先に結論:胃癌術後の合併症
- 胃癌術後の主な合併症は縫合不全(吻合部・十二指腸断端)・膵液瘻・内ヘルニア・輸入脚症候群です
- 膵液瘻は仮性動脈瘤を作って大出血を起こすことがあり、十二指腸断端の漏れも重症化しやすいため、CTで吻合部や断端周囲のガスを含む液体貯留を確認します
- Roux-en-Y・Billroth II再建後は内ヘルニア(腸間膜の渦巻き・小腸の集簇)や輸入脚の拡張に注意します。術後早期の変化との区別はドレーン所見もあわせて判断します
- 縫合不全の症状は発熱・腹痛・頻脈やドレーン排液の濁りなどです。十二指腸断端瘻は多施設研究で2.6%に起こり、90日死亡率は17.2%でした(Molteni 2026)

胃癌術後の合併症には、
- 縫合不全
- 膵液瘻
- 内ヘルニア
- 輸入脚症候群
が知られている。
縫合不全
- 吻合部および十二指腸断端瘻がある。
- 胃癌術後の縫合不全は胃全摘術の食道空腸吻合部で多く3.6~5.7%。
- 十二指腸断端瘻の頻度は1.6〜5%程度と報告されており、逆行性に膵液が腹腔内に漏出する危険性あり、重篤化しやすい合併症の一つ。
- 吻合部の不連続性、吻合部周囲のairを含む液体貯留(>3cm)を縫合不全と関連する所見として報告されているが、術後の反応性腹水やairと縫合不全による変化の鑑別は画像だけでは、難しく、ドレーン性状などを含めて総合的に判断する必要がある。
縫合不全の症状と十二指腸断端瘻
- 症状:発熱、腹痛、頻脈、炎症反応の再上昇、ドレーン排液の濁りや胆汁・腸液様の変化など。症状が乏しくCTで気づかれることもある。
- 十二指腸断端瘻:欧州24施設の胃癌胃切除2422例では2.6%に起こり、90日死亡率17.2%。術前の体重減少、断端の補強なし、Billroth II再建、術後輸血が危険因子だった(Molteni 2026)。
- CTでは断端周囲(膵頭部の右〜肝下面)のガスを含む液体貯留を確認し、断端に圧をかける輸入脚の拡張もあわせて見る。
膵液瘻
- 仮性動脈瘤を形成、破裂による腹腔内出血のリスクとなる重篤な合併症の一つ。
- 膵合併切除後はもちろんだが、膵周囲リンパ節郭清時の膵実質損傷も原因となるので注意。
- 腹腔鏡手術では膵周囲リンパ節郭清の際に膵を圧排しrotationさせる必要があり、この操作も膵液瘻のリスク。
- 縫合不全と同様に術後変化と画像で鑑別が難しい場合がある。
- 近傍にドレーンが留置されている場合はドレーン排液中のアミラーゼ値が診断の一助となる。膵切除後の膵液瘻の国際定義(ISGPS 2016年改訂)では、ドレーン排液のアミラーゼ値が血清正常上限の3倍を超え、かつ臨床的に問題となる状態を伴うものを膵液瘻とし、臨床的な影響のないものは「biochemical leak」として区別している。
関連:膵頭十二指腸切除後(PD)の出血をみたときの原因と治療、仮性動脈瘤
内ヘルニア
- B-Ⅱ法やRoux-en-Y法による再建後には新たな間隙が生じるため、内ヘルニアの原因となる。
- Y脚作成部分の小腸間膜にも間隙が生じるほか、結腸後経路においては横行結腸間膜に小孔を作成するため、この部分もヘルニア門になりうる。
輸入脚症候群
- B-Ⅱ再建における輸入脚の通過障害に伴う病態の他、広義にはRoux-en-Y再建における十二指腸断端からY吻合部までの腸管の拡張に伴う病態も含まれる。
- 消化管穿孔や膵炎、胆管炎のリスクがあり、減圧のための適切な対応が必要である。
- CTで十二指腸に限局した拡張を認め、診断は比較的容易。
関連記事:
※手術後に発熱や腹痛が続く・強くなるなど気になる症状があれば、手術を受けた医療機関に相談してください。
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参考文献:
- 臨床画像 Vol.38 No.7 増刊号2022 P41-7
- Kim KW, Choi BI, Han JK, et al. Postoperative anatomic and pathologic findings at CT following gastrectomy. Radiographics. 2002;22(2):323-336. PubMed
- Bassi C, Marchegiani G, Dervenis C, et al. The 2016 update of the International Study Group (ISGPS) definition and grading of postoperative pancreatic fistula: 11 Years After. Surgery. 2017;161(3):584-591. PubMed
- Molteni M, Puccetti F, Baiocchi GL, et al. Standard reporting on duodenal stump leakage after gastric cancer resections: multicentre analysis from the GASTRODATA Study Group (the STARDUST study). Br J Surg. 2026;113(9):znag105. PubMed
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