますが、一例として以下の撮影プロトコルがあります。
- 水強調像のT2強調像(SSFSEやHASTE法など)冠状断像
- 水強調像のT2強調像(SSFSEやHASTE法など)横断像
- in-phase & opposed-phase gradient echo法によるT1強調像 横断像
- 3D-T2強調像(SPACE、Cube、VISTAなど)MIP像
- 拡散強調像(DWI)横断像
実際の画像はこちら。
丸の中の番号は上の数字と一致しています。
③は左側がin-phase、右側がopposed-phaseです。
MRCP検査で看護で注意する点は?
看護で注意すべき点としては、まずMRCP検査はMRI検査ですから、体内に金属類がないかなどの問診を再度行います。
MRCPに特異的な注意点としては、
- 息どめがあるので、検査の途中で眠らないようにすること
- 経口造影剤を使う場合は、本当は200mlだけど飲めない場合は150ml程度でも良いこと(ただし施設にもよる)
が挙げられます。
MRCPとERCPの違いは?
MRCPと1文字違いでERCPがあります。
こちらは、上部内視鏡(胃カメラ)を飲んで、総胆管が十二指腸に開口するVater乳頭から逆行性に進み、X線透視下で造影剤を流して胆道や膵管を描出する手技です。
- MRCPはMRI検査の一つでMRI装置で撮影。
- ERCPは胃カメラを飲んで、直接総胆管や膵管に管を入れて、X線透視下で造影剤を流して撮影。
評価したいところは同じところですが、一文字違うだけで、その方法は全く異なります。
胃カメラを飲みますし、膵炎などの合併症もあり、当然後者のERCPの方が侵襲性は高い検査です。
最後に
人間ドックや胆嚢・胆道・膵臓などの精査(精密検査)で行われることがあるMRCP検査について
- MRCP画像は水(液体)を強調した画像であること
- MRCP検査で胆嚢・胆管・膵臓でわかる病気
- 造影剤が経口であり、消化管内の液体を見えにくくする働きがあること
- 前処置・検査方法・撮影プロトコル・看護で注意すること
- ERCPとの違い
をまとめました。
MRCPについての疑問は解消されましたでしょうか?
実際の画像や症例もいくつか載せましたのでイメージもつきやすいと思います。
参考になれば幸いです( ^ω^ )
MRIで結石はどのようにうつるのでしょうか.T1WI高信号,T2WI低信号でしょうか.それとも結石の種類などにもよるのでしょうか.またairや残存した造影剤との区別はどのようにしたらいいでしょうか.