Riedel葉(リーデルよう)(Riedel’s lobe)は、肝臓の右葉が舌状に下方へ突出した構造で、正常変異(解剖学的バリエーション)の一つです。画像診断で腫瘤と誤認されやすいため、正確な知識と所見の理解が求められます。
本記事では、Riedel葉の特徴、鑑別診断、臨床的意義をわかりやすく解説します。
Riedel葉とは?|定義と発生機序
Riedel葉は、肝右葉の下縁が舌状に延長した肝実質であり、腫瘤や異常としてではなく、先天的な正常解剖のバリエーションとして分類されます。1888年にCarl Ludwig Riedelによって報告され、その名称がつけられました。
- 分類:正常変異(variation)
- 好発:成人女性にやや多い
- 頻度:画像診断での発見頻度は10〜15%程度と報告されることも
- 歴史背景:歴史的に腫瘤と誤診されることがあったが、画像診断が発達した今は異常な腫瘤とされることはほぼない。
- Riedel葉自体は無症候性であり、治療や経過観察は不要。
Riedel葉の画像診断での特徴|CT・MRI所見
Riedel葉は、CTやMRIで肝右葉の下面になめらかな肝実質が舌状に下方へ延長している所見として現れます。以下が典型的な画像特徴です:
- 肝実質と同一のCT濃度・MRI信号を持つ
- 血管構造(門脈・肝動脈・静脈)が正常に分布している
- 辺縁は滑らかで、造影効果も本体と一致
- 冠状断像で肝の先端が臍部・骨盤腔内までおよぶものとされるが、診断基準が確立されておらず、報告により定義が異なる可能性がある点に注意。
造影CTでは動脈相・門脈相いずれも正常肝と同様の造影パターンを示すことが、腫瘍との明確な鑑別ポイントとなります。
症例 70歳代女性
引用:radiopedia
冠状断CT再構成像では、肝臓の下部が肋骨弓の下に位置しています。
周囲肝実質と同等の造影効果、濃度を示しています。
Riedel葉を疑う所見です。
腫瘍やリンパ節との鑑別
Riedel葉は、腫瘍やリンパ節腫大、異所性肝などと誤認されることがあります。鑑別において重要なのは:
- 肝と連続した実質であること
- 正常肝と同じ濃度・造影パターン
- 血管構造が連続して存在していること
これらの所見が揃えば、Riedel葉と判断することが可能です。
Riedel葉は副肝なのか?
一部の文献では、Riedel葉を「副肝(accessory liver lobe)」の一形態とみなすこともあります。しかし、臨床・画像診断の文脈では、Riedel葉は『正常変異』として独立して扱われるのが一般的です。
関連記事:肝臓の形態異常・正常変異とは?Riedel葉や副肝を正しく理解しよう
まとめ
Riedel葉は、腫瘤と見間違えやすい正常変異の代表例です。画像診断においては、構造の連続性、造影パターン、血管走行をしっかり確認することで誤認を防げます。
読影者は「腫瘤らしき陰影=病変」と短絡せず、「正常解剖バリエーション」の可能性を念頭に置くことで、より安全かつ正確な診断が可能になります。
参考文献
- Riedel M. Ueber den zungenförmigen Fortsatz des rechten Leberlappens und seine pathologische Bedeutung. Verh Dtsch Ges Chir. 1888;17:93–7.
- Kumar M et al. Riedel’s lobe of liver – a rare anatomical variant: a case report. Int J Anat Var. 2010;3:88-90.
- 金井理葵 ほか. 保存的に経過観察しえた肝副葉捻転と思われる1例. 臨床放射線. 2021;66(7):943-947.
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