アミロイド関節症(amyloid arthropathy)
- 骨関節領域へのアミロイドの沈着=アミロイドーシスのことで、関節アミロイドーシス、アミロイド関節症、アミロイド腫瘤(amyloidoma)とも呼ばれる。透析アミロイドーシスの一つ。
- 透析開始後10年以上で3割、20年以上で7割以上に生じる。長期透析患者の場合、β2ミクログロブリンを主成分とするアミロイドの沈着をきたしやすく、特に滑膜に沈着しやすいという特徴がある。
- 関節リウマチや慢性骨髄炎など慢性炎症性疾患に合併することもある。
- 好発部位は、肩関節、股関節、膝関節、手関節。
- 滑膜、関節包、靭帯にアミロイドの沈着が起こる。
- 左右対称に認められる。
- 症状は、関節の腫脹、疼痛、可動域制限。肩への沈着は腫瘤を形成することがある。また手根管への沈着は手根管症候群をおこすことあり。
- 鑑別診断は色素性絨毛結節性滑膜炎(PVS)、血友病、出血性嚢胞、虚血性骨壊死など。
透析アミロイドーシスとは?
- アミロイド関節症
- 手根管症候群
- 破壊性脊椎関節症
- 筋肥大
- 骨髄への沈着→MRIで骨髄の不均一な信号低下を認める。
アミロイド関節症の臨床像
アミロイド関節症は、以下のような臨床的特徴を持つ。
- 手根管症候群
- 屈筋腱周囲へのアミロイド沈着により正中神経が圧迫される病態である。
- 手指のしびれや痛みが主要な症状で、透析患者に最も頻繁に見られる。
- びらん性・破壊性骨関節症
- 股関節、肩関節、膝関節などの大関節が対象となる。
- 関節腫大、疼痛、運動障害を伴い、進行すると顕著な関節破壊を認める。
- 破壊性脊椎関節症
- 頸椎や腰椎に好発する急速進行性の病態である。
- 椎体終板や椎間板が破壊され、時に腫瘤性病変を形成する。
アミロイド関節症の画像所見
単純X線写真
- 軟部腫脹、関節周囲の骨粗鬆症、軟骨下嚢胞がよく見られる。
- 関節裂隙の狭小化はほとんど認められない。晩期まで保たれる。
CT所見
- 骨侵食、軟骨下嚢胞、関節包内の異常石灰化を描出する。
- 破壊性脊椎関節症では、椎体終板の破壊や椎間板の変性が明瞭に観察される。
MRI所見
- アミロイド沈着部はT1およびT2強調像で低〜中等度信号を示す。ただし、軟骨下の液体貯留や滑膜炎などの合併によりさまざまな信号をきたすことあり。造影により、中等度に造影される。
- 滑膜内に結節状または腫瘤状の構造が確認され、関節液が貯留する場合にはT2強調像で高信号を呈する。
- PVNS(色素性絨毛結節性滑膜炎)や血友病性関節症との鑑別では、T2*強調像でヘモジデリン沈着を示さない点が重要である。
T2WIで低信号を呈する滑膜疾患
- アミロイド関節症
- 血友病性関節症
- 色素性絨毛結節性滑膜炎
- 滑膜性血管腫
- 関節リウマチ、Charcot関節、変形性関節症
症例 70歳代男性 慢性腎不全と13年間の長期透析歴があり、進行性の両側股関節痛
引用:radiopedia
両側の大腿骨頭および頚部に、多発性の明瞭な皮質下腫瘤性病変を認める。T1強調画像で低信号、T2強調画像で主に低信号の不均一な信号を示し、嚢胞性変化と造影後の辺縁部造影効果を伴う。
アミロイド関節症を疑う所見です。
CTガイド下で組織生検が行われ、病理組織学的報告では赤色染色陽性の線維性物質が確認され、β2ミクログロブリンアミロイド関節症が示唆された。
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参考文献:
- 画像診断Vol.36 No,11 増刊号2016 P93
- 新 軟部画像診断の勘ドコロ P160.161
- 画像診断別冊KEY BOOKシリーズ 骨軟部疾患の画像診断第2版P389
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