誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia)
- 高齢者や脳血管障害、口腔・咽頭・喉頭疾患、食道疾患などの基礎疾患、嚥下障害を有する症例では、誤嚥性肺炎が増える。
- 従来は嘔吐に伴う多量の誤嚥による顕性誤嚥下または化学性肺炎が原因といわれていたが、最近では食事中のむせなどからの誤嚥や睡眠中に口腔内物が下気道に落ち込む不顕性誤嚥が主な原因といわれている。誤嚥された口腔内細菌や胃酸などが、炎症の原因となる。
- 原因菌としては、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)、プレボテラ属(Prevotella)などの嫌気性菌、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、エンテロバクターなど。
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誤嚥性肺炎の画像所見
- 基本的に左右の中下肺野背側を中心に陰影が生じる。
- 気管支の走行角度の関係で、右側に多い。
- 比較的中枢側の気管支壁肥厚が高頻度で見られる。
- 背側方向に開口する気管支側枝の領域が最初に侵され、肺の内側に粒状炎症巣を形成しやすい。
- 高齢者や基礎疾患を有する症例で、背側肺野中心のコンソリデーション、斑状影を見た場合、誤嚥性肺炎が第一選択となる。
胃液を誤嚥すると良くない。って聞いたことがあるんですけど、それも誤嚥性肺炎ですよね??
その通りです。上述した誤嚥性肺炎が一般的ですが、一口に誤嚥性肺炎といっても、誤嚥性肺炎には3種類あります。胃内容物の誤嚥はMendelson症候群(メンデルソンしょうこうぐん)といいます。
誤嚥性肺炎の種類
Mendelson症候群
- 胃内容物の誤嚥(aspiration)によって起こる化学的肺炎(chemical pneumonia)が主因。別名acid aspiration pneumoniaともいわれる。
- 発症すると死亡率が62〜70%ときわめて高い。
- 原因:手術中、パーキンソニズム、片麻痺、脳卒中、脳腫瘍、DM、尿毒症などの意識障害
- 治療にステロイドを用いることには賛否両論があるが、抗炎症作用を期待して病初期に用いることには賛成意見が多い。
- ARDSを発症することがあり、Mendelson症候群として有名である。※語句の整理:多量の胃酸の吸引→化学的なARDS=Mendelson syndrome。
- 画像所見としては背側荷重部の肺野を中心に広範な浸潤影、濃厚なびまん性のすりガラス陰影が出現することを特徴とする。
- pH2.5以下の胃酸の大量誤嚥によって引き起こされる重篤な塩酸肺障害による急性肺障害(ALI)/急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome;ARDS)が主体であり、画像所見もALI/ARDSに類似する。
症例 70歳代男性
Mendelson症候群と診断された。
びまん性嚥下性細気管支炎
- 少量の反復性、不顕性誤嚥。
- RB周囲の炎症細胞浸潤、異物巨細胞。
- 閉塞性パターン(-)
- 誤嚥性肺炎の16%
▶画像所見:
- 小葉中心性結節。
- 過膨張は少ない。
参考)誤嚥性肺炎の危険因子
- 神経学的要因:意識障害、反回神経麻痺、脳卒中、Parkinson病、仮性球麻痺、てんかん発作
- 機械的要因:頭頚部手術、イレウス、腹部手術、経鼻胃管、気管内挿管、気管切開
- 他の要因:歯科疾患、胃食道逆流症、糖尿病性胃運動低下、Trendelenburg体位