先に結論:泡状外脊索症(ecchordosis physaliphora)
- 泡状外脊索症は胎生期の脊索の遺残からできる良性の小さな病変で、多くは斜台の背側(橋の前)に偶然見つかります
- MRIではT2強調像で高信号、造影されない小病変で、斜台背側の小さな骨の突起(茎)とつながることがあります
- 脊索腫は造影され、骨を壊して大きくなるのが違いで、小さく・造影されず・変化しないなら泡状外脊索症と考えます
泡状外脊索症(ecchordosis physaliphora)は、胎生期に存在する脊索(notochord)細胞の遺残に由来する良性病変であり、主に斜台背側(橋前槽)の正中部に発生します。
多くの場合は偶発的に発見され、症状を伴わないため、脊索腫(chordoma)との鑑別が重要となります。
泡状外脊索症の特徴
- 良性の病変で、脊索遺残による過誤腫的な病変とされ、増殖や浸潤はしない(Bozer 2025)
- 剖検で約2%、頭蓋底を含むMRI 300件の検討では1.7%に見られた(Mehnert 2004)
- 脊索遺残由来の小病変で、無症候性
- 成人・高齢者のMRIで偶発的に発見されることが多い。ただしまれに症状を出すことがあり、症候性60例の系統的レビューでは頭痛(55%)と髄液鼻漏(32%)が多く、77%が橋前部に位置し、75%で手術が行われていた(Gupta 2023)。
好発部位
- 斜台(clivus)の背側〜橋前槽
- 正中構造に沿って位置し、骨破壊は認めない
※clivus(クリバス)とは、頭蓋底の一部で、後頭骨と蝶形骨により形成される斜面状の骨の領域。「clivus」はラテン語で「斜面」や「坂道」を意味し、実際にこの部位の形状がなだらかな斜面状であることに由来。
MRIによる画像所見
- T1強調像:低信号または等信号
- T2強調像:高信号
- 造影効果:造影されない(造影の有無と症状の有無が脊索腫との鑑別で信頼できる所見とされる。Mehnert 2004)
- 骨破壊や周囲構造への浸潤なし
- 大きさと茎:8例の検討で平均の最大径は1.1cm(0.6〜1.8cm)、5例(62.5%)にT2強調像で低信号の茎(斜台とつながる部分)が見られ、平均3.6年の経過観察で大きさは変わらなかった(Park 2017)
症例 10歳代 頭痛

引用:Radiopaedia
橋の腹側にDWI淡い高信号、T2WI高信号で造影効果を有さない腫瘤を認めています。
泡状外脊索症(ecchordosis physaliphora)を疑う所見です。
脊索腫との鑑別ポイント
| 特徴 | 泡状外脊索症 | 脊索腫 |
|---|---|---|
| 病理分類 | 良性(脊索遺残) | 悪性腫瘍(局所浸潤・再発しやすい) |
| 画像所見 | 小さく、造影されず、骨破壊なし | 造影され、骨破壊あり、浸潤性 |
| T2WI信号 | 高信号 | 高信号(T2の信号だけでは区別しにくい) |
| 臨床症状 | 多くは無症状(まれに頭痛・髄液鼻漏) | 症状を伴うことが多い |
| 治療 | 原則として不要 | 手術+放射線治療 |
Bozer 2025、Mehnert 2004、Gupta 2023をもとに作成。
用語の整理:脊索・脊索腫・泡状外脊索症
- 脊索(notochord):胎児期に体の中心軸となる棒状の組織。のちに椎間板の髄核などになり、ほかは消えていきます。
- 脊索腫(chordoma):脊索の遺残から生じる悪性腫瘍。頭蓋(斜台)に生じるものが約40%を占めます(Bozer 2025)。
- 泡状外脊索症(ecchordosis physaliphora):脊索の遺残が斜台の背側に残った良性の小病変。「physaliphora」は泡のような空胞をもつ細胞(担空胞細胞)に由来する名前です。
「脊索症」という単独の病名は一般的ではなく、脊索に由来する病変としては主に上の2つを区別します。
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参考文献
- Park HH, Lee KS, Ahn SJ, et al. Ecchordosis physaliphora: typical and atypical radiologic features. Neurosurg Rev. 2017;40(1):87-94. PubMed
- Mehnert F, Beschorner R, Küker W, et al. Retroclival ecchordosis physaliphora: MR imaging and review of the literature. AJNR Am J Neuroradiol. 2004;25(10):1851-1855. PubMed
- Gupta RK, Reddy TA, Gupta A, et al. An Ecchordosis Physaliphora, a Rare Entity, Involving the Central Nervous System: A Systematic Review of the Literature. Neurol Int. 2023;15(4):1200-1211. PubMed
- Gökoğlu A, Doğan S, Orunoğlu M, et al. Clinical and Radiologic Follow-Up in Ecchordosis Physaliphora: A Case Series and Literature Review. World Neurosurg. 2024;191:e48-e61. PubMed
- Bozer A, Pekçevik Y. Clival and paraclival pathologies: imaging features and differential diagnosis. Diagn Interv Radiol. 2025;31(6):619-629. PubMed
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