前鋸筋(ぜんきょきん:anterior serratus muscle)は、胸郭の外側部から肩甲骨にかけて位置する筋肉で、肩甲骨の安定性や動きに大きく関与します。
胸部CTや上腹部CTでは外側胸壁の筋としてしばしば描出されます。
前鋸筋のCT画像の解剖
胸部のCTやMRI画像を読む上で前鋸筋がどの場所にあるのか解剖をチェックしましょう。
CTの横断像では以下の場所に前鋸筋があります。

胸郭の外側部、肋骨と肩甲骨の間に位置し、CT横断像では、肋骨の外側に沿って走り、肩甲骨の前面に入り込む薄い筋板として確認できます。
自分でCT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→前鋸筋(anterior serratus muscle)のCT画像の解剖
前鋸筋の起始と停止
起始
- 第1〜8肋骨、あるいは第1〜9肋骨の外側面
- 各肋骨の外側壁〜前外側壁に鋸歯状の筋束として付着
停止
- 肩甲骨内側縁前面
- 上角前面
- 内側縁前面
- 下角前面
すなわち、前鋸筋は肋骨から起こり、肩甲骨の前面に回り込んで停止する筋である。停止部は肩甲骨の後面ではなく前面である点が重要であり、これが肩甲骨を胸郭へ引き寄せて保持する作用につながる。
前鋸筋の筋束構成
前鋸筋は、上部、中部、下部の筋束に分けて考えると理解しやすい。
- 上部筋束:上位肋骨から起こり、肩甲骨上角付近に停止する
- 中部筋束:中位肋骨から起こり、肩甲骨内側縁に停止する
- 下部筋束:下位肋骨から起こり、肩甲骨下角に停止する
このうち下部筋束は、上肢挙上時の肩甲骨上方回旋にとくに重要である。CTでは個々の筋束を完全に分けて認識することは難しいが、上位では薄く、下位ではやや厚みをもって胸壁に沿う筋として観察される。
前鋸筋の作用
- 肩甲骨の前方移動(protraction)
- 肩甲骨を胸郭へ密着させる固定作用
- 肩甲骨の上方回旋
- 上肢挙上時の肩甲胸郭リズムへの関与
- 補助呼吸筋としての作用
前鋸筋は「ボクサー筋」とも呼ばれ、肩甲骨を前方へ引き出す作用をもつ。また、僧帽筋とともに肩甲骨を上方回旋させることで、上肢の挙上を可能にする。さらに肩甲骨を胸郭に押しつける作用があるため、この機能が低下すると肩甲骨内側縁が浮き上がる翼状肩甲を生じる。
神経支配
前鋸筋は長胸神経に支配される。一般に神経根レベルはC5〜C7とされる。長胸神経は前鋸筋の表層を比較的長く走行するため、牽引、圧迫、手術、外傷などで障害されやすい。長胸神経麻痺では前鋸筋萎縮をきたし、画像上は左右差や筋量低下として認識されることがある。
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参考文献:
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- Lung K, et al. Anatomy, Thorax, Long Thoracic Nerve. StatPearls Publishing; 2023.
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- Martin RM, Fish DE. Scapular winging: anatomical review, diagnosis, and treatments. Curr Rev Musculoskelet Med. 2008;1(1):1-11.
- Choi JY, et al. Incidental Finding of Unilateral Isolated Aplasia of Serratus Anterior Muscle on Chest Radiography. J Korean Soc Radiol. 2014;71(4):178-181.
- Gilmartin D, et al. The Serratus Anterior Muscle on Chest Radiographs. Radiology. 1979;131(3):629-632.
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