feeding vessel sign(フィーディングベッセルサイン)は、肺の結節や陰影に向かって拡張した肺動脈が明瞭に描出されるCT所見です。
血行性に肺病変が形成されたことを示唆し、敗血症性肺塞栓症や肺転移、さらには壊死性血管炎などの診断において極めて重要なサインとされています。
feeding vessel signの定義
- 肺内の病変(結節・consolidation)に向かって明瞭な肺動脈が走行している所見
- 病変が血行性に形成されたことを示唆し、分布・病態の判断材料となる
- 通常は造影CTでの肺血管条件で最も評価しやすい
出現しやすい疾患
疾患 | 特徴 |
---|---|
敗血症性肺塞栓症(septic pulmonary embolism) | 末梢の楔形陰影や空洞に向かう肺動脈が明瞭に走行。感染性血栓塞栓に特徴的 |
肺転移(metastatic lung nodules) | 転移巣へ向かう太い血管の走行。腫瘍性血行播種の証拠となる |
真菌性膿瘍 | アスペルギルスやノカルジアなどで形成される膿瘍状結節に向かう血管像 |
壊死性血管炎(GPAなど) | 壊死性肺結節に向かって肺動脈が走行することがあり、血行性浸潤を反映 |
画像所見の読み方
- 末梢肺野の結節やconsolidationに注意
- その中心へ向かって直線的に肺動脈が走行しているかを確認
- 造影効果により血管壁が明瞭であればより診断価値が高い
- 時に空洞やair-fluid level、halo signを伴うこともある
症例 30歳代男性 発熱、胸痛、喀血
引用:radiopedia
多数の小さな末梢性空洞性肺結節がみられ、典型的なfeeding vessel sign(栄養血管サイン)を認めています。
敗血性肺塞栓と診断された症例でした。
鑑別が重要な疾患と所見
- mucoid impaction(粘液塞栓):濃度は高いが血管が内部に走行しない
- 出血性病変・壊死性肺炎:血管構造が破壊されて見えにくい
- air bronchogramとの違い:空気を含む気管支 vs 造影された血管
まとめ
- feeding vessel signは血行性肺病変の診断に有用な所見
- 敗血症性肺塞栓症、肺転移、壊死性血管炎などで出現
- 造影CTの肺条件で最も診断価値が高い
- 鑑別にはair bronchogramや粘液栓との違いを把握することが重要
参考文献
- Kuhlman JE, et al. Radiologic findings of septic pulmonary embolism. Radiology. 1990;174:211–213.
- Franquet T. Imaging of pulmonary infection. Eur Respir J. 2001;17(3):507–518.
- Gaeta M, et al. Computed tomography halo sign in pulmonary nodules: frequency and diagnostic value. J Thorac Imaging. 1999;14:109–113.
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