胸骨骨折とは?
- 胸骨骨折(Sternal fracture)は、胸郭骨折の一つであり、主に直接的な外力(直達外力)によって生じます。発生部位は胸骨体と柄(胸骨上部)の境界部に多く見られる。交通事故では、特に運転者がハンドルに胸部を強打することで発生する例が多く報告されている。
- 胸骨骨折の症状:疼痛、局所の圧痛、腫脹、縦隔症状などを訴えることがある。
- 治療:内臓損傷を伴わない場合、肋骨骨折と同様の治療が行われる。しかし、骨折の転位が大きく、呼吸や循環に支障をきたす場合は、手術療法が必要となることがある。
胸骨骨折におけるCT画像診断の重要性
- X線検査では見逃される可能性があるため、胸部CTによる詳細な評価が推奨される。合併症の有無を確認するためにもCT画像による評価が重要。
- 鈍的外傷の約8%で胸骨骨折が見られ、3点式シートベルト使用者に多く発生する。特に、胸骨角から2cm以内の水平骨折が多いとされています。横断像では診断が難しい場合もあり、矢状断像や冠状断像が有用。
胸骨骨折の合併症と鑑別診断
- 前縦隔血腫: 胸骨骨折に伴い発生することがあり、これにより上縦隔の拡大が認められる場合がある。大動脈損傷との鑑別が必要。
- 内胸動脈損傷: 血腫による心臓圧排や胸腔内穿破を引き起こし、大量血胸のリスクを伴う。このため、胸部単純X線写真で胸骨骨折が疑われる場合は、CTで内胸動脈を観察することが不可欠。
症例 70歳代女性 交通外傷
胸骨体に水平方向の骨折線を認めており、胸骨骨折と診断されました。
横断像(非提示)での診断は困難であり、矢状断像での観察が重要であることがわかります。
なお胸骨骨折に伴う合併症は認めていませんでした。
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参考文献:
- 画像診断 Vol.33 No.14 2013 P1547
- ビギナーのための胸部画像診断 P201
- 南山堂医学大辞典第19版